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生成AIについて「metiってきた」記録 - AI画像生成の規制議論で見落とされている基本中の基本と #イ反社 +最新の衆議院での審議について

‪経産省(METI)さんの某課におよばれして、2時間ぐらい濃縮意見交流会してきました。‬ちなみに背広を着ようかと思ったのですが「え、白井さんがそんなこと言うなんて大人になったんですね」的なことを言われたのでやめました。

なんかマウントポジションとりみたいなツイート&インスタ投稿だけして終わるのもどうかと思うので、喋ったことと個人的な主観をまとめておきます。
というのもこういうの、あとで「こいつ組織を代表して?こんなこと言ってやがるぜ」とか、ひどい例だと陰謀論とかロビイストとして扱われたり、という話になったりするの困るので(著者、個人のクリエイター及びデジタルハリウッド大学院の客員教授として)、現在の法律に基づいた理解を述べておきます。

※ちなみに今回その辺の炎上を仕掛ける勢力の存在についても読み解けるかと思います。企業人としても正しい信念とエビデンスで筆を執っています。

※2023/5/15追記:同日開催された最新の衆議院での審議についてがまさにその話題だったの審議記録の文字起こしをしております

科学と技術が外から見れば似ていて異なるように‬
‪アートとデザインも外から見れば似て異なる。‬

まずはこんな話題が印象に残りました。
「生成AI規制論が出ているのだが、それはいったいなぜなのか?」に関するディスカッションです。
ぼくが言いたいことは、だいたいこれです。

‪科学と技術が外から見れば似ていて異なるように‬
‪アートとデザインも外から見れば似て異なる。‬

‪産業の中で発注や依頼で作るクリエイティブと‬
‪個人のクリエイターが‬魂や人生を賭して描く
‪一点ものの美術は違います。

もちろんまだ世に知られていない若きクリエイターさんが作る作品や、そのマインドにおいてはその境界は曖昧なのでしょうけど、
誰かに頼まれて描くものと、そうでないもの
さらに消費されるものと、一点もので所有権を持つもの。
それを侵害されると困る人、それを持たない人。

皆さんが「生成AIを炎上させたくなる気持ち」をチラッとでも持ったのであれば、常にこの視点を持っていただきたいです。

画像生成AI、炎上に加担する前に見てほしい

チェックポイントとしてはこんな感じになります。
・「写真誕生前後」で考える
・それは誰かの依頼で描かれたものなのか?
・その画像の商品性はどこにあるのか?
・その画像の権利は誰が持っているべきものなのか?
・目を引けばいいのか、所有する価値があるのか?

「写真誕生前後」で考える

ぼくの書籍でおそらく世界で初めて記述されたたとえ話なのですが、生成AIによる社会現象は「写真の登場」に非常によく似ています。

写真という技術が誕生したのに、それでも人々は絵を描き続けています。
いま、スマホのデジタル写真が当たり前のように無料で撮影出来て世界に伝えられる人類からは想像するのは難しいかもしれませんが、

・非常に写実的な絵を作ることができる
・ボケボケだった
・白黒しか表現できなかった
・銀板にしか残せなかった
・複製できなかった
・引き伸ばしや縮小もできなかった
・めちゃくちゃ時間がかかる(撮影だけで最低でも15分動けない、これはストリートの似顔絵師にとっては戦えるレベル)
という非常に不完全な技術でした

もちろんご存じの通り現在のスマホデジタル写真は、そんな問題はありませんし、SNSを通じて世界中に届けることだって一瞬でできます。そして写真の歴史を振り返れば当時だって(OpenAIのDALL-EやStableAIらのStableDiffusionがあるように)ダゲール、タルボット、バヤールといった技術のわかる画像生成の魔術師もしくはそれ以上の存在…つまり「写真の歴史における創造神」や協力者たちが競い合いながら、血を血で洗うようなドロドロした対決でそれらを作ってきたのです。

なお当時の画家、特に印象派や絵の具の開発者はこのあたりの対抗技術や表現を開発しています。そうやって写真と絵画は競い合いながら、表現を向上させてきました。もちろん写真家vs写真家も戦ってます。それは今でも変わらないかもしれない。


それは誰かの依頼で描かれたものなのか?

ぼくは(アニメの仕事も経験はありますが)研究者、執筆業、写真や映像、産業としてはゲーム開発者としての経験が長いのでそれらの分野の用語で解説します。
例えば、ゲーム内のキャラクター画像や広告メディアといった画像は「依頼主」がいます。これは個人や趣味のゲームでも同様です。何か目的があって描かれる画像です。写真誕生前は「画家にとっての肖像画」が「依頼主がいる画像」の多くの例でしょう。もちろん教会の天井画のような大型依頼もあります。

誰からも依頼がないのに絵を描き続ける人がいます。
上記の「サハリン」の新田さんのように非常にニッチな、誰もその価値を知らない世界で写真を撮り続けている人もいます。
産業の中で写真を撮ったり映像を作ったりすることは個人の著作ではありませんし、個人の著作として依頼されて作文を書いたりもします。
(このブログは誰からも頼まれていない個人の雑文です、念のため)

依頼主がいる画像は現代では「パブリッシャー」という存在が一番わかりやすいかもしれません。ゲームを売りたい出版社/版元(パブリッシャー)が、ゲーム開発者(デベロッパー)に「依頼」をしてゲームを開発してもらいます。デベロッパーは契約に基づき、ゲームを開発し、対価としてお金をもらいます(これは事前にもらえたり、売り上げに応じてもらえたりします)。そして、ゲーム内のグラフィックスはゲーム開発者やパブリッシャー、もしくは依頼を受けた広告製作者が依頼をして、クリエイターが製作します。広告業界ではこれを「クリエイティブ」と呼ぶことが多いです。ゲーム業界ではこれを「アート」と呼びますが、古くはこれを「グラフィックス」とか「素材」と呼んでいました。ゲーム内のアート、ゲームアートをアートと呼ぶようになったのは、日本では実は20世紀に入ってからで、多くは「デザイン」と呼ばれていました。一方ではゲームの企画やコンテンツのボリューム部分、シナリオなども「ゲームデザイン」とみなされていたのもあり、「ゲームデザイナー」と呼ばれる職業はその実は、多様でした。

なお、日本語では用語として「製作」「制作」がそしてProductionやCreationを意味する「せいさく」ですが、一般的には「衣がつく『製作』が業務的なproduction、制作は卒業制作なども含めたcreation」という使い方が一般的かと思います。「ただしNHKは逆」というルールもあります(おそらくTV発足当時の解像度で「著作製作NHK」とすると読めなかったのではないかとか、映画業界はどうなんだ、とかどんどん話が長くなります)。パブリッシャーを「版元」というのは印刷業界や出版業界の用語ですし、元を辿れば版画の版木の管理や絵師/彫師/摺師といった役割です。
また「政策」も「せいさく」ですがpolicy, governanceなどコンテキストや業界、その成り立ちの歴史によって意味が変わるのでこういう話は書き残しておくのが大事だなと思います。

その画像の商品性はどこにあるのか?

商品性、すなわち「お金を出してでも欲しい」という商品性がどこにあるのか?を誰が理解しているかという点でもあります。
お金を出すのは消費者とか購入者なんだから、消費者だろ…と思いがちですが、それはそうなんですが、意外と買う側がそれを説明できるほどわかっていないことって多いですよね。画像の場合はそれがよくあります。
例えばキャラクターのカードゲームですが、「NとRとSSRだったらSSRのほうが美麗で当たり前だし!」という話は、「NとRとSSRって何ですか」という人にはわかりません。同様に「○○という絵師さんが描いたXXだから!」というのもわかる人にしか、わかりません。これはすなわち、ブランドとか希少性とかいった「商品性」を生み出している人がいるから価値があるのです。これは意匠とか、意図とかいったデザインやコンセプトと混同されますが、プロダクションにおいてはプロデューサーが担当します。製作意図があって、市場があって、これぐらい売れそうだから、という仮説があるから価値が生まれるし、仮説に沿って購入されるから、それが正しいと証明できる。一方で、絵を描く本人やディレクターはもちろん「その商品性」は意識しますが、業務的な製作において、重要なのは「方向」と「納期」と「品質」になります。商品性として予算を確保したり、適切なタイミングでそれを投入する意思とは相反する要素があるので、「プロデューサー兼ディレクター」というのはなかなか難しいです。
例えば個人のゲーム開発者(=ひとり)でやっている人、というのはなかなかいらっしゃらないのですが、商品性と方向性と予算と納期と品質をすべて守りながら物を作れている、という相反することを達成しているスタジオです(実際には納期が犠牲になることが多いですね)。

画像生成AIの話に戻すと、「生成AIには著作権がない」というディスカッションはまだ白黒ついていません。米国では「AIが作った」という触れ込みでは「著作権がない」とされるガイドラインとなりました。

▼「AIが自動生成=著作権なし」「人間の創作=著作権あり」 米著作権局、AI生成コンテンツの登録ガイドライン公表 - ITmedia NEWS (2023年03月22日)

生成AI否定派の意見に振ると、「AIへのプロンプトは発注書と同じ」という議論も聞こえてきますが、これは若干議論の余地があるかもしれません。

確かに発注元から詳細仕様書としてプロンプトとモデルが指定されているのであれば、それは絶対です。しかし「こんな結果を得てほしい、この品質と予算の中で」ぐらいの発注書であれば、そこから先は受注者の創意工夫の余地があるかもしれません。

「品質」や「納期」についてはAIが担保してくれているので、これは大変なイノベーションです。予算についても、MidJourneyやNijiJourney、StabilityAI社のDreamStudio、NovelAIやAIのべりすと、MemePlexといったサービスの利用料で予算化はできます。
残りは商品性と方向性になります。方向性はプロンプトの探求の方向性であり、これは「プロンプトエンジニア」と呼ばれる人物が、予算と納期と品質にあわせてひたすら探求し続ければよいので、まさに「ディレクター」という仕事になります。逆を言えばこれがブレるなら、どんなにすごいAI画像生成モデルを使っても、たいした絵は作れません。方向性の欠如を最高に表したプロンプトが「1girl」でしょう。「女の子が描かれていればいいんでしょう?」という以外に何もありません。あとは運だけです。
商品性を知るプロデューサーが発注している、そうでなければディレクターは方向性を探求する必要がありません(ほかの依頼をこなしたほうがお金になるし、時間があれば自分で頼まれていない"制作"をするでしょう)。プロデューサーとディレクターの間に生まれるのが「商品性」と「品質」のせめぎあいになります。逆にブランド力がそれほどなく、妥協が許されるのであれば「とりあえずそれぐらいでいいんじゃね?」という形で市場に出してみることで、市場の反応を得られます。現在のAI画像生成はまさにそのような市場やブランドの形成期にあると見ますし、ここで生み出す価値が著作権なのか工業所有権なのかノウハウなのかでいうと、ノウハウではあるが知的財産の権利としては、特許なり意匠なり商標なりで既存の仕組みで権利化する方法はきちんとあるもの、という理解ができます。

その画像の権利は誰が持っているべきものなのか?

誰もが心を動かされる「美しい画像」というものがあるかどうかわかりませんが「萌え絵が好きな人ならこれは好きだろうな」といった"心の琴線"は、俗な言い方をすれば「好き好み」もっと俗な言い方をすれば「性癖」のようなものは、誰にでもあると思います。前述の「商品性」はまさにそれであり、プロデューサーと賢い消費者は同じセンサーを持ち得ている人物となります(作り手としての能力や資本、戦略はないかもしれません)。
しかしプロデューサーは「その画像の権利は誰が持っているか」については「知っているはず」です。仮に「お金を出して作らせた」のであれば、その契約上どうなっているか?がポイントになります。著作権を委譲するのか、ライセンスするのか。著作権のうち「著作権(財産権)」は譲渡できます(著作者人格権は譲渡できません)。

文化庁「著作権テキスト」

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/92466701_01.pdf

文化庁「著作権テキスト」より

しかし、依頼主と描き手、パブリッシャーとデベロッパーの間にあった著作権上の理解としては上記の通りなのですが、売り買いするのであれば工業所有権についても目を向けねばなりません。

工業所有権(こうぎょうしょゆうけん、英;Industrial Property Right)とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの総称である。産業財産権(さんぎょうざいさんけん)ともいう。知的財産権(あるいは無体財産権)の領域のひとつであり、主として企業活動に関するものを含む。
(略)
日本の法令では、法律や組織の名称に「工業所有権」の語を用いたものはあるが、「工業所有権」について明示的に定義したものはない。2002年に策定された知的財産戦略大綱は、「工業所有権」という用語は、主として特許権、実用新案権、意匠権及び商標権を指すものとして用いられているが、これらの中には、農業・鉱業・商業等の工業以外の産業に関する知的財産も含まれている。としている。
また、特許庁では、自らが所管する特許権、実用新案権、意匠権及び商標権を産業財産権としている。特許庁が所管する工業所有権に関する手続等の特例に関する法律も、工業所有権についての明確な定義は置いていないものの、特許法、実用新案法、意匠法、商標法及び国際出願法に定める手続を対象としており、特許権、実用新案権、意匠権及び商標権を工業所有権ととらえていると考えられる。

Wikipedia「工業所有権」より

工業所有権「Industrial Property Right」、特許権や意匠権、実用新案、商標権は正確な日本語の法律用語では「産業財産権」ですが、総称して「知的財産」これも「Intellectual Property」なので総称して英語との互換性からか一般には「IP」と呼ばれます。
AI画像生成においては「このIPを誰が持っているのか?」について、真剣に考える必要があります。明確に「このIPは私が持っています」と言える人は、認識の根拠があるはずです。一方で「IPの所有者をあいまいにしたい」もしくは「IPバイオレーション(違反)である!」と言いたい人は誰なのか?についてそろそろ目を向けていく時期が来ていると思います。

例えば、の例です(書籍でもしっかり書いている例です)。
そこに「初音ミクを作って」という発注があったのであれば、「初音ミク」は商標ですので、発注者には言い逃れができないIPバイオレーションの意図があります。MidJourneyやDreamStudioのライセンスにおいては「他者の商標侵害」は明確に禁じていますので、国際法うんぬんではなく、単に「利用規約違反」になります(=政治家や弁護士の出番はありません)。
「初音ミクのような」であったとしても、これは言い逃れは難しいかもしれません。なお開発者のチーム内で「こういう方向はどうだろう?」というディスカッションをするのと、市場に類似の画像を出すことは意味が違います。「類似」については特許庁には明確な判断基準がありますし、同じ役務(例えば「食品」とか「ITサービス」とか)で、明らかに商標権を持った商標を侵害するような画像の生成は、避けるべきですし、一般的にIPを扱う企業で開発を行っている従事者であれば「似すぎないように避ける努力」は常日頃からやっているはずです。さらに商標検索などの既存IPの存在は誰でも無料できます。

思考実験として「類似を避けないとどうなるか?」を考えてみると、これも興味深いことがわかります。パブリッシャーは「偽物を意図して商品を作らせた」ということであり、デベロッパーは「偽物をつくることを業務的に受け入れた」ということになります。商品は売ることができるかもしれません。「これはパロディです」「インスパイアです」と言い張ることもできるかもしれませんが、一般的な企業は「レピュテーションリスク」を考慮するでしょう。レピュテーション(reputation)とは日本語で「評判」や「評価」、「信用」といった意味を指す言葉です。 企業にとってのレピュテーションリスクとは、自社に関するネガティブな評判や噂が社会全体に拡散され、ブランド毀損や企業価値・信用の低下を招くリスクのことであり、これは企業経営にも損害を与える場合があります。
逆を言えば、ブランドや企業価値を持たない存在にとっては、何も怖くない。そして、世間的にそこまで認知されていないが価値を持ったIPがあった場合、そのブランド価値を貶めようとおもえば、攻撃側にはとても有利であることがわかります。IP検索をすれば誰が権利者なのかわかるのに、それを検索しない、無視しているのは誰でしょうか?
AI画像生成の是非や炎上に加担する気持ちが生まれた時に、ちょっと待ってこのことを考えてみてください。その攻撃的なツイートは誰に向いているのでしょうか?そしてその炎上によって得するのは誰でしょうか?

目を引けばいいのか、所有する価値があるのか?

炎上に加担する前に「目を引けばいいのか」「所有する価値があるのか」といった視点で考えてみましょう。例えば「ピカチュウとサトシがエッチな…」という書き出しで生成したプロンプトがあったとします。これによって「個人が楽しみとして消費できる画像」を生成するのは百歩譲って可能でも(多くの場合利用規約違反になる可能性は高いですが、ローカルのStable Diffusionで商標侵害をうたっていないなら回避できる要素もあります)、それを恒久的に公開したり、配布したり、お金をとったりする権利はありません。これは漫画同人誌と同じで、原作者やパブリッシャーが「こういう楽しみ方をしないでください」と明言されているのであれば、やめるべきです。違法とか遠慮とかではなく「やめてください」という権利であり、上記の著作権であれば著作人格権でディスカッション可能ではあると思います。

つまり「IPとして所有している側」が困る「目を引く画像」があったとして、その「目を引く画像」を所有したい人は誰でしょうか。これを拡散したい人は誰でしょうか?「目を引く画像」があったとしてそれに怒りを覚えたり、ケシカランと思うのは皆さんの感情や正義感によるものかもしれません、しかしそれによって毀損されるのは他でもない一次クリエイターです。

著作権法はアップデートされている

この手の話をすると「日本は学習するのは違法じゃない」とか「著作権は親告罪だろ?つまりバレなければ、訴えられなければいいんだよ」と甘く見ている人がいます。この存在も注意です。まず工業所有権法は平成10年の法改正されており侵害罪については、従来の親告罪を非親告罪とする改正が行われています。たしかに著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害等については過去は親告罪とされていましたが文化審議会でのディスカッションを経て、2018年以降現在では「著作人格権は非親告罪」となりました。5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはその両方が科せられます(著作権法119条2項1号)。自己の著作者人格権を侵害された者は、警察等に刑事告訴(刑事訴訟法230条)や被害相談等をすることができます。また被害者の告訴がなくても検察が自由に訴追できれば、海賊版を摘発しやすくなるため、著作権者の売り上げを守り、コンテンツ産業の後押しになる側面もあります。また同人誌等の二次創作活動については文化の発展として非親告罪とはならないものもあります。これは権利者が「二次創作OK」と明示している場合で、第三者の推測で勝手に訴えるのは危ない一方で、販売中の漫画や小説の海賊版を販売する行為や映画の海賊版をネット配信する行為等については非親告罪になります。これはTPP法(環太平洋パートナーシップ協定)によるものなので興味がある人はぜひ深堀してみてください。

さいごに:日本の文化とアートの視点

以上が現在の日本の法律におけるAI画像生成における‪現在の法律に基づいた基本的な習慣、用語、法律の現在です。
もちろん、新しい技法込みで世に問うのがアートという立ち位置もありますし、萌え絵のように(江戸末期の浮世絵/錦絵/版画のように)ある程度のフォーマットに沿って消費される(再販目的でなく買って消費される)もしくは広告のように人の目を引けばそれで良いというグラフィックスもあります。‬

個人的な印象ですが、ローメイカーの方々が(人目を引くために?既存産業やお年寄りに配慮して?G7的なリーディングを取るために?)生成AI規制を口にしていることを憂いておられる印象でしたし、どうやったら「生成AI活用派」が陽の目を受けるか?に心血を注いでおられました事が印象的でした。つまり我々の理解者ですよね。というか日本のAGC市場、すなわちアニメ、マンガ、ゲーム全部足すと、数兆円あります(ざっくりA=3兆円、G=3兆円、C=数億円。ただし国内のみ)。
現在のAI画像生成でエッチな画像を売っている連中とか、他者のIPバイオレーションしている人々は世界中にいると思いますし今までもいたでしょう。この市場から何か吸い取ろうとしていたとしてもそれは微々たるものです。しかし、日本に下手なレピュテーションリスクや規制が入るとどうなるでしょうか?

▼スクエニ、AI相棒と事件捜査できるADVゲームのデモを無償公開も、現時点ではAI削除(やじうまPC Watch 関根慎一 2023年4月24日)

https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/yajiuma/1495869.html

内部的にはAIを活用して開発された先進的なゲームで、従来のIPを活用して作られたものであり、一定の品質がある作品のはずですが、生真面目な日本企業はレピュテーションリスクは怖いのでしょうか。「AIを活用する」という視点ではおそらく大きなダムを築いてしまったかもしれません。

豊饒なコンテンツ市場を生む肥沃な大地と群知能

社会のフィードバックを含めた「売れるコンテンツを育てる日本市場」は集合知(wisdom of crowds)もしくは群知能(Swarm Intelligence)とも呼べます。群知能は「衆愚の知」です。必ずしも賢くはありません。というか平均的な知能とかテストの成績みたいに「比べて頭がいい」とかではなく、ある一定のアルゴリズムに従って行動する集団が「あたかも知能のように見える」という自然現象です。
初期の段階から大きなダムで堰き止めるということは、一見合理的な治水には見えますが、実際には下流に「(氾濫を繰り返して)本来肥沃な大地が生まれるはずだった土地」を失うことになります。

そして水が流れてこないことで、そこに生きる生態系も破壊します。
治水することが目的になったとしても、そこに水が流れてこないだけになり、別の流れ(ときに非常にアンダーグラウンドな存在)になってしまう。

日本は漫画やアニメ、ゲームといった水脈があったので、まずは法規制やガイドラインを固めるよりも、こういった自然史観で水脈や豊穣が生まれる様子を予測して、ロードマップや時限立法で対応すべきなのではないでしょうか。

これについてはこちらのブログで詳細を解説しています。

炎上させている側が誰なのか?手を動かしていると感じられる

‪実際手をうごかして個人ハッカーとしての趣味のチャットボットを作ったり、作家として活動したり、画像生成技術を活用した先進的な研究開発を推進している側からすると、「炎上させている側」が何者なのか?が見えてきますし、何が目的で炎上させているのか?とか‬‪「いま手を動かしている側のプレイヤー」が見えてきます。

そして既存のゲーム産業や映画アニメなどのデジタルコンテンツ系の研究開発からすれば「今までデータ活用を法的にも整備してきたのに何を今さら規制しようとしているんだ」といった状況であり、「まともに開発してきたAI利用コンテンツがレピュテーションリスクで禁じられる」といった状況はむしろおかしな状態で、こういったイノベーション阻害反社会的勢力(略称イ反社)は、たとえばWeb3の時なんかも暗躍しており、私以外にも指摘している人がいらっしゃいます。

岡部典孝さんは位置情報ゲーム「Ingress」の頃からのゲーム仲間です、現在はブロックチェーンや暗号通貨と法定通貨の両方でモノを売買する市場を作り、世界で活躍するスタートアップ「JPYC」の代表さんです。

イノベーション阻害反社会的勢力はどこにでもいます。あなたがそちら側に行かないために。

イノベーション阻害反社会的勢力は、どこにでもいます。
きっと生成AI界隈にもたくさん現れます。
味方のような顔をして、インフルエンサーのような顔をして、専門家のような顔をして、気が付いたらイノベーションのど真ん中にいるはずがイノベーション阻害反社会勢力になっているなってこともあります。
バズに乗じたデータサイエンス的な雰囲気の誰かとか、情報商材系インフルエンサーとか、毎日のようにツール紹介しているけど本当に使っているの?とか声のでかい方々とか。

メタバース、Web3、ブロックチェーン、位置情報ゲームなど…思い起こせば イ反社は居ました。最初は、彼らもちょっとした専門家だったんです。でもだんだんイノベーションの速度に追いついていけなくなったり、自分で会社起こして、そのB2B案件で利益相反とかコンフリクトとか、理不尽でご無体な契約とか、グレーゾーンが後から黒になっちゃった例とか、リスク見積もりが甘いクライアントに責任を負わせられたりとか、いろんな理由でイノベーション阻害反社会勢力になっていく…という表現が正しいのかもしれません。もちろん日本だけではなく、海外にもそういう状況があります。

でも社会がイノベーション阻害反社会勢力の情報戦に屈してしまったら、やっぱり負けだと思うんです。AI画像生成については、その技術のブラックボックス化をする必要がない(モデル以外はオープンソースであり論文もあるので)。法律も既存の法律で十分ディスカッション可能。むしろクリエイターの権利保護も行き届いているので「みんなが最新の法律を学べばいい」ってことなんです。知らないふり、学ばないままの勢力が強いってのが反社会的勢力の特徴かもですが、ローメイカーの先生方はそのへんの力の入れどころを間違えないように、ぜひとも賢い法律や対話をしていただきたい。

あなたがそちら側にいかないために。
考えなければならないのはレピュテーションリスクではありません。
誰が権利を持ち、誰が火をつけ、誰が困るのか。
きちんと法律を読みましょう、利用規約を読みましょう。
知らないから、怖いから、という恐怖こそが、テロリストの餌です。

たぶん続きます

なおmetiでのディスカッションは上記のような反社対策っぽい話はほんの1%ぐらいで、そんな日陰の話というよりは、「ちゃんと生成AIのいままでの歴史や投資に陽の目を当てていかなきゃねえ」という理解に時間はしっかりあてられたと思います。その後はご案内いただいた公共団体系の方とカフェで座談会。やっぱりちゃんとした仕事で長く成長してきた人たち大事よねえ、じゃあ何すれば…なんて具体的な話題で終わりました。‬

‪現場からは以上です。‬詳しいこと聞きたい人は聞いてください。
こういう「ちゃんとした議論」をしっかりできる人と話をしたい。
また機会あれば続きを書きますね。

追記・資料 - 経済産業委員会での答弁

著書でコラボさせていただいた作家の852話さんツイートより

文化庁中原審議官「現在著作権法(生成AIに関する)改正で予定されているものはない」(新たな規範を作る予定は今はない)現行法の周知を予定している
・生成AIの画像も、通常の著作物の利用と同様のラインで著作権侵害となるかが判断される。
(2023年5月12日 11時 03分~)

https://twitter.com/o_ob/status/1657788333219778561

開会日 : 2023年5月12日 (金) 会議名 : 経済産業委員会 (4時間45分)

まさに時を同じくしてこのディスカッションがされていたのですね!
せっかくの審議中継なのでご自身で観ていただくのがよいとおもいますが、おじさんの長話を4時間聴くのはつらいひともいるので(ぼくはつらい)、該当の審議の箇所を要約文字起こししておきました。

平さんに質問する足立さん:シークバーで2:22:45ぐらいから

足立康史 衆議院議員:「注目されている」とは書かれているが「注目している」という形ではない。岸田首相についても『AIと著作権制度について整理されていない課題がある』という指摘については承知している、など。
文化庁中原審議官へ質問

シークバーで2:22:17ぐらいから

以下要約(ほぼ発言通り)

中原審議官:AIによるコンテンツ生成については、既存の著作物に似たものが作られれば刑事罰になると考える。保護と利用。文化庁としては正しく理解していただく、基本的な考え方を周知している。引き続き著作権制度のわかりやすい説明に努めていきたい。

その後、足立議員も「写真の誕生で印象派画家の誕生」を引用している。続いて「著作権法はあるが、知財法は経産省が中心。知的財産法制については課題が見当たらない。いまの法律を周知させる。判例を重ねていくのが大事と考える」と提案。
西村康稔 経済産業大臣「(足立議員にむけて雑談風に解説すると)流行っている音楽に似たようなものを作ると侵害となる。判例が積み重なれていくことで成立する」
足立議員「懇談風に言うと、大事なことは日本政府の方針です。大事なことは「ハードロー」での制御は反対。ソフトローで。行政府はこう解釈している。司法府ではこうなっているので、よく理解して経済活動してくださいね、ということを周知していくのが大事。ここにルールがないのに、ブルーレイ政令指定のように政府が出て行って権利者の首まで締める。新たな規制を講じる予定はない、そういってほしい」
文化庁中原審議官「著作権法の改正においては、社会の状況の変化を鑑みて、保護と利用の両方を考えている。わかりやすい説明にも考えていきたい」
足立議員「中原審議官は考えていないね、今の時点で思い当たる追加で政府主導で作るつもりはない、と言ってください」
文化庁中原審議官「本件に関して改正が予定されているものはありません」
足立議員「水面下でもテーブルに乗っていない?」
文化庁中原審議官「現在でも、先ほど申し上げました通り、ございませんので、周知に努めてまいります」
足立議員「指令組織。会議を作って終わり、じゃないですよね?会議体じゃなくて行政組織。すぐに内閣府内閣官房になってしまう。文化庁を吸収合併して、知をふくめてAIは経済産業大臣が、という体制を」
西村大臣「官邸でAI戦略会議が開かれました。懸念リスク対応策、開発に向けて取り組んでいくかなど。知財、プライバシー、教育分野について。経産省にとどまらない課題がたくさんある。G7にも出席したが総務大臣、デジタル大臣と出席した。総理の下でAI戦略会議や戦略チーム。これはお気に召さないかもしれないが、内閣府が担っていく。言語モデルの開発とか計算基盤とかさまざま対応していきたいと考えている。」
足立議員「ありがとうございます、知的財産については周知が大事だ。発明とは何か、創造とは何かが問われている。俳句、575はすべてそこにある、創造性とは何なのかを問われている。平さんに負けないように党として創造していきたい」

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