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2021年締めくくりのハイブリッドセミナー-第24回大分県麻酔科学アカデミーの配信技術

毎偶数月第1金曜日は大分県麻酔科学アカデミー。増えることはあっても(謎)減ることはなく、かれこれ24回目です。アリバイ作りのためにシステムを安価なものに組み替えた結果トラウマレベルの難配信となった前回とは打って変わって、マジで今回やりたかったことを実現した回となった。前回はこんな感じでした(ほぼ愚痴記事)。

アカデミー#24ポスター

この、Multi viewデザインのポスターは史上初ではないでしょうか?結局種明かしはしそびれましたが、ハードウェアスイッチャーを用いたオペレーションを理解する上で最も重要な概念図となっています。

音のトラブル発生:マイク受信機の不具合

今回は少し設営の時間がいつもより短く、テキパキとした会場設営が要求された。金曜日の19時集合という医療従事者にとって実は一番の難題ではないかという噂もあるが、今回はなんとか19時に余裕を持って集合できた。

今回の配信機材は、一切の忖度をせず自分が好きなように、そしてやりやすく確実で最も安全な方法を採用した。作用機材の一つ一つに意味があり、なぜその選択をしたのかも事細かく説明可能なので、ほんと遠慮せずいきました。

一通り、自宅と同じように設営を終える。この辺、出張対応コンパクト配信システムの強み。家と同じ環境をどこででも作れるのはメリット。

今回、なんとRODE WIRELESS GO IIの受信機の電源がなぜか入らなかった。

これまで絶対的な安定性を誇っていたWIRELESS GO IIがまさかのトラブル!!。本体の電源は入るのに、受信機の電源が入らない。30分の準備時間のうち20分はこのトラブル対応でした。PCアプリにUSB接続すると機材は認識され、バッテリー充電率も99%だった。本体にリセットかけても無理(というかこの対応は本番配信中にやった)。マイクのパックアップはないぞ!!

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会場にマイクの候補として、配信PCのマイクという案もあった。しかし、そこで演者の声を適切に拾えるかに不安があった。

マイク案1:演者カメラ(HD CAM)マイク

用途は後述するが、今回演者カメラを2台用意した。1台はSONY ZV-1でマイクは付いていないが、もう一つのHD CAMにはマイクがついている。V-8HDは、HDMI接続した際に映像に音もついてくる。本配信ではそこをミュートにしないとすべての音声付き映像入力のすべての音が配信されてしなうので雑音や配信席の打ち合わせや打鍵音などすべてを拾ってしまう。V-8HDのデビュー戦はその仕様に気づかずやたらいろんな音のする配信になってしまった。

オンラインセミナーでマイクをどうするかという問題は非常に難しいが、今がなしている映像と一緒に来る音が一番違和感なく聞こえる音なのではないか(特に家庭用ビデオカメラを使う場合は)と考えて、そのマイクを使った回もあった。

案の定、演者カメラに音はしっかりついてきており、V-8HDでそのミュートを解除したのだがなぜか配信に乗らず、配信5分前だったので次の案に行くこととした。(どれだけ焦ってるかお分かりだろうか)

後日談だが、このときZoomのマイク設定をオーディオミキサー(WIRELESS GO II)からV-8HDに切り替える必要があったのだ。冷静に振り返ると、なんで気が付かなかったのだろうかということも多い。

マイク案2:マイク用端末でZoomに入る

結果として採用されたのがこれ(開会3分前)。手持ちのiPhoneでログインし、マイク用端末として使い、V-8HDを映しているホスト端末にスポットライトを当てておけばスピーカービューでも問題なく配信される。この、マイク用端末でiPhoneを使うというアイディアはちょうど1年前の第17回アカデミーで実践済みだった。

まだビデオキャプチャーだけでやっていた時代。Epoc CAM使ってホルトホールのWi-Fiで使えなくて急遽テザリングで配信した回だ。

それに、先月とある私立大看護学科主催の市民公開講座のZoomセミナーの配信支援を遠く離れた大分からやった際も、マイク端末と映像端末を別にしたというオペレーションになっていた。

接続の際にホスト端末のオーディオ切断をし忘れていたためにハウリングを起こしてしまったが(『ちょっとハウリングします』としっかり予告してから起こすという(汗)一人オペレーションだとこうなる)、なんとか開会時間に間に合ってトラブルを乗り越えた。

SPLITを用いたプレゼンテーション技術

今回新しく、SPLIT技術を用いたプレゼンテーションを実践した。

実はこれをやりたいと思ったのは、前回のアカデミーだった。特別講演の先生の話がとても面白く、だけどリアル会場での面白さをパワポスライドが配信されているだけではオンラインでは伝わってないだろうなというもどかしさがあった。前回はATEM+ZoomISO(しかもマルチビューモニターなし)という突貫工事の超アドリブギリギリ配信をしていたので、とっさに演者カメラに切り替えたり会場を移したりと言ったことがやりたくてもできなかった。ATEMの限界である。

そもそも、リアル会場のプレゼンテーションとオンラインとの大きな違いは何だろうか。その一つは、リアル会場の参加者は講演中ずっとスクリーンを見ているわけではない。演者を見たり、周りを見渡したり、資料を見たり、スマホを見たり、(SNSしたり・・・)。。。一方、オンライン参加者は、配信されているパワポスライド以外に視線を移すすべがない。ときに演者のジェスチャーを映したり、盛り上がる会場を映したり。。。そこの、視点の切り替わりがオンラインセミナーの集中力の差の一つのポイントなのではなかろうか。

できるだけ臨場感をもたせようと、PinPという技術が使われることもあるが、スライドの右上に小さく小画面で演者を映したところで臨場感は伝わるだろうか。小さなPinPにどれほどの効果があるか、ずっと疑問だった。

その疑問に対する答えが、SPLIT画面だった。

演者カメラとスライドをSPLIT(画面分割)で表示させる。これは、16:9の画角で作成されたパワポだと難しく、4:3でスライドが作成されている必要がある。オンラインセミナーで配信される画面に合わせて、より画面を有効活用するために16:9のスライドが主流になりつつあるが、もしかしたらこんな感じで4:3に戻る日も来るかもしれない。

さて、では演者カメラの位置、カメラ配置、どういう画面分割にするかについて今回実践した例を示していきます。

SPLITの例1:演者がスライドを見ながら説明する場合

SPLIT画面では、演者の目線はスライドの方向を向くことが自然である。反対側を向くのは論外であり、正面目線よりもスライドの方を向いたほうがプレゼンしている感が出る。

ここで大事なのは、リアル会場で演者が向いた方向と不自然なく画面合成すること。会場レイアウトにもよるが、今回は演台はスクリーンに向かって左側に設置された。演者は、左の方を向いてスライドに目線を向けながらプレゼンをする。そのシーンでも画面構成がこちら。

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こんな感じで、カメラは演者の右手側から映しています。

SPLITの例2:演者が会場を見ながら話す場合

スライドの内容によっては、画面ではなく会場の方を向いて話す場合がある。その場合は、演者の目線が反対になる。

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ちょっといい例がなくて申し訳ないが、どうしても配信映像上でもスライドの方に視線を向かせたいので、左右の配置が逆になる。

使用カメラは演者の左手側から映している。

ワンオペレーションのコツ

正直コレ、左右がごっちゃになります。左を向いているカメラは右から撮って演者は左に配置される・・・右??左???しかも今回、自分が演者を兼ねることになった。ここで、久しぶりのフットスイッチの出番。

これで、2シーンまでなら足元で切り替えすることができる。V-8HDにはこれがもう1台接続できるので、最大4シーンのpreset memoryの画面切り替えをすることが可能。今回、このフットスイッチでの切替を想定して、シンプルに自分が左(スクリーン)を向くときは上記SPLIT1、右(会場)を向く場合は上記SPLIT2という風に割り振りした。う〜ん、シンプルイズベスト。我ながらよく思いついたものだ。

また、当然画面切り替えのレパートリーとしては足りないので、残りのシーンは配信席に後輩を座らせて『5番を押してください』などと指示をしていた。

なお、V-8HDの上位機種であるV-160HDではiPad端末をBluetoothでつないでオペレーションできるので、そんなこと頼まなくても大丈夫になる。早くこないかな〜〜(8月に予約していまだ届かない。マジで人気商品すぎ!!)。

SPLITで演者を映すことでのリアル会場でのデメリット

ちなみに、今回の配線図はこんな感じ。

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V-8HDを使って、音は結局iPhoneでやったのでこんな感じ。

演者カメラについて、これまではPinPでの合成だった。これは、V-8HDでは会場プロジェクター用と配信用と2種類画面構成を組めるので、配信用にはPinPをONにして、リアル会場のプロジェクターにはPinPをOFFにした映像を写していた。それはそうだ。リアル会場で演者を見たければ直接見ればいい。ところが、このSPLIT画面にするとそれぞれ別にすることができない。なので、会場プロジェクターにも演者カメラもONになったSPLIT画面は映し出される。これは、『リアル会場では直接演者を見ればいい』理屈からいくとデメリットだけど、V-8HDの仕様というか限界なので仕方ない。

V-160HDは、HDMI出力3+SDI出力3+USB-C出力1(UVC)がついている。この、SPLITを分けることができるのか(片方にSPLIT、もう片方にスライドだけ)どうかはリファレンスガイドを読んでもわからなかった。リアル会場に演者カメラは必要か問題は難しく、大きなホールとかだとどうせ演者の表情なんて遠くて見えないから映したほうがいいだろうし、ケースバイケースだろう。

スライド送りは黒曜石-フィンガープレゼンター

地味に初採用したガジェットがこれ

KOKUYOが作った黒いフィンガープレゼンターということで黒曜石(こくようせき)という名前らしい。実はこれは、アントレ開国道場でプレゼンしたときに使ったもの。

意外とクリック音をマイクが拾ってしまうのと、(当時は)遅延がひどくて実用に向かなかったこと、またバッテリーがボタン電池型でありしかもスイッチがわかりにくくてうっかりつけっぱなしにして電池切れになってからそのままになっていたものを掘り出した。

掘り出すきっかけは実に単純で、エンタミナの田口さんがこの商品を紹介していたからだ。

もちろん、動画にあるように今回から薬指につけてます(^o^)

オンラインプレゼンテーションには様々なコツがあるし手法はあるが、演者がそれにふさわしいプレゼン力を持っている必要がある。

先ほど紹介した『ハイブリッドセミナーの運営について』という内容の動画も、スライドをクロマキーを用いて全面に合成するという手法を使っているが、演者が指を使ってスライドを説明するといったジェスチャーを使えていないのでインパクト負けしている。技術を使うならそれ相応のプレゼン技術を身に着けなければならない。そんなの、やらないといつまでたっても身につかないので、ぎこちないながらも実践あるのみでやってみています。薬指に付けたことで非常に取り回しもしやすく、両手が自由になったのでプレゼンの幅が広がりました。

V-8HDの力を発揮し尽くした2021年最後のアカデミー

トラウマ配信となった前回と変わり、今回は思う存分、しかも前回やってみたかったのとが試したのでいい締めくくりの回となった。

それだけではない。コロナ禍での2回目の年末をまもなく迎える。この2年間、皆さんの周りはどう変わっただろうか。いや、変えることができただろうか。一見、日々公表される新規感染者数から『もしかして落ち着いたんじゃない?』『戻れる?』と思えてしまうかもしれないが、世論って怖いものできっとなかなかこの感染症とうまく付き合っていく社会になるのにはもう少し時間がかかりそう。そんな中、様々なことが制限される中で次の一手を見据えることができているだろうか?2年間で、自分自身をアップデートすることができただろうか。大分県麻酔科学アカデミーは、オンラインをやり始めて1年半、リアル解禁化しハイブリッドセミナーになってから1年2ヶ月が過ぎた。とはいえ、まだまだZoomの使い方に抵抗があったり、オンラインでの学び方に抵抗がある人も多い。情報発信者側も、一見『もうリアル解禁で戻りましょう』になるかと思ったらそうではなく、こういう配信サポート業の会社には配信サポートの依頼が絶えないらしい(なるほど、まともな会社が多くてよかった)。まだまだ、このオンラインセミナーの技術は社会に必要とされている技術になる。その先に待っているのは、リアル化したもののオンラインの良さを一度味わった人方のオンラインセミナーを要望する声というのはなくならないのではないかと思う。学会も、完全オンラインからリアルを一部解禁したハイブリッド運営の例がちらほら。さらに、学会認定講習会をオンライン分の単位認定をどうするかといった議論もされている。

まだまだこれからの技術だが、この2年でどの程度適応できているかの大きな差ができてしまっている。そんな中、講演1で扱った内容は、オンラインの場でのキャリアアップと自己研鑽、生き方・働き方改革といった内容だった。講演2では、情報発信者側の立場からオンラインでの情報発信、セミナー運営についてのノウハウを話した。この2演題を参加者限定公開とはいえYouTubeで世にリリースできたことはとても意味があるのではないかと思っている。好評に付き、会が終わってからの申込みも殺到しているので1週間だけエントリーを延長しております。12月10日までにこちらから申し込みしていただけるとアーカイブ版をご覧いただけます。

オンラインを苦手という人の中には、運営側がオペレーションに慣れない状態で開催されたオンラインセミナーに参加してしまって悪い印象を持ってしまっているのではないか。現に、まったく機材を必要としないのにスポットライトのオペレーションすらまともにこなせていなかったり、運営側がハウリングを起こしてしまったりするセミナーもいくつか見かける。ほんのちょっとだけ、視聴者目線になって配信に気を使うだけでも、オンラインセミナーの質は容易に向上する。それ以上のことをやろうとしたら、それなりに必要になるが、その先に待つ市場は住んでいる地域や国関係なく世界中に開かれた情報網。ますます、発信コンテンツを持っている団体や個人が強くなる時代が来て、うまくブランディングして価値をつけて世に出す必要がある。それは、誰にだってあるもの。就職活動やESで誰もが書く『自己アピール』。

2021年は、ワクチン接種や医療従事者のコロナ対応の慣れ(経験)から一部リアルを解禁したハイブリッドセミナーの黎明期となったのではなかろうか。2022年は、これらの技術がどう進化するか。もしくは広がるか。社会の動向を見守りつつ、次どういうチャレンジをしようか構想を練りながら2022年2月4日(金)の第25回大分県麻酔科学アカデミーのオペレーションを考えている。その時までにはV-160HDが届いていてほしいし、もしかしたら5Gのテザリング回線での配信にTryするかもしれない。乞うご期待です。

みなさん、2022年2月4日は開けておいてくださいね(次回は会の都合によりオンデマンド版をお送りできない可能性があります。それくらい著名な方をお呼びします)。


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