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最安は最易とはならないジレンマ-第23回大分県麻酔科学アカデミーの配信技術-

2ヶ月おきのハイブリッドセミナー、大分県麻酔科学アカデミーのお時間です。

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テーマは『簡易化』

先週のCVセミナーもそうだったが、今回与えられたテーマは「配信技術の汎用性」。誰でもできるようなシステムを構築する。そのために、あえて愛機であるV-8HDでなくATEM Miniで配信機材を組むという。

それなりに、自分はV-8HDを考えあって選択しており、その御蔭でできるようになったことも多くあった。じゃあそれをATEMでできないのかって、実は工夫次第で案外ATEMでもハイブリッドセミナー配信は組めることが判明した。もちろん、ライブスイッチングやアドリブはできない(ほぼ無理という難易度)のだが、HDMI入力が4で足りる(カメラ1台体制)のであればいけなくもない。今回はそういうわけで自分がいなくても大丈夫なように、なんなら配信操作を他のスタッフに任せることも想定していた。

先週のCVセミナーを受けて、今回も超音波ライブスキャンをやるということになったが、今回使用する機材をATEMにつなぐためのシステムはすでに確立しているので、超音波画像が入力されるだけで特別変わることはなく、それようにマクロも組んだ。ATEMのいいところは、マクロを組んでそれも含めた機材の設定をシェアできることにある。ファイルは.xmlファイルで出力され、HDMI入力機材を揃えておけばテンプレートとしてシェアできる。今後、このシステムを広げるために、実はATEM Mini software controlの簡易マニュアルまで作成した。自分でも時に操作を忘れることもあって、自分で作ったマニュアルだが何度も見返すことが多い。YouTubeにあがっているノウハウ動画を自分なりにスライドにまとめたもので、ほしければ大分県麻酔科学アカデミーまで♪

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トラブル①『スケーラー忘れ』

今回、きっかけとなった小さな2つのミスが連鎖反応的に大きくなり、結果として誰でもできる配信操作を目指したはずが、自分にしかできない配信になってしまった。その一つのミスがスケーラー忘れだ。

今回機材は、ATEM Miniで組んだ。このスイッチャーの場合、超音波診断装置の映像を読み込むためには解像度を配信に合わせて揃えるためにスケーラーが必要になる。

トラブルの一つは、単純にこのスケーラーを忘れたということ・・・。それが何を意味するかというと、超音波の画像を読み込めないということ。

やばい・・・配信ができなくなる恐れ。。。

ここで思い出したのが、その2日前に実は「最安超音波配信検証会」ということで、ZoomISOとOBSを使って配信画面を組むという練習会をしていた。カメラや超音波画像などをHDMI→スイッチャーに入力するのではなく、カメラはカメラ用、超音波画像は超音波画像用(実際には超音波画面を写す)のZoomでログインして、それをZoomISO→OBSで画面配置を組むということ。

まさかの現場でOBSの設定を組む羽目になってしまい、Zoomサポートを依頼していた配信仲間からは『大丈夫、落ち着いて。先生ならできるよ』と励まされながらなんとか乗り越える。

練習会のときは何回もOBSアプリがクラッシュしたが、今回は動作が安定していたのは不幸中の幸い。まさかOBSのシーンをその場で組むという壁が立ちはだかるとは思わなかったな〜〜。ZoomISOを採用してからOBSが復活してきてここ最近ちょっと使ってたからできたけど、それがなかったら久しぶりすぎて使えなかっただろうし、そういう発想も浮かばなかったと思う。

トラブル②『いつもと違うプロジェクター』

もう一つのトラブルは、いつも使っているプロジェクターの電源コード忘れ問題。急遽、昔使っていたプロジェクターを使うことになった。

ATEM×OBSを初採用した時に使ったプロジェクター。電源コード忘れで急遽の代替案としてあがったが『そう言えば・・・』と実は嫌な予感がしていた。この時の配線図はこちら。

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できた体で配線図を書いているが、このHDMIスイッチャーがHDMI出力信号が弱くてプロジェクターに映し出せず、結局ケーブルの差し替えで対応した。もしかして、ATEM HDMI outからプロジェクターにつなげないのではないか・・・?という不安がよぎる。しかし、先週のCVセミナーでは問題なく映し出すことができていた(今思い返せばそういう不安材料はあった)。

いざ、設営して動作確認すると画面が映っていなかった。HDMIケーブルの長さを変えても変わらず、別の機材としてPCのをつなぐと問題なく投影できるのでこれは完全にATEMの問題。なんとなくの不安はあったので、トラブルシューティングの対応は早かった。結局、双方向ハイブリッドのやり取りを諦めて、ZoomPC→ATEMにつないでいた線をZoomPC→プロジェクターにつなぐこととして、会場スクリーンにはZoomPCの画面をミラーリングで映し出すことにした。本来であればミラーリングではなくサブディスプレイで出すべきだろうが、それだとZoomのオペレーションができなくなるし、返しモニターなしにデュアルディスプレイにしたくなかったのであえてのミラーリングにした。

線をつないだからといって、必ずしも映像が出るわけではない。もはや自分の中では常識化していることだが、意外と知られていない。知られていないと、そのリスクも評価できないし、対処できない。その安全確保のために、いっけん複雑化している自宅の配信機材だが、安定性の担保のためには必要不可欠。その大切さは、やってみて失敗して痛い目を見ないと、経験者が答えを提示してもなかなか実感できないものなのかも知れない。そういう意味では今回は、最小構成での配信機材で自分の中ではダメであることの実証が裏テーマではあったが、その対処のために過去最難関の配信になってしまったのは何という理不尽・・・

会場スクリーンにはZoomの画面を写して、配信画面越しにプレゼンスライドを見てもらうことになった。

過去最も複雑化したZoomオペレーション

オフライン会場のスクリーンは、あきらめてもらった。実際、配信しながら画面の調整や音声調整をするときはデスクトップを切り替えるので会場スクリーンにもその画面が表示される。別画面に切り替えて作業するときは、会場にはZoomが映らないため演者は『ん??』となってしまうが「配信はされています(続けてください)」という謎のキューを出す羽目になった(オンライン参加者にとってしたらまじで謎)。リアル会場はだいたいスタッフで、参加者は常連の1名だったので、許してね。

パワポスライドを使った発表のときは、ATEMスイッチャーで演者PCをHDMIでつないで映し出す。超音波映像を映すときは画面はOBS×ZoomISOで組むのでOBSの仮想カメラに切り替えるというZoomのオペレーションも複雑化した。さらに、OBSの画面の調整作業もある。

このオペレーションは、使用機材やアプリを熟知し、使い慣れていないとできない。最小構成≒最安構成としたが、最安だからといって最易には決してならずむしろさらに複雑化し最難関のオペレーションとなった。まぁ普通はあきらめて終了なんだろうな・・・。配信中のPCをスクショ撮っていたのでシェアします。ね、萎えるっしょ?

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ATEM software controlのマクロ使用とオーディオ調整の画面。マクロ操作のためウィンドウが1つ増えるのが痛い。

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ZoomISOとZoomの画面。ISOの機能を使うとUserごとにウィンドウが出るため、まじで混乱します。

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配信しながら音の調整。ある程度操作になれるとZoomオペレーションに余裕も出てきてミラーリングからデュアルディスプレイにディスプレイの設定を変更することができた。まじで、マルチビューいるわ。。。

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ZoomISOとZoomの併用。

音問題はほぼスルー

今回マイクは、RODE WIRELESS GO IIをL/Rに分けてATEMのMIC 1/2に入力。これは、ハードウェア上でマイクの切り替えをできるので便利だった。しかし、マイクの音量調整となると話は別。完全にATEM software controlでの調整になるのに加え、ATEMには音のモニタリングのための音出力がない。Zoomで配信されている音を聞きながら調整するしかないのだが、これって実はすごく難しい。音に不具合があった場合に、その原因がマイクにあるのかATEMにあるのかZoom(ノイズキャンセリング機能)にあるのかがわからない。当然、対処も遅くなる。ここは、本当に弱点です。

ZoomISOを音モニタリングのために使えた!

今回の経験の学びの多くはトラブルシューティングであるが、唯一今後も使えそうな新技術ノウハウがこのZoomISOを配信音声モニタリングとして使うこと。

オーディオミキサーを使う場合は、だいたいモニタリングoutがあるのでそこから音を聞いてフィルターの調整や音量、GAINなどをいじったりするが、オーディオミキサーから渡した音→Zoomからの調整で最終的に視聴者が聞く音とオーディオミキサーで作った音については差があることがしばしば。この、配信音のモニタリングをそこにするかというのはいつも頭を悩ませていた。ハウリングややまびこにならないように音をモニタリングするために、iPhoneなどの別端末でログインしてイヤフォンで聞く(操作を誤るとハウリングのリスク)か、別のスタッフにモニタリングをお願いするか(スタッフ間コミュニケーションをどうするかと、それを聞いてからの調整だと作業はワンテンポ以上遅れる)なのだが、ZoomISOのスピーカー設定を、Zoom本体とは別に設定できることが判明した。

配信用のPCでは、ホスト端末としてのZoomとZoomISOのアカウントの2種類のアカウントでログインできる。ハウリング防止のためにZoomISOはミュート必須、オーディオ切断推奨なのだが、ZoomISOのスピーカーをAir Pods MAXに設定すればそれで配信音のモニタリングができる。これは、長年配信音のモニタリングが課題だったがそれを解決することができた。iPhoneでログインしてイヤフォンで聞いてもいいのだが、iPhoneは記録用に写真とったりもしたいし、会場のインターネット回線の帯域を圧迫するためできるだけ端末は減らしたい。

これは、有意義な経験だった。

ATEMではアドリブでのライブスイッチングはほぼ不可能

今回は、特別講演の内科開業医の先生の話がすごくおもしろかった。それを、配信では淡々とスライドを流すだけになってしまった。配信しながら、ここは演者カメラに切り替えたいとか、PinPで演者カメラ入れたい、演者カメラメインでPinPでスライド入れたいなどのライブスイッチング案が浮かんだが、それを実際ATEMで実現するのはほぼ不可能だった。PinPはスイッチャーを用いた画面構成では基本機能だが、挿入位置や大きさはATEM software controlでの操作が必須となる。マルチビューでプレビュー/プログラムアウト式にすれば、プレビュー画面で配置を整えてから画を出すこともできるのだが、ATEM Mini(無印)では繰り返すがマルチビューがないため、配信されている映像を見ながらの調整になる。せっかく面白い話をしてくれている話を折ることにもなるので、今回はライブスイッチングはあきらめた。このことは、演者が素晴らしかっただけに非常に心残りだった。

ヒマナイヌスタジオの川井さんのこのYouTubeを自分はバイブルにしている。

23:00あたりから、そのライブスイッチングのテンポについての話がある。

そういえば、TV見ていても同じ画面を10秒以上見ることはない。PCスライド、演者カメラ、別カメラ、会場カメラなどを講演の盛り上がりに合わせてスイッチングしてみてはどうだろうかとアイディアが浮かんでくる。

リアル会場は、スライドばかりを見るわけではなく、演者の身振り手振り、おどけた顔やリアクションを見渡しながら講演を聴く。オンライン参加者にも、そういうシーンに一緒にいれるようなスイッチングがあってもいいのではないだろうか。アドリブって大事だよな〜〜。

最後に

最安構成、誰でもできるシステムを考えたつもりが、ちょっとしたトラブルで一気に難易度が上がり代替案として自分にしかできない配信になってしまった。今までの配信で一番難しかったです。何せ、最小最安構成なので機材でできることが限られているのである程度ソフトウェアーに頼るところもあり、OBSをに関してはクラッシュしないことを祈るのみだった。

本番では、トラブルが必発です。そのトラブルを、どの程度想定して発生したときはどう対処するかの準備も大事だが、中には想定外のトラブルが起きることもある。どの程度想定できるかと、対処のスピードは正直経験しかない。ある程度の経験はノウハウとして伝授はできるが、言葉で言われてもわかりにくい部分や、実際の画面に遭遇しないとそもそも気づかない可能性も大きい。

だから、どんな細かい小さなことでもいいから配信を実際やってみるということが大切だと思う。内容は何でもいい。雑談コーナーとかゲーム配信でもいいんです。今回も、セミナーの2日前にまったく別件でテスト配信検証会をしていなかったら当日の対処は違ってきたと思う。マジで、経験です。

使う機材も、ピンきりだが、自分の中ではトラブル対処能力や安全性だと思っているが、機材が変わるだけでここまで大変になるなんて思っていなかった。『危険性がここまでわかってるんだし、自分がやるんだからある程度は大丈夫だろう』という驕りもあったが、先週と合わせて2週連続まじで失敗の連続・・・。

ちょっともう、無理ってのはわかったので思い通りの機材で思い通りの配信をしていこうと思います。でもさ、粘ったほうですよね、自分。

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