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輝く向こうの先までは、まだ飛べないけど

仕事の辛さというのは人によって異なるが、私は今まで経験したことのない新しいことをするのに辛さを感じる。

先日など職場のパソコンが新しいものに代わっただけでひどく疲れてしまった。連続してパスワードを間違えて、パソコンに「お前の生き方は間違っている・・」と言われているような気になり、周りを見渡せば自分以外の全員がスムーズに新しい波に乗れているように見え、ヤケになってキーボードに八つ当たりする一日を送った。

毎日通っている職場だったからまだよいものの、これが異動したて・転職したてなど人間関係がまだまっさらな状態だとなおさらだ。誰に何を聞いていいのかわからず膨大なエネルギーを必要とし、くたくたになって疲れてしまう。

「新しい職場、新しい仕事はワクワクする!」というタイプの方もいらっしゃると思うが、私は真逆で、できれば同じ仕事を同じようなメンバーで淡々と続けていきたいタイプである。
「これならできる」とイメージが湧く仕事ならまだいいのだが、自分ができる気配がまったく起きないものに取り組むのに腰が重い人間なのだ。

最近、商業出版を目指して企画書を書くという新しいことを始めた。
いちおう見てくれる人がいるのだが、毎回膨大なダメ出しをされる。できてないことが多すぎて、その一つ一つと向き合うのがしんどい。
というわけである日のコーチングセッションにて、コーチに愚痴をこぼす。

「紙の本が本屋さんに並ぶのが夢でしたけど、もう辛くてやめたいですわ。だいたい本の売上の9割は出版社に持っていかれるゆうのに、なんでこんなことやらなあかんのか、わからなくなってきましたわ」

東京出身・東京育ちのなのになぜか「完璧な関西弁」と関西人に言わしめる私は、そのように切り出した。
すると優しいマイコーチは「そもそも仁美ちゃんは、どうして本を出したいの?」と問いを投げてくれた。

作家デビューしたい。これまで馬鹿にしてきた人たちを見返してやりたい。

最初はそのようなせせこましい理由だったが、コーチと話しているうちに「自己表現が苦手な人が、文章でいきいきと表現しやすくなってほしい」だったり、「これまで私に生きる力を示してくれたドラマや舞台のような感動を、私も人に伝えるようになりたい」など、願いが出てきた。
自分が本当に願っていることを思い出すと、だんだん今の悩みが小さくなってくるのを感じた。

よく子どもなどに「勉強しなさい」「片付けしなさい」と言っても、たいてい子どもは言うことを聞かない。子どもたちには「苦手なことや嫌なことをしなければいけない」という壁が目の前を覆って、動けなくなっていることが多いのだ。

そうすると大人はたいてい「勉強したらスマホ見せてあげるから」「片づけたらアイスをあげるよ」とご褒美作戦に出る。それがうまくいくこともあるが「ご褒美がないならやらない」という思考パターンの人間になってしまうこともある。わたくしのように。

動けなくなっている時というのはその人が生まれつき駄目な人間というわけでは決してなくて、その先の未来が一時的に見えなくなっているだけにすぎない。だから自分の本当に願っていることを思い出すと動けるようになる。
これが1人だとなかなか難しいので、私の場合はコーチングやカウンセリングなど他人の手を借りてするようにしている。

「読んでみたいねえ、仁美ちゃんの本」そうコーチに言われて、私は「本を出すのをあきらめる」という選択肢を一度リリースすることにした。

まだ企画書は書けてない。スマホ片手にアイスを食べる日々。現実はそう簡単に変わらず、変化はいつだってグラデーションだ。
でも願い未来の先をイメージしながら、今日も腰の痛みに耐えながら、企画書を打ち直している。


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