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コミュ力が高いとは、相手の願いを見抜く力が高いこと

以前友人と京都を散策している時、お出汁専門店にフラッと立ち寄った。

そこは粉末のお出汁専門のお店で、お湯で溶かすだけで美味しいお出汁が売られていた。ゆず風味・ピリ辛風味など様々なお出汁が売られている。

品物を見ていると、店員さんが試飲のお出汁を勧めてくれた。小さいカップに入ったお出汁を飲んでいると、一緒にいた友人が店員さんに「春からうちの子どもが1人暮らしするんですけど、この出汁を使ったおすすめの料理ってありますか?」と質問した。

するとその店員さんは鼻息荒めに
「それには出し巻き卵がおすすめですよ!お子さんはみんな卵焼きが好きですからね。卵にうちの粉末出しを入れて焼くとおいしいですよ」
と、卵焼きに良いという粉末出汁を勧めてきた。

友人は店員さんの提案をやんわり断り、一緒に店を後にした。友人はその後ぽつりと「出し巻き卵は、ないねえ」と言った。

おそらく店員さんは友人の話の「子ども」と言う箇所だけ聞いて「子どもはみんな卵焼きが好き」と反応したのだと思うのだが、初めての一人暮らしをする人の料理に、出し巻き卵はちょっとハードルが高い気がする。

(ちなみに私は高校生くらいまで、卵の匂いが苦手で卵料理全般が食べられなかった)

コミュニケーションは、自分が伝えたい主張よりもまず、相手が欲している情報を先に出すのが大切だと思う。

文章でも、読みやすい文章は読み手の心に寄り添っている。「それってどうなんだろう」と読者が疑問に思ったタイミングで、読者の疑問に答えるような展開に持っていったり。
「もっとこのことについて知りたいな」と読者が思うだろうことについて尺を割き、自分が伝えたいことはその後に書くと、読む方はスムーズである。

ちなみに、初めての一人暮らしを控えるお子さんをもつ親御さんに、あなたならどうやって粉末お出汁レシピをプレゼンするだろうか。

いくつか案を考えてみた。

プレゼン①
青菜のおひたしはいかがでしょうか。ほうれん草や小松菜を湯がいてしぼって、粉末出汁としょうゆをかけたものなら4~5日は持つでしょう。
今時コンビニでもスーパーでも食べるものは多いですけど、冷蔵庫に手作りの常備菜があると、一人暮らし始めたばかりのお子さんも気持ちがホッとしますよね。

プレゼン➁
具なしのお味噌汁なんてどうでしょう。お椀に味噌と粉末出汁をお湯で溶けば、即席のお味噌汁ができます。ちぎった海苔なんかを浮かべてもいいですね。
お味噌は腸内環境を整えてくれるので、風邪を引きにくくしてくれます。一人暮らしは風邪を引くと辛いですからね。例え具なしでも、お子さんの健康に、出汁の効いたお味噌汁はよいと思いますよ。

プレゼン③
パスタやカレーに、最後の仕上げに振りかけるのはいかがでしょうか。意外かもしれませんが、和風だしは和食以外にもとても合うんですよ。小魚をまるごと粉末しているので、カルシウムや鉄分といった栄養も取れて一石二鳥。10代の無茶はその後の人生に響きますからね。この粉末出汁が一個あって損はないでしょう。

・・などなどの案が私には思い浮かんだ。
(いかにも一瞬で思いつきましたみたいに書いたけど、実際にはここまで6時間くらいかかっている)

「コミュ力が高い」というのは社交的で口が上手な人ではなく、相手の話から相手が本当に欲してる情報を見抜き、それを差し出せる人なのだと思う。

春から一人暮らしをする子の母である友人が本当に欲していたのは、粉末出汁ではなく、我が子に元気で、健やかでいてほしいという願いのようなものだったはずだ。

ついつい自分の知ってる情報を話したり書きたくなるのをグッとこらえて、相手の中にある本当の願いを受信しアウトプットする力をつけていきたい。