こいつ（😅）が好かん

　僕は「おじさん構文」をバカにする風潮が少し苦手だ。って僕がいうとまぁ、明確にポジショントークになるのであまり深く立ち入りはしない。この記事の主眼は「おじさん構文」の擁護ではない。むしろ「おじさん構文」に対して比較的寛容な僕もさすがに擁護したくないのがこいつ（😅）。今日はこいつをこき下ろす。

　本題の前に誤解しないでほしいけど、僕は「おじさん構文」がめちゃくちゃ嫌いではないにせよ好きなわけでもないし、「おじさん構文」で温和なふりを装いながら気持ちの悪い暴力的なことをする人がいるのを見過ごしたくはない。「おじさん構文」を使う人は何かしらの意味で有利な側にいる場合が多いから、「おじさん構文」への嘲笑がカウンターとしてなにがしかの役目を果たしていることもわかる。ただそのうえで僕は「おじさん構文」の全てを嘲笑する立場をとってはいない。

　「おじさん構文」に比較的真摯な立場をとっていると僕は自負しているのだけど、その僕でも擁護したくない要素が一つだけある。こいつ（😅）だ。苦笑（汗）の絵文字。僕はお前が嫌いだ。潔さがたりん。真面目にやれ。

　一つエクスキューズをしておきたい。僕はこいつ（😅）のあらゆる使われ方が嫌いだというわけではない。むしろ、ごく一部の限られた使われ方におけるこいつ（😅）が嫌いだ。単なる苦笑に使われるとか、「大変だったけど（枕詞）、面白かった/別にたいしたことではない（メインメッセージ）」みたいな使われ方とか、そのあたりは別になんとも思わない。
　僕が嫌っているごく一部のこいつ（😅）がどういう場合かというと、自分が我慢しているということを伝えるのが主目的である場合の話だ。自分は困惑・腹立たしさ・ドン引き・苦労等を感じていて、そのことを穏やかに相手に伝えたいとして、そのためにこいつ（😅）が駆り出される場合がある。おじさん構文にはその用法のこいつ（😅）が頻出だ。僕はその用法が嫌いなんだ。その僕が嫌いな限られたケースについてだけの話を以下ではしようと思う。

　自分が負の感情を我慢していることを相手に伝えるためにこいつ（😅）が使われる時、こいつ（😅）はどういう働きをしているんだろうか。
　笑顔が果たしている役割は明白だ。自分は温和な態度をとるというポーズの表現、そして自分にとってたいしたことではないという余裕の演出。
　汗が果たしている役割は、自分は負の感情を我慢しているということの表現だ。加えて、単に我慢しようとしているだけでなく我慢しても完全に覆い隠しきれないということ、つまり我慢しているのはそこまで取るに足らない事柄ではないということの表現だ。
　これらがそれぞれ機能するからこそ、(1) 負の感情を我慢していることを (2) 発信の主たる要素として (3)温和に 伝えるという意図が実現する。実際のところこいつ（😅）の機能は全体としてそうわかりにくいものでもない上に状況と文章という材料もあるから、だいたいの場合は意図した通りのことが相手に伝わるものだ。

　ただ僕はその伝え方が不愉快だ。まず「我慢してるけど溢れてます」を絵文字で表現するのがダサい。我慢すると決めたならバレずに隠し通してほしい。とはいえ我慢しているものが大きすぎてどうしようもなくバレてしまうということはあるし、そこにかっこいい面もあることは否定しない。ただそれはマジモンの汗が物理的に、不可避に噴き出してバレる場合だけだ。こいつ（😅）の汗は意識的に指で打つことで出さなきゃ出ないのよ。バレてるんじゃなくバラしてるだろ。そういうところ、こいつ（😅）には潔さが足りないと思う。

　今のは汗の部分が気に入らないという話だけど、笑顔にも気に入らないところがある。笑顔による余裕の演出、という部分だ。自分が我慢していることを主要なメッセージとして発する使い方において、実際には余裕がなく空元気であることは明らかだ。
　ただ空元気も色々ある。嫌いじゃない空元気もある。この空元気は嫌いだ。なぜなら、こいつ（😅）の空元気は、全く空元気をやる気がないんだ。「余裕を演出してるけど、実は重大問題であるとバレる」までをワンセットで意識的にやってるんだから、この空元気は元気なフリがバレるためになされている。建前上すらも、元気だと偽るための空元気ではないのだ。
　元気なフリをするために行われる空元気は、たとえバレバレだとしても愛らしいと僕は思う。強がりなのか相手のためなのか、いずれにせよ健気な感じがするから。でもこいつ（😅）の、バレることが最初から前提の空元気は普通に憎たらしい。汗が出てる絵文字での苦労アピールでも、この不愉快なエセ空元気としての笑みがなかったらまだ許せる。本当に不愉快な笑顔。

　僕はね、背負うものが重すぎるから我慢するのをやめますというなら主体的に宣言してほしいんだ。別にこいつ（😅）に頼らないで直接的かつ温和に伝えることだってできるはずだ。それなのに「僕は我慢してるつもりなんですけど汗が噴き出しているようです。え？いや元気元気」って白々しく言うのがダサいと思う。メッセージの内容を表面上は相手の忖度に委ねて、解釈の根拠を自分の意志表示ではなく汗という自然現象に外注する、その態度が僕は好かない。

　「我慢しようと思ったけどやっぱり言うね、僕はこれとこれとこれを我慢してきたんだ。そうやって我慢して抱えるものが重すぎるから我慢し続けるのが嫌になった。そのことを君に知ってほしいんだ」とか「これまで顔に出さずに君をフォローしてきたけど、ちょっとそろそろそういうわけにもいかない。何かと不都合が生じてしまっている。だからもう共有するんだけど、こういうところを変えてほしいんだ」とか、なんなら「お前それは違うだろふざけんな」とかって、潔く素直に自分の意志を認めて自分の言葉で伝える方がいいんじゃなかろうか。もちろんそういう伝え方をしたからってうまくいくわけではない。だけどこいつ（😅）で伝えるのはダサすぎる。スタートラインにも立てていない。黙って諦められるレベルのダサさだ。だから僕は嫌いだ。