家族介護者の作業適応質問紙

Occupational Adaptation Questionnaire of family Caregiver: OAQC

高齢者を介護する家族はとても増えています。

これまで多くの家族介護者にインタビューしてきました。みなさん,心身ともに疲弊していました。介護のために自分のやりたい事ややらなければいけない事を我慢したり,諦めたりしていることが多く,要介護者のために生きている状態が何年も続いている人がたくさんいます。

私は作業療法士として主に身体障害のある人にリハビリをしてきました.その時に感じていたのが「家族の表情が暗い」ことでした。

患者さんの「日常生活」や「仕事」や「楽しみ活動」が再びできるようにリハビリするのですが,家族介護者も満足した「日常生活」「仕事」「楽しみ活動」はできているのだろうか?という臨床疑問がありました。

・家族介護者の健康状態の検討 〜人間作業モデルの意志に焦点を当てて〜 作業行動研究 21(3) p78-84. 2017.

この論文で家族介護者の不健康状態を作業療法の専門的視点で明らかにしました。家族介護者は社会役割的,精神的に不健康だったのです。

そこで医療・福祉では要介護者だけではなく積極的な家族介護者への支援が必要であるという考えが強く芽生え「家族リハビリテーション(造語)」ができるように評価尺度の開発をはじめました。

・家族介護者が従事する「介護」という作業の構成概念の生成.作業療法39(1) 26-37. 2020.

・家族介護者の作業適応質問紙の開発–内容的妥当性の検討–.作業行動研究24(1) 20-28. 2020.

・Development of the final version of the occupational adaptation questionnaire for family caregivers. Hong Kong Journal of Occupational Therapy. in press.

これらの論文を通して,信頼性・妥当性のある尺度を開発することができました。現在,カットオフ値の論文を作成中です。追って報告いたします。主にこれまでの家族支援では,「Zaritの介護負担感尺度」が多く使われいると思います。私もよく使います。この尺度では家族介護者の介護に対する負担感がわかります。今回,私が開発した尺度は,家族介護者の健康(身体的・精神的・社会役割的)がどこで害しているかを質問紙で作業療法的視点で明確にしてくれます。

この尺度は無料で公開します。

要介護者や患者さんへの医療を提供している時に,「家族介護者も健康だろうか?」と心配になりましたら,この尺度を使ってみてください。

このnoteで本尺度の使い方など,色々と説明していけたらと思います。

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