「頭の中をループする音楽と、見える景色の正体を突き止めようとした話」のその後。
曲が頭の中に流れながらもタスクに食らいつき、
何とかその日分の業務を終えた。
明日からは束の間の休日に入る。
(さあ、何をしようか)
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、まだ外出することはできない。
そうなると家で過ごすことになるのだが……当然ながら「あること」をやりたくなる。
(思い出したアニメ映画を見たい)
それは、頭の中をループする音楽と、見える景色が使われていた映画を見ることだった。
幸い明日は休日。時間はある。
このタイミングで見たくなるなんて、
これはもう「見ろ」と言われているようなものだと思った。
思い立ったが吉日。
わたしは早速その映画が見られるよう準備をし、映画を見始めた。
〇
結論、懐かしさと驚きに支配されっぱなしの90分間だった。
まず第一に、とにかく懐かしい。
その作品を見たのはもう四半世紀近く前だというのに、
記憶に残っているシーンが次から次へと出てくる。
「あっ、確かにこんな感じだったわ~」
「このシーン見たことある、そうそうこれこれ!」
たった一人で見ているのに、思わず感想を声にしてしまうほど気分が高揚する。
シーンの中には、わたしの頭の中でぼんやりと見えた景色そのものもあった。
頭の中に流れる音楽と景気が、目の前でそっくりそのまま再現されていく。
探し求めた景色が現実に流れる様を目の当たりにして、
なんだかちょっと目頭が熱くなる。
(久しぶりだね……)
まるで自分の幼いころを知る友人と久しぶりに再会したような、
そんな気分にさせてもらえた。
次にやってくるのは驚きの感情。
記憶に残っているセリフや景色が実際とずれていたり、
「こんなのあったっけ?」と思うような、全く覚えていないシーンがあったりする。
かと思えば、「なんでこんないいシーンを覚えていないんだ?」といった、
当時の自分が持つ感性とのギャップを感じることもある。
これはある意味、自分が変わったことを示していて、
あの頃とはもう違うんだな、と少し感傷的な気持ちにもなった。
〇
見終わった後、登場キャラクターの設定を調べてみると、
どうやら今のわたしの年齢は、その中ではかなり高めの部類に入るようだ。
昔見たときは大半のキャラクターよりも若かったのに。
懐かしさを感じるということは、そういうことだ。
時間が経ってしまったことを噛み締める。
(最初に見たときのわたしから何か成長できているだろうか)
(本質的には何も変わってないんじゃないか)
そんな不安が渦になって押し寄せる。
いつもなら、過去の美しい記憶にすがり、考えないよう逃げてしまっていた。
でも今なら、そんな不安にも、なんだか向き合うことができる気がした。
主人公たちのひたむきさに、背中を押されたのかもしれない。
そっと映画の画面を切り、わたしはいつもの生活に戻る。
頭の中をループする音楽は、いつの間にか止まってしまっていた。
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