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上手な鍼を打つための基本①押手の作り方を中心にver1.0(動画3本)

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皆さま、はじめまして。オアシスはり灸治療院・院長の小宮です。ここでは、私が習得してきた、現代鍼灸における「鍼の基本的な打ち方」について、動画などを交えながら解説させて頂きます。皆様の鍼技術の向上にお役に立てれば幸いです。

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皆さま、こんには。新米鍼灸師代表の小宮です。私は初学者の立場から、どのようにしたら鍼の技術を向上できるかを考察していきたいと思います。学生や鍼灸初学者の方の中には、コロナ禍で、鍼実技の練習がままならない状況の方が多いと思います。ぜひ参考にしてください。

一方、私たち初学者の鍼は、実際に受けると、多くの場合、所作のぎこちなさ、押手の心許なさが、伝わってしまいます。どちらも、経験と自信がない現れでもありますが、それらを克服するには年月を要するものです。学校では実技の時間が少なく、実践的な鍼の打ち方を学ぶ機会がなかった・・・。

かもしれません。しかし、時は待ってくれません。経験不足でも、鍼を打たなければなりません。では、それをどう補えば良いでしょうか?

上手く鍼が刺入できないからと言って、太い鍼やシリコンコーティングされた鍼に頼りがちになります。

しかし、鍼の番手や素材は、患者さんの体質に合わせて選ぶものであり、あらゆる種類の鍼を使いこなせるようにならなければなりません。

下手を道具のせいにしてはいけません。

大切なのは基礎理論を習得することです。鍼の打ち方は、スポーツなどで正しいフォームを身につけるのと同じです。逆に正しい理論を身につけていないと、いくら経験を積んでも、鍼が下手な鍼灸師で一生を終えてしまうかもしれません・・・。

達人から基本を学ぶ

さて、達人技という言葉があります。

鍼灸の世界でも達人と呼ばれる者がいます。彼らが打つ鍼は、すべての動作がスムーズで無駄がありません。

上手い、速い、そして美しい。

オアシスはり灸治療院の小宮麻友美も、そんな凄い鍼を打つ鍼灸師の1人です。

彼女は、どのようにして鍼を打っているのか?鍼を打つ、わずか数秒の間に、どれだけの技術が込められているか?以下は、新米新鍼灸師小宮が、達人の技術を模倣する中で、それを理論化した内容となっています。

現代鍼灸で鍼を上手く打つための基本

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鍼治療は「手先の感覚」「触診」が最も大切だと、私は考えています。ツボの正確な位置や深部のこりは、見た目では決してわかりません。鍼を打つ場所は、触診をして初めて定めることが出来るのです。

ですから、手先の感覚が鋭敏な人ほど鍼を打つのが上手いと思います。

少し難しい表現ですが、研ぎ澄まされた手先の感覚を習得するには、手先に刻まれる感触の蓄積(記憶)が大切です。

ただし、それは鍼灸師になってからの年数ではなく、どれだけ多くの患者さんを治療してきたか、が大事なのです。患者さんを数多く治療していく中で、鍼の技術は上達していくものです。

私は鍼灸師になって15年なので、決してベテランとは言えません。しかし、日々、何千本もの鍼を打ち続けるなかで、手先の感覚に磨きをかけ、鍼を打つ精度と速度を向上してきました。

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そりゃそうです。達人と呼ばれる鍼灸師の多くは、どうやって鍼を打つかなんて考えずに治療を行っています。超感覚の世界ではありますが、それを理論化することで、皆がそのレベルに到達できるようになればと思います。それでは、上手く鍼を打つための理論です。以下、本編。

切皮痛や刺入痛が出にくい刺鍼法

鍼灸初学者にとって、触診→押し手の固定→鍼管セット→切皮→刺入という一連の動作(鍼の打ち方)を、どのように習得するかが、第一の課題となります。

これはスポーツにおける「正しいフォーム」を身につけるのと同様です。初学者の多くは、ぎこちなく、動作が遅く、迷いが生じやすいものです。一方、臨床現場では、早く正確に鍼を打つことが求められます。熟練者の鍼の打ち方は、非常にシンプルで無駄がありません。ここでは、鍼灸初学者向けに、小宮式「鍼の打ち方の基本」を解説します。(右利きとして解説)

1、押し手の型

鍼を打つ時に、最も重要なのが「左手の人差し指」です。鍼の良し悪しの9割は「押し手(左手)」の作り方で決まると言っても過言ではありません。

鉄則1 「押し手が重要」

それでは、実際に一連の動作を説明していきます。まず初めに行うのは、鍼を打つポイントを探ること、いわゆる触診です。按摩や指圧を習った人は、母指で「こり」を捉えることを得意としているかもしれませんが、触診の基本は左手示指を中心として行います。※上記動画中の「肩井のつまみ押手」は例外的に母指で触診を行います。


◆押手の作り方

ファーストタッチは、「柔らかく触れる」です。指全体をやや屈曲させた柔らかい手の形を作ります。患者さんの皮膚面には示指を中心に指先で触れます。最初から力を入れて押すのではなく、優しく触れて、患者さんに不快感を与えないようにします。

ただし「こり」は皮膚面を強く押さないとわからないので、皮膚に優しく触れたら、次は圧を加えていきます。示指で触れた個所に硬結を見つけられない場合は、示指を前後左右にスライドさせて、こりを探ります。

鉄則2 こりは示指で探す。

次に、示指でコリを捉えられたら押手を作ります。押手を作る際に、コリを捉えた(圧した)示指の圧は絶対に緩めないでください。多くの初学者はここで示指の圧を緩めてしまいます。

まず、母指の先端を示指DIP下(母指側腹)にコンタクトさせ、そのまま圧をキープしたまま示指に沿って、下方(患者皮膚面)にスライドさせます。(これを母指スライドダウン方式と言います。母指をスライドダウンさせる幅は慣れてくると小さくなります。)

同時に手首をやや回旋させながら、満月型の押し手を作ります。この時、腕や手首に力が入っていると、押し手がズレて、母指と示指の圧のバランスが崩れてしまいます。また、鍼管をセットする際に、押手圧が抜けないように、押し手圧を最初から最後まで一定に保つことが大切です。

鉄則3 示指の圧を最後まで変化させない。

次に、鍼管を母指と示指の間にセットします。その時に、母指と示指は鍼管をしっかりと保持するようにします。そのまま鍼管を抜くと、自動的に皮膚が左右均等に張った状態(正三角)で鍼を保持できます。

この時、初学者は切皮痛が出ないようにと母指と示指で皮膚を面を伸ばそうとしがちですが、鍼管を保持しようとする「つまみ圧」がしっかりしていると、自動的に皮膚面は均等に引っ張ることができます。図参照

こりを捉えた状態で、押し手にズレがなく、患者皮膚にしっかり鍼管が密着した状態で鍼を打てば、まず切皮痛は起こらないでしょう。

(よく鍼管を寝かせた状態で挟み刺入角度へ起こすという操作をする方がいますが、時間のロスを考えると、必ずしも必須の操作ではないと思います。また、目の周り等はスペースが狭く、鍼が密集するので鍼管を動かすことが困難な場合が少なくありません。)

◆押し手の圧力は、どれぐらいが良いか?

患者さんの体格、筋肉の質、鍼を打つ場所によって、適切な押手圧は異なります。また、施術者が求める刺激量によって、適切な押手圧は異なります。

これらは、経験によって自然と身につくものと言ってしまえばそれまでですが、初学者は、デジタル計量器などを使って圧にムラが出ないよう確認すると良いでしょう。一番最初の動画は、デジタル計量器にタオルを敷いて、。の上に鍼を打っています。

◆まずは押手の練習

押手圧が弱すぎる→切皮痛が出やすい、響きが得られず効果が出にくい。

押し手圧が強すぎる→皮膚面がズレて刺入痛が出やすい、患者さんに不快感をあたえる。

初学者は「切皮痛を恐れて押手圧を強くしすぎる」、緊張して「押手に力が入りすぎる(力み)」、逆に「刺入痛を恐れて押手圧を緩めすぎる」「鍼を持つ右手に気を取られて押手圧を緩めすぎる」。などを練習によって克服していかねばなりません。緩めず・力まず・・・微動だにしない。それが押手の基本です。

◆鍼管を叩く動作(切皮)

私は、鍼管を叩くとき、水面が乱れず、キレイな波紋が出来るようなイメージで行います。叩きが弱すぎると上手く鍼が入りませんし、強すぎると患者さんに負担がかかります。

鍼は早く正確に打てるように練習しましょう。実際の私たちの治療院では5分で30本位ぐらい鍼を打ち、2人~3人を並行して治療する場合もあります。切皮時に、何回も鍼管を叩く人がいますが、時間的なロスを考えて、2~3回程度が良いと思います。

◆押し手の方向

熟練者は、目に見えない皮膚下深部の小さな的(まと=硬結)に、どのようにして鍼先を当てるのでしょうか?ここでも押手が重要となります。

押し手の圧の方向を定めることは、皮膚下深部の硬結をロックすること同義です。それでは、硬結をロックオンするには?

鉄則4 的(まと=硬結)は押手と〇〇で挟んで固定する、

硬結は、単に一方向から圧をかけても逃げ(ずれ)てしまします。そのために、骨などを壁として使い、硬結を押手と壁の間に抑え込む、これが押手の方向を決めるポイントです。これは、按摩や指圧の経験があれば、それほど難しいことではありません。しかし、鍼灸師は右手に鍼を持つため、按摩師のように、もう一方の手で対側を支持することは出来ません。

骨などの支えが得られない場合は、左手の残った指や手根や手掌で、硬結が逃げないように押手とセットで抑え込むと良いでしょう。その代表例が、初めに動画で載せた肩井のつまみ押し手です。

おわり



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