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【マガジン・エイトデイ】自分を生きるために死に備えると部屋が片づく。

2024/01/08



どうも私の家の中の整理整頓は
ちょっと特殊らしい。

もし、私がふらっといなくなって
誰かがここで生活するとなったとして、
その人が、モノのありかが困らないような
動線を作ること。
連れてこられたモノが、ホッとするような
居場所を作ること。


由来は、
母が急に倒れて、そのまま旅立った
リビングにある。

私が家を出てから両親が買ったその家は
実家と言えど、行ったこともないような
土地だ。

馴染みのないその家に、呆然とした。

この中から、一体どうやって
お金関連の書類や通帳、彼女の友人の
連絡先を探せばいいのだ。

とても丁寧な暮らしとは逆の
「とりあえずのかたまり」のような
リビングに立って呆然とする。

その時、父は既に半身麻痺要介護で
自室以外のことはわからない。

私が27歳の事だった。

状況報告のため、出勤店舗に連絡したら
一週間の休みを言い渡された。

シフトの調整を詫び、抱えてる業務の
引き継ぎをし、ついでに、香典返しの
予算金額3種と、おおよその数を伝えて
店舗在庫鑑みて見繕って包装手配、
段取りをし確認して電話を切る。
(店の売上を作りながら、細かな作業をスタッフに任せる。我ながらちゃっかりしてる。)

電話を切って、目の前の現実を見る。

知ってる人の、知らない日常が
もわんと立ち込めていた。
どんよりとした空気と、生活がある。
電話帳の引き出しから印鑑が出てきたり
混沌としている。

母も死ぬつもりだったら
もう少し整理しただろうか。

薬を頼りに眠る彼女には
管理しきれない量の
モノ、モノ、モノ。

そこから、掘り起こすような作業。
最初の三日三晩は寝ずに、
葬儀業者やら親戚やら通帳やらと
打ち合わせに次ぐ、打ち合わせ。

連絡帳を見ても
誰が友人で、どこまでが親戚で
関係性と親密性は
さっぱりわからない。

近所の方は、顔を出してくれた方に
状況を伝えて、伝言をお願いする。
知らない電話番号に電話をし
母の状況を伝えて関係性を尋ねる。
お願いできそうな方に、
伝言をお願いする。


ごめんよ、母。
来て欲しい人全員に
たどりつけなかったかもしれないけど
やれるとこまではやったので、
整理整頓してないあなたの
自業自得だと思う。

と、心でつぶやいて
恩着せがましく、ケリをつける。

4、5、6、7日は、
ありとあらゆるモノを
どけながら、捨てながら
ずっと書類と電話の対応。


人は、生きるのもややこしいけど
死ぬのも、なかなかややこしい。

母よ、ジェットコースター人生
ドラマティックガールお疲れ様。


8日目、始発の新幹線で出勤するため
駅前に取ったビジネスホテルで
ようやく、ひとりになり
私は清潔なシーツにもぐり
泥のように眠った。

ずっと細切れの睡眠続きで
何が現実で、何が非現実なのか
感覚が麻痺した幹線の中で
自分の暮らすワンルームを
思い出していた。

私の暮らすワンルームも、
お世辞に整ってるとは
言い難い。
これじゃ、
おちおち死ねもしない。

私は生きるために
死ぬための
整理整頓をする必要を
身をもって
ヒリヒリと感じた。

死んだらどんなお気に入りも
持ってはいけない。
執着のかたまりを整理するのは
残された者だ。

まず私は、
通帳の場所やパスワード、保険、
全ての情報をまとめた。
契約書類の現在進行形なものだけにし
取り扱い説明をまとめる。

わたしは
生きるために、死ぬ用意を始めた。
それが整理整頓の始まりだった。

なんだか、断捨離とか運気アップ
みたいな、かわいいときめきー🎵とは
真逆の、武士の始末のような感覚だ。


今、気づいた。
私の整理整頓は
終活だ。

あとは、気兼ねなく生きるのみ。
ああ、武士だ。

気前よく、潔く、清々しい。
やだ、私の理想って武士だ。

すぐ死ぬかもだし、
ずっと一緒にはいられないから、
その瞬間を、しこたま大切に。
既に、行動が武士かも。

私の生きるための
モノの分量って
本当はこれだけなんだと
どこかで気づいてしまっている。

2週間の出張は
機内に持ち込める大きさの
トランクで
充分事足りる。

あの感じ。

母はいつだって、私に
大雑把な手本をくれる。
人生にはリミットがある。

生きるとは全ての責任を
請け負うこと。

生きるとはどんなふうに生きるかを
決めること。


自分の人生を果敢に
攻めちぎった母のおかげで
私のポッケには
いつだって小さい武士が居る。


どうありたいかは
部屋にあらわれる。

ホコリには、邪気がたまり
めんどくさいを引きつれる。
(性格性質じゃなくてホコリ由来かも)


整理整頓してあると
死ぬ準備がしてあると
腹を括るのが容易で
決めるのが早い。

それでも
生きるのがめんどくさい時は
まずはホコリを払う。

思考や感情を受け取る
感度をあげると、生きやすい。

死ぬ準備があると
どう生きるか見つめるから
生きやすいかも。
という心つもりのお話。

死ぬまで思いっきり
生きるまでさ。

では、また。


果歩


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