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多施設間双方向ハイブリッドハンズオンセミナーの可能性

個人的に色々忙しくて、記事のUPが遅れてしまいました。先日、北は北海道南は沖縄までの全国7施設をつないで、双方向ハンズオンハイブリッドセミナーの実証実験を開催しました。配信技術的には以前noteにまとめたものをいざ実証してみるというものでしたが、改めて振り返ってこの技術の可能性を探っていきましょう。

超音波オンラインハンズオンの配信画像の検証

今回、セミナーの題材として用いたのは超音波診断装置を用いた神経ブロックセミナー。麻酔科領域の中の一つで、神経ブロックを盲目的でなく神経あるいはその周辺解剖を超音波で確認して麻酔薬を注入することでより安全確実に必要十分な神経ブロック効果を目指したもの。神経ブロック分野のみならず、医療の世界で超音波診断装置は低侵襲で簡便にできることから多くの診断技術に役立っていて、今回のセミナーのノウハウはそのすべての教育セミナーで応用可能であると考える。

教える側、教わる側ともにどのような画面を配信すればよいかはまだまだ検証中。超音波画像を習うのだからm超音波画像を配信するのは当然ながら、それだけでなく超音波プローベ(患者に当てる部分)をどの向きからどう当てるか、施行者は患者に対してどの位置に立つべきかといったことも指導内容になる。これまでいろいろ検証してきた結果、以下に示す2画面配信(あるいは3画面)が適切なのではないかという結論に至った。

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△俯瞰画面に超音波画像をPinPで挿入(一番右上のPinPはZoomの仕様で挿入されたもの(以下略))

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△手元画面に超音波画像をPinPで挿入

これ以上の画面構成も考えたのだが、教育教材として情報過多になるということで却下された。必要に応じてこれにパワーポイントのスライドを重ねた最大3画面がMAXだろう。

超音波診断装置を配信する問題点:スケーラ

新型コロナの影響で、様々なことがオンラインへと移行し個人が情報発信する機会も増えた。Webカメラだけでなく、ATEMなどのハードウェアスイッチャーが一時期入手困難となっていたことからも明らか。カメラを使って撮影、配信をするのは以前と比べて広がってきたとは思うが、超音波診断装置を配信するのには少し工夫が必要。超音波診断装置の多くには、DVIやHDMIなどの外部出力のための端末がある。どの段階の画像を出力できるかはメーカーによるのだが、それに加えて解像度の問題もある。多くの配信ツールがFull-HD(1920×1080)に対応する中、まだまだVGA(640×480)やXGA(1024×768)のものもある。コンピューターに一度映像を入力するためには何らかのビデオキャプチャーデバイスが必要になるが、そのデバイスが入力解像度に対応している必要がある。それだけでなく、Full-HDだと16:9の画面サイズなのが、VGAとかだと4:3になっている。この4:3を16:9に変換するときに、横が間延びしてしまうことがある。そのため、縦横比をそのままに解像度を変換するスケーラーが必要になる。

V-8HDなど一部のハードウェアスイッチャーにはスケーラーを内蔵しているものもあり、それだと直接つなぐことも可能。このスケーラーもそこそこ値段がする。

双方向セミナーで便利なお絵かき機能

今回、超音波初心者ということで1年目の初期研修医に協力してもらった。麻酔科専攻どころかまだ医師1年目なので、この世代にレクチャーができれば教育セミナーとしては及第点だろう。

遠隔で、斜角筋間ブロックをご指導いただいた。「そこの甲状腺を消して」「C7が見えてきたのでもう少し振って」などといったことは初学者には全く伝わらない。そこで有効になるのがお絵かき機能。

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Zoomでのお絵かき機能は、画面共有モードのときのコメント機能を使う

画面共有の表示

超音波画像を画面共有で出すには、一旦配信PCに入力した映像をQuickTimeやVLCメディアプレーヤーなどの映像収録が可能なアプリに表示させて、そのアプリ画面を共有する必要がある。解像度の高い第2カメラの共有ではこのコメント機能が使えなかった。

V-8HDでできること

今回、7施設でそれぞれの方法で配信をした。我々は、もう忖度をやめ全力?のV-8HDで配信することにした。

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V-8HDにはHDMI 7と8がスケーラー搭載なので、そのままHDMIケーブルで入力させることができる。シンプルイズベスト!少々値がする機材ですが、それに見合う機能を搭載している。さらに、Live配信しながらPinPやSplitの調整を直感的にハードウェア上で操作完結させることができる。今回さらに、フットスイッチも久しぶりに稼働させて、2シーンであればエコー席で画面切り替えができる。

今回、Zoomのホスト業務もあり、何を凝ったか待機映像まで作って流していたのでそこの切り替えで宇宙画面を出してしまった。

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原因は、QuickTimeで待機映像を出しっぱなしにしていたので、QuickTimeのビデオ選択ミス。経験があるからトラブル発生時の対処もわかるし、いや〜、手慣れたもんだ(笑)

途中で細かい工夫や修正もしている。

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この画面は、手元カメラに超音波画像をPinPしているのだが、

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この画面は、手元カメラと何も入力されていないブランクをSplitして、それにPinPを重ねている。こうすると、手元カメラの画面も拡大・縮小、左右のパン、さらにSplitの画面比も変えることができる。こうすると、ある程度制限はされるものの手元カメラの操作もこちらでできるのでワンオペ配信では重宝すると感じた。

ネックとなったのは「インターネット回線」の問題

今回、一番のネックになったのは配信機材関係ではなくインターネット回線の問題だった。多くの施設が、それぞれの病院や大学からの配信であったので、それぞれの施設の回線を用いた配信が多かった。大学病院などの備え付けの回線を使うためには、セキュリティーの問題や機材のMACアドレスを登録する必要があったり、定期的にIP更新のため回線が途切れるなどといった癖のある回線が多かった。

前回の、研究会の配信でも結局は回線問題があった。

今回も自分は、インターネット回線は自前のテザリング回線で行った。契約は、docomo系の格安SIMであるBIGLOBE SIM 。回線速度は上り5Mbpsほど。これは、今回参加した施設では一番厳しい回線条件になった。しかし、一応Zoomの推奨している回線速度的にはクリアーしており、YouTubeのアーカイブを見る限り自分の配信は問題なく行われたようであった。これまで、様々な機材を検証して配信システムを構築していたが、そろそろ5Gも実は大分でも都心部は広がってきているので5Gに切り替えることをホンキで考えています。

ハイブリッドセミナーだが、オンライン演者の時間が長かった

今回、そういえば久しぶりのハイブリッドセミナーだった。現地スタッフと研修医を数名集めてのリアル会場でのハンズオンセミナーだが、今まではこちらはどちらかというと配信側だった。オンライン演者の時間もあったが、せいぜい1セッション。しかもパワーポイントのプレゼンスライドなので、その画面をZoomデュアルディスプレイでプロジェクターに出せばいいだけだったが、今回は1演者に過ぎず、むしろ配信されているZoomを視聴する機会も多かった。Zoomで2箇所以上にスポットライトを当てられると、Zoom画面をスクリーンに出したほうがいい。

途中で、PCをミラーリングにして映し出すようにしたのだが、こういったオペレーションもあるんだな・・・。トラブルに振り回された前回のアカデミーだが、そこでの経験も役に立つことはあるわけだ。

双方向ハンズオンハイブリッドセミナーの可能性

今回の実証実験を通して、この技術には大きな可能性を感じた。

新型コロナウイルス感染症の影響で、医療業界のみならず多くの業界で教育機会というものは失われてきた。特に、実習やハンズオンなどの体験型の教育機会は大きく制限されている。ビデオ教材などの教育素材もあるが、やはり体験型であり双方向でLiveでフィードバックをもらいながら教育を受けたほうが断然いいに決まっている。

特に今回の、超音波配信に至っては、リアル会場では絶対なし得なかったグループハンズオンでの特等席を誰にでもどこでも提供できるというのは非常に大きい。カメラの工夫によっては、インストラクター目線を出すこともでき、それはいかなる特等席でも見ることができなかった映像になる。少人数とはいえグループ内で競って見やすい位置でインストラクターの手技を見ようとする必要がなくなり、さらにオンデマンドでアーカイブを残すことでいつでも反復学習をすることができる。もちろん、まだまだ発展途上だし、配信技術だけでなくタブレット端末でお絵かきをしながら教育する側や教育を受ける側にも慣れが必要。さらに、オンラインプレゼンテーションとなると用意するスライドも文字の大きさやアニメーション、動画などが制限されるのでオンライン向けに工夫が必要になる。しかし、そこを乗り越えてオンライン教育に参入できれば、対象は日本全国、全世界に広げることができる。可能性しかないのだが、可能性に酔うことなくしっかりと実現していかないといけないと改めて思った。

普及しろ、ハイブリッド!!!

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