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日本十進分類法、第三次区分を読破する【000 総記】

 さて、始まりました。

 図書館で本を分類するために使われている「日本十進分類法」。

 わたしは、これがすごく好き。
 「全ての本を分類する」というチャレンジにすごくロマンを感じる。
 (詳しくは、熱く語っているこちらの記事をぜひ。「世界で一番好きな本『日本十進分類法』」)

 で、日本十進分類法は、0〜9の十文字の数字を階層的に使う。
 例えば「210日本史」とか「470植物学」といったように様々な分類を表現する。

 「210日本史」において、「2歴史」を第一次区分、「21日本史」を第二次区分という。
 三桁で表す「210日本史」が第三次区分。

 空席もあるけれど、マックスで1000個もの分類することができる!!

 で、これ、全部読んだら、「全てのジャンルの本を読んだことになるんじゃね?」と。

 というわけで、「日本十進分類法、第三次区分を読破する!」という目標を掲げ、新マガジンをやっていく!

 ただ単に読んでいくだけではなく、日本十進分類法を解説し、図書館の利用方法も紹介していく所存。

 今回は「000総記」。

 000〜009まで。

 が、この分類、ほぼほぼ空席で、「002知識.学問.学術」「007情報学.情報科学」しかない。

 最初、チュートリアルとしてはおあつらえ向き、というわけで、ぜひお付き合い願いたい。





002 知識.学問.学術

 実は、この分類に処される図書は少ない。

 うちの地元図書館なんか、本棚の一段、その半分もなかった。

 大きい都会図書館の中央館でも、本棚の半分もないくらい。

 「図書館全体を歩いて本を探す」と言う方でも、スルーしてしまっているかもしれない。

今回読んだ本は……『世界のヘンな研究 世界のトンデモ学問19選』

 帰国子女のサイエンスライターさんが、主にアメリカの研究者さんに実際にインタビューして、いろいろな面白い研究を紹介していく。

 海外の研究者さんへ取材……ガチ。

 トピックも19と多め。

 サーフィンとか、ワインとか、馬とか。

 わかりやすく、でもエッセイ調でサラーリと読める。

 「何か面白いものが読みたい」に応える一冊!!

 進路に迷っている中高生や、留学を考えている方が読んだら、人生が変わるかも……?

どんな本があるの?

  • ノート術や手帳術など、情報をまとめるための実用書 「東大流ノート術」系

  • リサーチ方法やレポート作成術、研究方法など、学ぶための本

  • 知識全般に関する本 福沢諭吉『学問のすすめ』

  • 紹介される学術分野が多岐にわたる本 →今回読んだ本『世界のヘンな研究 世界のトンデモ学問19選』

 さて、この分類。

 『日本十進分類法』にはこう書かれている。

〈知識の宇宙〉全体にかかわる知識,学問一般

NDC10 p35

 意味がわからん。

 つーか、知識の宇宙ってなんやねん。

 わたしの理解的には、ここの分類にはおおよそ三種類の本がある。

 一つ目。

知識を身につけ、学問するためのノウハウ

 リサーチ方法や、レポート・論文のまとめ方など。

 ただし、『文学の学び方』みたいな学問ごとのテーマになると、その分野(この本の場合は「907文学 研究法.指導法.文学教育」)に収まる。

 あくまで「002知識.学問.学術」には総論的、一般的なものが収まっている。

 高校生や大学生になって「レポートってどうやって書けばいいの!?」となったときに、ぜひ読んでほしい。

 ビジネスシーンで「どうやって信頼性のあるデータを集めればいいのかわからない」などリサーチ関連の悩みがある方はぜひ。

 そして、ここにはノートのまとめ方もある。

 こちらは、小学生からでも活かせる実用書。
 学童期のお子さんがいる親御さん、どうですか。

 ノートから派生して、スケジュール帳の使い方の実用書も。

 社会人にとっては、一番手に取りやすく、そしてすぐに活かせるトピックスかもしれない。

 ちなみに。ここにあるのは手帳術だけで、家計簿は「591家庭経済・経営」に分類される。

 二つ目。

知識、学問全般

 広すぎるゆえに曖昧だが、日本人なら誰もが知っている本で説明可能。

 福沢諭吉の『学問のすすめ』とか。

 納得していただけただろうか。

 というか、この取り扱いをされている図書って『学問のすすめ』とその関連図書しか知らない。

 学術分野が細分化しておらず、総括的に語ることのできた最後の時代だよね、明治って。

 と言う感じ。

 今では、そこまで広く語ろうとする著者があまりいないだろうし。
 もしそう言う本があっても著者の専門分野、社会学者なら「36社会」に、教育系なら「37教育」に分類されている。

 そして、三つ目。

知識を扱うのもで、教育に収まらず、もう少し取り扱い範囲の広い社会や心理にも当てはまらず、芸術美術や体育、図書館や博物館、美術館に関係しないもの

 総記は「他へ分類できない本」たちが収まる場所でもある。

 というわけで、そう言う本もある。

 読み物としては、これが一番面白い。

 例えば、どんな本があるかというと。

 今回読んだ『世界のヘンな研究 世界のトンデモ学問19選』とか。

 満遍なくいろんな分野を扱っているゆえに、逆にどこにも分類できません、というわけ。

 しかし、同様の『ヘンな論文』は「049雑著」になっていたりする。

 前者の著者がサイエンスライターで、後者がお笑い芸人だからゆえの扱いだろうけど。

 で、もう一つ例を挙げておく。

 『パンデミック下の書店と教室』という、社会学者さんと書店員さんが、書店や知識について考える一冊。

 社会学者さんだけが著者なら、間違いなく「36社会」だけど、書店員さんもいる。

 書店については「024図書の販売」と言う分類があるんだけど、話の真ん中は「知識」。

 というわけで、「002知識.学問.学術」にいる本なんだと思う。

 「002知識.学問.学術」にどんな本が並んでいるのか少しはわかってくださったと思う。

 このNDCシリーズの記事を読んでくだされば、いずれ「知識の宇宙」も体感できるようになるかも……?



007 情報学.情報科学 

 三桁の数字を組み合わせることにより、「将来の新概念」に対応できる十進分類法。

 「007情報学.情報科学」は近年、新設された。

 新設されたのは「他に分類できない新概念」だから。

 裏を返せば、「他に分類できるなら、従来通りそちらへ分類する」という傾向がある。

 また、「著者の専門分野に分類する」という傾向もある。
 どの分野でも、隣接分野の分類の棚へも足を運び、資料を探したほうがいい。

 新設の分野は、著者や書籍が少ないため、この傾向がより顕著になる。

 そのため、詳しく調べるほど、「007情報学.情報科学」にある図書が主要文献になりにくい。
 のちに仔細に見ていくので、調べたいトピックごとに参考にしていただければと思う。

今回読んだ本は……『アレクサ vs シリ ボイスコンピューティングの未来』

 タイトルに惹かれて、ずっと気になっていた一冊。

 Amazonのアレクサ、Googleアシスタント、Appleのシリ、Microsoftのコルタナ。

 音声アプリを巡る各社の企業史と、音声アプリの技術史について。

 さらに、バービー人形に搭載されようとしている会話機能などの今後の進展、Googleなどの大企業が大量の個人情報を集めてしまうリテラシー問題、従来の広告での収入方式が崩壊してしまう経済的損失など、色々なトピックを扱っています。

 感想としては、ちょっと読みにくい文章だったなーと。

 技術史とていも中途半端で、期待していたようなワクワクがなかったのでちょっと残念でした。

どんな本があるの?

  • PCやスマホ、Microsoft OfficeをはじめとするPCソフトの使い方

  • プログラミングに関する本

  • IT技術を活用するための本(サイバーセキュリティ・lot ネット など)

  • ITに関するいろいろ(法律・リテラシー・哲学 など)

  • 情報・ITに関する技術史や企業史 →今回読んだ本『アレクサ vs シリ ボイスコンピューティングの未来』

 さて、具体的にどんな本があるのか。

 大体、上記のような5種類に分かれると思う。

 まず、「PCやスマホなどの電子機器の使い方」「スマホアプリやPCソフトの使い方」。

 基本的には実用書。

 パソコンやスマホの使い方や、スマホアプリの解説など、誰でも手に取って読めるもの。

 そして、Microsoft Office(WordやExcel、PowerPointなど)をはじめとするPCソフトを解説する、仕事などに活かせるもの。

 そういった本が並んでいる。

 が、ちょっと注意が必要。

 毎年と行かなくても、割と頻繁にPCソフトなどは更新されていく。

 この手の実用書はその度に、新版が出る。
 のだが、図書館によっては費用が足りずに、新版を購入できていない場合がある。

 そして、同じような情報はインターネットで検索可能。

 「ネット検索ができません」という方であれば、スマホ解説本などを手に取る需要もある。

 しかし、あえて「書籍がいい」という方以外は、インターネットの情報の方がオススメ

 例えば、「Excelで足し算がしたい」とき。
 書籍を借りてきて、索引を調べ……とするよりも、「Excel 足し算」で検索するほうが早いし、それで十分、用が足りる。

 ここまで個々の悩みではなくて、「全体的にExcelが使えるようになりたい!」とき。
 その場合は、YouTubeでExcel解説をしてらっしゃる方の動画を見るほうがわかりやすい。
 新しく知るわかりにくい用語で挫折する心配がないうえ、動きがある動画の方が実際の操作が圧倒的にわかりやすい。

 そういうわけで、「PCやスマホなどの電子機器の使い方」「スマホアプリやPCソフトの使い方」は、そもそも検索ができない方や、どうしても書籍がいい方が活用できる実用書になる。

 二つ目は、「プログラミング」に関する書籍。

 WordやExcelといったPCソフト以上にスピードが速い分野なため、情報が古い書籍が並んでいる可能性が高い。

 それに加え、図書館司書は人文科学の出身者が多く、新しい分野で書評を参考にするなどもしにくい。
 そのため、どこまで有用な書籍があるのかグレー。

 わたし自身も、プログラミングに関する知識はないため、「本当に活用できるのか?」という評価は差し控えさせていただきたい。

 いずれ、図書館の書籍のみで独学チャレンジ、みたいなことをしたいと思っている。

 三つ目は、Iotシステムなどの「IT技術の活用」に関する書籍。

 ビジネスシーンで必要になってくる方もいらっしゃるのではないかと思う。

 しかし、「007情報学.情報科学」に並んでいる書籍はほぼなく、技術的な基礎知識や今後の進展などは「5技術」、実際の活用方法については「6産業」に書籍が並んでいる。

 まずは、「5技術」「6産業」の棚を探し、それでも資料が足りない場合には「007情報学.情報科学」にも足を運ぶ、という資料探索の進め方がいいだろう。

 四つ目は、「ITに関するその他いろいろ」

 具体的には、法律リテラシー哲学といった関連領域である。

 法律であれば「自動生成による創作物の著作権」
 リテラシーであれば「大企業に個人情報を含む大量の情報が集まっている」
 哲学であれば「シンギュラリティ後のAIには人格があると言えるか」

 などのトピックが想定される。

 実際に「007情報学.情報科学」の分類に処されている書籍としては、『画像生成AIと著作権について知っておきたい50の質問』がある。

 しかし、このトピックをさらに深めたい場合。
 論じる著者が著作権の専門家になるので、「021.2著作権.著作権法:版権,翻訳権」「507.2産業財産権」の書籍を参考にすることになる。
 (「32法律」には分類されておらず、ややこしい!!)

 このように、「ITに関する〇〇」について知りたいとき、「〇〇」に当てはまる分類を探す方が、目当ての書籍に行き当たりやすい。

 これは、「007情報学.情報科学」だけではない。
 後付けで分類が増えた分野、たとえば心理学なども、同様の資料探索のコツが不可欠となる。

 最後に、「技術史やIT企業史」

 いちばん、読み物として楽しめる

 今回紹介した『アレクサ vs シリ ボイスコンピューティングの未来』も含め、タイトルからして「読んで!」というマーケティングを意識したものになっている。
 ので、本棚の前に立ったら、すぐに目につく。

 企業史が面白く、他の図書を探し場合はちょっと注意。
 AppleやGoogleといったネット産業のみの場合は「007情報学.情報科学」だけれど、Amazonは「67商業」。

 多くの企業史は「67商業」のあたりにあるので、企業史を探す場合は、そちらを重点的に探してみてほしい。

 また、技術史も、デジタル技術が関連していても他分類にある場合も多い。

 例えば、mp3の開発、普及までを紹介した『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』は、「760.9音楽産業」に分類されている。

 同じように、美術関連であれば「7芸術」、農業関連であれば「61農業」あたりを探す方がいい。



最後に

 第三次区分を読破するための第一歩。

 いかがだったでしょうか。

 ぜひ、「002知識.学問.学術」「007情報学.情報科学」の棚へ足を運んでもらえれば幸い。

 次回は「01図書館.図書館情報学」。

 図書館司書課程の教科書が多い分類。
 読み物としての図書がどのくらいあるか少し不安があったり。

 なんとか10冊探して記事にしたいと思う。

 それでは、次の記事でお会いしましょう。

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