言葉が命。認知症患者から学ぶ会話力の鍛え方!

梅田王子です。
今回は、「認知症患者から学ぶ会話力の鍛え方」についてお話ししようと思います。

認知症というのは、簡単にいうと脳の機能低下による不具合の総称ですが、言語を司る部分に問題が生じると、前後の文脈がおかしい会話をするという症状が現れます。

お名前は?
「心斎橋太郎(この場合は質問している医師の名前)です。」
今日はいい天気ですね。
「今日の晩御飯はおにぎりでした。」

言葉は複数部署のチームプレーによって作られる

例えばこの患者さんは、普通「お名前は?」と聞かれたら自分の名前を言うものを、質問をしている医師の名前を答えています。
しかし、こう言う「普通考えたら自分の名前を答えるよね」という、前後や状況の文脈判断を正しく認識できなくなったとしても、意外にも単語を忘れたり、文法がおかしくなったりすることはない場合もあるのです(もちろん低下した部位によります)。
ここでわかるのは、語彙、文脈・状況判断、文法などは一つの機関がまとまって処理しているのではなく、それぞれ担当部署(?)が異なり、例えば文脈・状況判断部隊だけが機能低下を起こすと、語彙、文法は正確なのに、状況にチグハグな言葉を発するようになる、それぞれは別々にトレーニングする必要があるのです。

スーパー小学生もセンター現文は解けない

似たような話に、中学受験で最高レベルの学力を有する小学生に、センター試験の現代文の問題を解かせると合格点が取れるのかという実験があります。
結果は、いわゆるFランとされる大学で要求される得点水準にも達することはできませんでした。

これは、まさに上の会話のように、語彙、文法などの知識は十分な子供であっても、文脈・状況判断のリソースが少なすぎるため、「普通こう聞かれたら自分の名前を答えるよね」という判断ができず、頓珍漢な解釈をして正解できないという事態が起きていたのです。

仕事をしたことがないとTOEICの問題も意味がわからないことがある

TOEICでも、「ビジネスメールでは普通日程調整の候補日はこの部分にこう書くよね」という業界の常識・空気感を知っていなければ、なかなか正解しにくい問題が出題されます。
これは、英語力とは関係ないところで、ビジネスコミュニケーションスキルがないと判断される典型例です(ですから、大学入試にTOEICを使用するのは個人的にはミスマッチだと思っています)。

そこで、認知症患者でも、具体的に機能低下をした部分、機能低下をしていない部分を特定した上で、そこを集中して鍛えたり、かわし方を習得(周りの人も)したりして、意外にも通常どおりの生活ができるまでに回復(と言っていいのでしょうか?)することもあるのです。

実は、ダスキンのCMで人気者になった双子の100歳姉妹「金さん銀さん」も、認知症が進行していて「金は、100歳!100歳!」が発声できる限界だったらしいのですが、その後テレビに出るようになり、人との関わりが増え、さらに何か喋るごとに「ちやほや」されることが刺激になり、ある程度喋る能力を回復し、衣食住といった生活の質まで自力でできる範囲が向上するといった変化を見せたのです。

金さん銀さんを認知症から救った秘密の力

つまり、会話力は医学的に鍛えることができるという根拠があるのです。
GoogleでもYouTubeでも、会話力を鍛える系の情報はたくさんアップされていますが、その情報が語彙力を鍛えるものか、文脈・状況判断を鍛えるものか、文法を鍛えるものか、自分の脳機能を把握して適切な記事や動画を取捨選択して学習すれば、かなりの効果があるでしょう。
そして、私はおそらく大半の人に効果があるのは「文脈・状況判断」をする能力を向上させることだと感じています。

この能力は、残念ながらあなたの発した言葉に皆がうけ、喜んでもらい、場が盛り上がったり注目を浴びたりしなければ、なかなか報酬系が活性化し一気に脳機能が向上を始めるといったことが期待できません。
金さん銀さんの例では、自分たちの発した言葉が新聞・テレビに取りあえげられ、日本中の人々からチヤホヤされることで、報酬系が活性化し一気に脳機能が向上したという事実は否めないでしょう。金さん銀さんも、100歳だからといって女子は女子なのです。

会話力向上に最も効果的な方法とは?

会話力のうち、語彙や文法に問題はないけど、話題の選定が悪かったり、引き合いに出す例え話や体験談であまりウケたことがない人、文脈・状況判断にコンプレックスがあるという人は、十中八九、会話をしていて人から喜ばれたことがない、「すご〜い!」「おもしろ〜い!」などと、チヤホヤされた経験がほとんどないのではないでしょうか?

仕事においても、ビジネスコミュニケーションが取れない人は、そもそも自分の話を真剣に聞いてくれたり、「君はどう思うかね?」といったたぐいの質問を受けて適切に答えたときの達成感や、「なるほど、そうだったかのか!」といったビジネス界における「チヤホヤ」をほとんど経験したことがない人が大半です。

要は、一度でもチヤホヤされると報酬系が活性化し一気に脳機能(この場合は文脈・状況判断機能)が向上するため、とにかく最初のファーストチヤホヤを経験することが、会話力アップを図る突破口になるのです。

そして、このチヤホヤは生(なま)のチヤホヤでなければ効果がありません。そうなれば、必然的に誰かと会話して、受けて、喜ばれて、褒められて、満足されて、チヤホヤしてもらう、そう、誰かをまず満足させなければならいのです。

自分のしたい話なんてどうでもよくなってくる不思議

そのためには、まずは自分の話したいことを棚に上げ、目の前にいる誰かを喜ばせるためだけに集中した会話というものを企画し、台本を書き、練習し、披露するのが最短の方法です。

一度でもチヤホヤされると、実はそんな「自分の話したいこと」をいうよりも、みんなが楽しんでくれる会話をした方が何千倍も気持ちいいという考えにシフトしていきます。自分の話したいことを吐き出した満足感よりも、他人からチヤホヤをいただく満足感の方が圧倒的に高いということに気がつくのです。

そうなれば、会話力のアップなど放っておいても勝手に勉強・練習するようになります。20世紀では不可能と言われていた認知症老人の脳機能回復も、日本中からのチヤホヤは100歳の老女すらも変えさせてしまったのです。

誤解を生じないように今回はまとめます

誤解を受けやすい表現を多く使っているので改めて趣旨を説明して起きますが、人の脳は言葉を発する時、独立に機能する複数の機関により語彙が選択され、文章に組み立てられ、状況に応じた言葉が発せられています。
これは、認知症や脳機能障害を負った患者さんからわかった脳機能の事実です。
そして、低下した脳機能は回復する(おそらくは別の機能で補われているが正しいようですが)ことがあり、回復するということは、そこを選択的に訓練すると効果的な会話力向上を図ることができ、それを後押しするのは自分との会話で誰かが喜んでくれたという達成感である。
ですから、まずは計算でもいいので、会話で誰かを喜ばせてみましょう。きっと、生まれ変わったように会話力がひとりでに向上していくきっかけになると思います。

デリケートは話題でもありウケの良い話ではないとは思いますが、毛嫌いせずに試してみてください。結果の違いに驚くはずです。

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