映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』監督日記:113 なかにし礼さん
2022/12/15 晴れ いかに今年がアッという間に過ぎたのかというと、まだ夏の感覚でいると表現すればわかってもらえるだろうか?気分はあのクラファンに必死になりながら劇場営業に精を出し、宣伝に懸命になっていた暑い季節のままだ。
つまり公開から3ヶ月を過ぎても必死のパッチでこの映画を広めようとしている。
気分は暑いが気温は冷たい。web用の広告を作ったり、自主上映会のホームページを作ったり、興行収入の精算をしたりしてパソコンにかじりついてると、暖房をかけるのを忘れて手足の先がつめた~くなり、こりゃいかんと日に3度も風呂に入るなんてことをして過ごしている。昼間風呂で温ったまるとフリーランスの特権をひしひしと感じる。
1/4(水)から始まる下北沢エキマエ-シネマK2での公開は、なんとしてでも成功させなければならない。本作をメインストリームに乗せるには、やはり東京から話題を広めねばならん。これまでの宣伝でして来なかったのは、著名な方のご感想を宣伝に使わせてもらうことだ。いま、それを仕込んでいる。
前作『日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人』では、故・なかにし礼さんに推薦の言葉をいただいた。それは、2020年の中で最高の出来事だった。プロデューサーの河合弁護士となかにし礼さんが友人だったことからDVDをお送りした。なかにしさんのご感想を宣伝に使わせていただけたら、、、と思っていたら、なんと!ご本人から電話がかかって来た。
「感想を書こうとしてるけど、胸が掻きむしられて書けないんだよ。だから、今からこの電話を録音して、あなたが感想をまとめて書いてくれるかな。」
尊敬する人からの電話で緊張しまくったが、満洲での壮絶な戦争体験と今も国家によって行われる棄民に怒りをもって生きる思いを映画に反映させて、おおいに語ってくださった。大変褒めてくださって、結果的に1時間半もお話しした。
その後、ご感想を編集した文章を確認していただくために送ると、またお電話をくださった。
「上手くまとめてくれてありがとう。これを好きに宣伝に使ってヒットさせてください。コロナが落ち着いたら河合さんと一緒に食事しましょう」と仰った。
自分にとって、なかにし礼さんは不良の王様だ。歌謡曲の詞も小説もご自身が脚本・主演された映画『時には娼婦のように』も、なかにしさんの創作は、いつも自由で、ポピュラーで、そして体制に刃向いながらもメインストリームに乗っておられる。ほんとうにカッコいい。
しばらくしてご著書の「夜の歌」を送ってくださった。一気に読んだ。なかにしさんの人生にファンタジーが織り込まれた自由で寂しくて悔しくも幸せな、もの凄い物語だった。お会いできた時に感想を伝えようと思っていたが、その年の12月23日にお亡くなりになってしまった。
自分は本当に大馬鹿者だ。なかにしさんはお電話をくださった時に「どんな人が作ったのか話したくなった」と仰った。お話しに恐縮するばかりで、なかにしさんの軽やかな行動力に気づかなかったのだ。自分は「夜の歌」を読んだ感想をなぜ、すぐになかにしさんに伝えなかったのだろうか。後悔している。
なかにしさんは作り手の喜びを誰よりもわかっておられる。だから、すぐにお褒めの電話をくださったのだ。きっと、なかにしさんも自分の感想を待っておられたに違いない。「小原くん、どう思ったかな?」と気にされていたはずなのだ。それなのに自分はなにを勿体ぶっていたのだろうか。
お亡くなりになった報を聞いて、ビリビリと感電するように後悔した。
録音した電話を折に触れて聴いている。もうすぐ御命日だ。
<『日本人の忘れもの』なかにし礼さん推薦の言葉>
https://wasure-mono.com/nakanishi_rei.html
<映画公式サイト>
https://saibancho-movie.com
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