【マガジン・エイトデイ】 手こずる人生と「馴染む」という生きる術
わりとどこでも生きていけるタチだと
思っている。
(実際20以上の引越しをしている)
それがここ数年、手こずってきた。
自分ひとりだとなんとでもなるけど
娘と一緒だと手こずる手こずる。
まず、書類や手配が増える。
娘の居場所を作る。
そこが安全かどうかまで確認される。
私が保護者として安全かまで確認される。
(役所ですら、ひとり親になるまでの
ヒストリーを聞かれるの。)
不動産屋さん、大家さん、役所、保育園。
みんなに「私と娘はこんな感じ」を
伝える必要がある。
娘がもっと小さい頃は、家庭訪問もあった。
紙を提出して話して家庭訪問も受けて
みんなが安心してくれる必要がある。
やっと終わって、不揃いなお部屋に
娘とふたりでいると、ふたりとも
ヨレヨレクタクタで過敏になっていた。
このまま新生活始めたら、
なかなか乗らないだろうなあ。
これはいつもの馴染むための
作戦実行だな。
まずは、その土地のお水を
ごくごく飲んで、タプタプの
お湯に身体をしずめる。
身体の中からのアプローチ。
次に、氏神さまへご挨拶。
公園の土にふれる。
周辺を歩き、馴染みの道を作る。
土地へのアプローチ。
そしてその土地の人と交わること。
前は、保育園のみなさん
喫茶店やお花屋さん、
パン屋さんや食材屋さんと
おしゃべりして受け入れてもらった。
人へのアプローチ。
娘はどうやら「前と一緒」だと
安心できるタチのようだ。
スーパーを探したら、15分歩いたところに
馴染みの系列店がある。彼女はそこで
知育菓子を買うことが大好きなのだ。
「行ってみよう」とふたりで
冒険のような気持ちで進む。
大きな橋が見えて来て、下を
ぐんぐん車が走る。
音も風もけたたましい。
あ、これは。
チャンス到来だ。
「ねえ、ここは大きい声出しても
歌っても誰もおこらないかもー」
新しいお部屋にこの部屋のルールも
わからず、テンション定まらず
プチパニックを起こし、大声でする
おしゃべりに「静かに」と
言われ続けて、辟易してる彼女を
突っついてみる。
「カーーーーーーーー!」
「!!!!!!」
フルボリュームのカラス。
なんでカラスの真似なんだろうか。
てっきり歌うとおもったのに。
「カア!カア!カアーーーー!」
私もついでに、便乗してみる。
橋が終わるまでふたりで
カラスになりきり
腕を羽にバタバタしていたら
道ゆく方々に、微笑みを頂く。
私たちらしいのびのびとした
くつろぐ時間になった。
橋を渡り切る頃には
胸のギュッとなっていた部分が
ほどかれ、スーパーが見えてきた。
「ママー!スーパーがあるよ!」
くまなくスーパーをパトロールし
あれも知ってるこれも買おう
「安心」を馴染みの
スーパーから受け取る。
トイレも借り、お気に入りの
知育菓子も見つける。
もう彼女はこのスーパーへの道の
冒険をクリアし、自分のものとした。
彼女の居場所をひとつ作ることが
できたようだ。
苦手な書類やらを抜けて
よかったなあと思う。
何度かくじけそうで、べそもかいた。
1日から新しいお部屋の契約が
始まるものの16日に保育園が
確定しないと動けない。
決まったら決まったで月末までに
転入しないと内定取り消しになる。
逆算して26日に引越しを決める。
この10日間の段取りとさまざまな手配と
もっていくものの選別と、床材を剥がした
シール跡のねちょねちょと悲喜交々
今は、もう記憶にない。
(その間がっつり仕事もしている)
新しい部屋に荷物が届いたとき
「せっかく梱包したから開けたくない」
謎の錯乱発言も飛び出した。
私は新しいお部屋にカウンターを設置し
広く使うキッチンに立つことが
楽しいし、そうすると彼女は
家でもよく食べるようになった。
お部屋の掃除を手伝うのも
楽しくてしょうがない模様。
私もおうちにかまうことが
セラピーでしかない。
大きな公園が近所なので
そこで過ごす時間も増えそうだ。
なにかが揃ってることが
ゆたかなのではなく
その場をいかに楽しむかなんだろうなあと
感じられたことが嬉しくてしょうがない。
椅子もない、フライパンもない
ちぐはぐなおうち。
そして今私は、カフェで
これを書いている。
美味しいコーヒーは
カップを選ばせてくれる。
店員さんとの会話もホッとする。
着々と私の居場所も
作っている。
5歳も私もこの世界にすでに
生きてていいと、守られている。
なので私がSPのようになる必要の
ない場面で、カロリーをつかって
手こずって、疲れているだけだった。
あはは。
緊張してストレスかけてるの
誰でもない私だ。
5歳はそれに反応しているだけだ。
申し訳ないので、せっせと好物作ろう。
私はいつものチューニングを
始めよう。このまま夏至だと
今年後半荒ぶるからね。
新生活おめでとう。
祝福を受け取る。
はじまり
はじまり
では、また。
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