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「マグラムロード」についてサモンナイトシリーズファンが全力で評価・感想を語る(8割くらい愚痴)

ついにマグラムロードが発売されました。

「サモンナイト」シリーズ制作陣の集結を前面に押し出していた本作、発売前の評判・環境に関しては詳細に語ると長くなるので省略しますが(かつて長々と語った記事を書いたものの、ニコニコのブロマガサービス終了で消えた)、一言で言うなら「サモンナイトシリーズのファンであるほど期待より不安が大きくなる」状態でした。

そんな前置きはともかく、私は前回の記事の宣言通り本作を発売直後に購入し、とりあえず一周プレイを終えたのですが。

端的に、正直に感想を言うなら「クソゲーと言うほどではないが、少なくともお薦めはできない」程度です。クオリティとしてはサモンナイト5と同じ程度だと思って頂ければ間違いないです。

とりあえず、良くも悪くも言いたいことは山ほどあるので部分ごとに分けて語ってゆきます。なお、ストーリーの核心部分のネタバレは伏せておきますが、全体の大まかな流れや一部キャラクターの設定等には言及するので、その辺りはご了承下さい。

・世界観について

まず最初に気になったのは、主人公が元々いた世界がどんな場所なのか全然分からないこと。「神々や魔王が覇権を争って戦っている世界」とは言われているのですが、それ以上の言及が全然なくイラストやムービーによる紹介もありません。

なので、それが国家の小競り合い程度なのか惑星間戦争みたいなレベルなのかも分からないし、荒廃した世界でひたすら神々が戦い続けるだけの地獄のような戦場の世界なのか、普通に都市があって平和な営みをする人達が中心で一部の神々たちがどこかで戦っているだけの世界なのかも不明。

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ゲームのオープニングでは主人公が元の世界で封印されるシーンから始まるんですが、見ての通り背景が真っ暗ですからね。サモンナイトシリーズでも精神世界みたいな場面では真っ黒背景に台詞だけで進行する場面は結構ありましたが、流石にここは背景付けなきゃダメな場面でしょう。とにかく本作、低予算っぽいのは発売前から予想されていたことですが、演出面は20年も前のゲームの「サモンナイト」と大差ないか、下手すりゃ劣化してるくらいにスッカラカンで、演出が少なすぎるせいで何をやっているのか分からないシーンもちらほら。

特に本作、基本的に「主人公が武器に変身して戦う」設定のはずなんですが、変身時のカットインも無ければ変身中の立ち絵も無いので変身している感が全く無い、と言うか主人公が今武器になっている扱いなのか、普通に人間形態のままで居る扱いなのかもまるで分かりません。「サモンナイト3」で言うなら主人公の抜剣覚醒時のカットイン無し、覚醒立ち絵も無しみたいな状態ですよ。盛り上がらないとか以前に、状況の把握ができない。

さて、それで世界の説明不足に感しては作中で舞台となる新しい世界になってからも同じで、とにかく世界の規模や人口、文明レベル等がハッキリしません。サモンナイトだとフィールドマップから行き先を選択する方式だったので、フィールドマップを見れば街が大体どんな大きさで、どんな施設があるのか説明されずとも何となく把握できていたし、そもそも序盤に町の施設を一通り案内してもらえるイベントがあるのでしっかり町の全体像が把握できていたんですが、本作では街の全体像を把握できるイラスト等も全然提示されないし、案内イベントもありません。

文明レベルは新・旧世界どちらでもひたすらハッキリせず、例えば主人公がテレビ番組の内容に仕込みがあった事を知った際には「ヤラセだったのね?」と、「ヤラセ」という概念を普通に知っている発言をするのですが、一方で映画を見に行って「不倫」というワードが出た際には「不倫って何?」と言っていたりして、俗っぽい知識が有ったり無かったりしてはっきりしません。あと、デートイベントで温泉に行った際には「風呂上がりにはもちろんコーヒー牛乳!」みたいな台詞もあるんですが、これも謎です。神々が戦争してる世界で「世界の敵」として生きてきた主人公が、昔は銭湯で何度もコーヒー牛乳飲んでたのか?なわけねーだろ。

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とにかく新・旧のどちらの世界も不明瞭な点が多くて、ゲーム中での説明が不足しているのはもちろん、根本的に設定の練り込みが足りないように感じさせられる場面が結構あります。


・ストーリー関連

まず、序盤~中盤のストーリーはとにかく退屈です。淡々と依頼をこなすだけ。本作の主人公の目的は大雑把に言えば「失った力を取り戻すこと」なんですが、これも世界観同様説明不足で、元々主人公がどの程度強かったのか、弱体化した結果どの程度の強さになったのか、そしてストーリーを通じてどの程度力を取り戻したのかが全然ハッキリしません。

ただ、一般市民では歯が立たない「魔獣」と呼ばれる敵を最初から普通に倒せているので少なくとも一般人よりは遥かに高い戦闘力を持っているのは確かだし、そもそも神々と戦う必要もなくなった新世界において急いで力を取り戻さなきゃいけない理由も特に見当たりません。

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これが、主人公が根っからの戦闘狂で「戦えなきゃ意味がない!とにかく力を取り戻す!!」ってひたすら言ってるような奴ならそれでも納得できるんですが別にそういうわけでもなくて、主人公は弱体化についてそんなに目立って嘆かないし、戦いをひたすらに求めてるような雰囲気でもない。そして「コンカツ」を勧められてからは普通にそれを満喫しているような調子なので、「力を取り戻さなきゃ!」という危機感を持った感情移入が全然できません。

もう一つの問題が、題材である魔剣鍛造です。

本作、前評判通り「サモンナイト クラフトソード物語」と似た部分が多いのですが、主人公が鍛冶師だったそちらと違い、本作だと別に主人公が武器を作ることを生業にしているわけでもなく、全然ストーリー上でそこが話題にならないんですよ。もちろん「鍛冶師としての苦悩・葛藤・成長」みたいな要素も一切無し。そもそも武器は鍛冶で作っているんじゃなく魔法みたいな力で創造してるような描写だもん。

これで「魔剣鍛造RPG」を名乗るのは広告に偽りがあるだろ……と、書こうとした途中で改めて確認して気付いたんですが、作中だと「魔剣鍛造」と言われているものの公式サイトのジャンル記載は「魔剣創造アクションRPG」なので、最初から鍛造とは記載していませんでしたよかったね!ジャンル詐欺じゃなかったよ!

しかしまあ、ストーリーに関しては中盤(全9章のうち5章くらい)から徐々に風向きが変わってきて、終盤にはサモンナイトシリーズで見たようなどんでん返しが待っているので、ひたすら退屈なままではありません。中盤から終盤にかけてのストーリーはそこそこ楽しめました。

ただ問題はエンディングで、ラスボスが小物なのはこの際良いとしても、一般民衆が立場をコロコロ変えてばかりなのは正直スッキリしませんでした。今まで政府の管理下で幸せに暮らしていたかと思えば、ストーリー中盤でアクラオに焚き付けられれば「実は政府にずっと不満があった」と暴れ出していたくせに、エンディングではまた政府に「今までの幸せな生活を返せ!」と何の不満も無い生活を送ってきたかのようなことを言って騒ぎ、かと思えば主人公がちょっとした芝居を打っただけでアッサリと「政府最高!頑張れ!!」みたいなことを言い出しますからね。民衆と政府が仲直りできてよかったと思うより、民衆の愚民っぷりにドン引きです。

そして最大の問題がエンディング後の個別エピローグ。サモンナイト3とかでは甘々な恋愛イベントのあったアレですが、本作はビックリするほど短いと言うか、ほとんど「無い」レベルです。過去作の夜会話1回分より短い。そしてエンディングのキャラ個別1枚絵も無いし、なんならエンディングの歌もありません。仮にも「コンカツ」を前面にアピールしておいて、このエンディング内容の薄さは本気で酷いと思う。

そもそもこのゲームの物語、エンディングを迎えたところで結局のところ主人公たちの身の回りの事件が一旦の解決を迎えただけで、根本の原因になってる神々と魔王の戦争に関しては結局何の解決もしませんからね。続編作りたくてわざと解決させなかったのか?それとも予算の都合で単に続きが作れなくて、壮大に広げた世界観を扱いきれないから小さくまとめるしかなかったのか?どちらにしても凄まじい不完全燃焼です。

なので、中盤~終盤ごろでそこそこ持ち直したストーリー評価はエンディングでまたガクッと落とされた感じでした。いや、マジでこのエンディングのスカスカっぷりはねえよ。


・キャラクター関連(主人公)

とにかく主人公が本作最大の問題人物。何がダメかって、とにかく全然喋らねーんだもん。

本作の主人公は本編中でもフルボイス、名前もキルリザーク固定で変更不可、性格についても「自由奔放な暴れん坊」と明確にキャラクター付けされており、一応は「主人公=プレイヤーの分身」という扱いもされていたサモンナイトシリーズの主人公と比較しても、「キルリザークはキルリザークという一人のキャラクター」という扱いをされているはず……なのですが。

とにかく喋らない。元々無口なキャラクター付けとは全く違う、むしろガンガン出しゃばってきそうな性格設定のはずなのに、全然会話に参加しないどころか、画面に映ったと思っても吹き出しアイコンや音符のエフェクト等で感情表現をするだけで台詞無し、のパターンが非常に多い。そしていざ台詞があったと思っても異常に短い。他のキャラがみんな二行、三行くらいの長い台詞を喋ってる場面でも、主人公だけはほぼ確実に一行しか喋りません。

あと、これは比較的些細なことですが、本作の主人公は男だと「ほう、〇〇か」「○○…だと?」みたいな口調、女では「○○しちゃうよ!」「○○だよね?」みたいな口調なんですが、選択肢の台詞では時々女主人公なのに男主人公みたいな口調の台詞が混ざっていたり、その逆もあります。これもきっちりボイス付きで喋るんですが、設定ミスじゃないのか?

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通常の台詞が少ない代わりにサモンナイトと比べてちょっとした会話中での選択肢が多く、選んだ台詞を喋るのですが、これがまた問題で3つの選択肢が全部同じ内容のパターンが多いんですよ。例えば上の画像だと「からっぽな自分を満たしたかったのか…」という台詞に対する反応なのですが、見ての通り全部同じような肯定であり、差が感じられません。そのくせ好感度が上がるキャラは見ての通り全部違います(右下にアイコンの出てるキャラの好感度が上がる)。何が違うんだよ

「同じような選択肢ばかり」というのは本当に気になる点で、例えばストーリー中で仲間が隠し事をしているのが判明した場面でも、出てくる選択肢は「隠し事は許さん」「できれば聞かせてほしい」「無理に言わなくていい」とかではなく、「言わなくていい」「興味ない」「勝手にしろ」みたいな感じです。じゃあ選択肢出すなよ

こんな調子で、主人公は「プレイヤーの分身」としては全然機能していないのですが、じゃあ主人公の一人のキャラクターとしての言動が一貫しているのかと思えば全然そんなことはなくて、「ムカつく!ぶっとばす!」と短絡的に暴れる時もあれば、「勝手にしろ、どうでもいい」みたいな冷めた対応をする時もあって、その線引きが非常に不明瞭です。そのくせ仲間からは「あの方は本当にブレないお方じゃ」みたいに言われたり、ただ成り行きで一緒に過ごしただけの相手から「貴方から色々学ばせてもらった」「貴方がいたから今の自分がある」みたいにやたらと持ち上げられる場面が目立ちます。この光景サモンナイト5で見たことある。

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そんなわけで主人公が全然喋ってくれないので、チームを取り仕切り、事情を聞き、行動の方針を決める役割は大体仲間のシャルムが担当します。こっちが本当の主人公では?

デートイベントでは流石に喋るだろ……と思えばむしろ悪化していて、デートの相手がわざわざ「え、○○だって?」と主人公の代わりに台詞を読み上げる場面が多々あります。ドラクエの主人公かな?

とにかく、この主人公の無口化は本当に意味が分かりません。プレイヤーの感情移入を妨げないように無色透明な主人公にしたいなら最初からそういうキャラにしておけばいいわけで、「設定上は活発そうなのに全然喋らない」なんて扱いにする必要性が全く感じられない。主人公が何を考えているか分からないから感情移入のしようがなくてストーリーに入り込めないし、実際仲間の取りまとめ役も全然やってないのになぜか主人公がチームの中心みたいな扱いを受けている不自然さも際立つ。せっかくデザインやキャラクター付自体は良いものになっているはずなのに、本当に何故こんな扱いになったのか意味不明で仕方ないです。

・キャラクター関連(その他)

・ジュレットは「失職したから」という理由で主人公の下僕になるものの、その直後に彼女自身も絶滅危惧種であることが語られる。じゃあ政府に保護されてるんだから失職したところで生活の心配はないはずだし、主人公の仲間になる理由として成立していない。普通に「助けられた恩義で協力する」とかでよかったじゃん。

・アクラオは色々と騒ぎを起こしておきながら明確に改心したわけでもなく、彼がどんな価値観を持ち、どんな意図を持って行動しているのかもハッキリしないまま仲間になる。どう見ても危険極まりないのに、彼の加入について不満を唱えるのはシャルムのみ。結局シャルムがアクラオと決闘することで彼の真意や考え方が語られるのですが、そういう役割こそ主人公が持つべきでは?やっぱりシャルムが主人公だろ。

・シャルムのメシマズネタは絶対いらねえ。料理下手なのは可愛い要素かもしれないけど、「食えないものを作って人に無理やり食わせようとする」は普通にただの不愉快なキチガイだろ。昔から何故これが定番のギャグみたいに扱われているのか本気で分からない。あとMOCO'Sキッチンのパロディって既にネタが古くて素で伝わらない人もいそう。

・戦闘システム

まず、アクション部分に関しては悪い意味で見たまんまです。基本的にひたすら斬るだけ。GBA作品のクラフトソード物語と同等か、むしろ劣化しています。あと3Dグラフィックに関しては発売前から散々言われていますが、普通にPS2、あるいは現代のスマホゲーレベルです。デフォルメキャラなりに表情豊かに動いてくれる…みたいなこともなく、ただの指人形です。

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まずバトルを初めて真っ先に気になるのはヒットストップの異常な強さ。複数の敵とか、大型のボスに攻撃を当てると「手応えを感じる」を通り越して「処理落ちしてんのか!?」と思うくらい画面が止まります。まあ慣れればそこまで気にならないので慣れましょう。

次なる問題がカメラワークで、本作はやたらとすぐにカメラがズームします。例えば

[敵A 自分  敵B 敵C]

こんな感じの配置で戦闘が始まった時、自分が敵Aに攻撃を仕掛けに行くと敵Aと自分がギリギリ入るくらいまでカメラがズームします。その結果、画面外に消えた敵B・敵Cから遠距離攻撃を喰らう事態が頻繁に起きます。これはマジで不便なんですが、スタッフは気にならなかったのか?

ついでにこれはもう少し小さな問題ですが、HPゲージが左下に小さく出てるだけのくせにHPが減ってもゲージの色が変わったり点滅したりしないし、ピンチ時のボイスとかもないので「気付いたら瀕死だった」が結構頻繁に起こります。まあこれも慣れるしかありません。

まあUI関連の愚痴はこの辺にして実際のゲーム部分に触れましょう。本作ではタメ攻撃がタメ時間が短め・威力が高め・魔王の活動ゲージ増加・動作中無敵と非常に強力で、基本的にこれの連発で片が付きます。と言うかボス級の敵はガードしてからもマトモに攻撃を差し込む隙がない相手が結構いるので、必然的にこちらの取れる戦術は無敵の付いているタメ技か、あるいは空中攻撃でのヒット&アウェイが基本です。

致命的な問題は2つで、まず攻撃魔法と状態異常耐性がほとんど意味を成していないこと。クラフトソード物語では、武器耐久値の節約やガードが硬い相手への攻撃手段として攻撃魔法が意味を持っていましたが、本作では敵がガードを一切しないし、武器耐久値も存在しないので、攻撃魔法を使う理由が何一つありません。状態異常耐性に関しては非常にシンプルで、状態異常が脅威になる場面が全然無いためです。

それで、もう一つの問題は仲間の増加にゲーム的な利点が一切無いこと

このゲームは一度に1人の仲間しか出撃できず、出撃させた仲間が倒れたらゲームオーバーです。「ダリスが倒れたからシャルムを出す」みたいなことはできません。なので仲間を満遍なく育てる利点は全然ないのですが、ミッションによってはメンバーが固定されているので育てないわけにもいかず。つまるところ、仲間が増える=何も有利にならないのに育てなきゃいけない人数だけ増える なので、マジで仲間の加入が嬉しくないです。

いやいやそれでも色んなキャラ動かせる方が楽しいでしょ?と思うかもしれませんが、このゲームにキャラクターの性能差はほぼ存在しません。一応パラメーターに多少の差があったり、得意な武器・習得魔法・抵抗のある属性等で差は付けられているんですが、アクションは全て同一です。そして先述の通り、このゲームは基本的にタメ攻撃を連発するだけのバトルなので……うん……

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あと武器に関してですが、本作の敵には弱点武器と耐性武器があり、耐性武器だとほとんどダメージが通りません。なので1種の武器だけに絞って戦っていくのは不可能に近く、基本的に必ず剣・斧・槍の3種の使い分けが必要になります。まあ持ち替え自体はゲームの戦術性としてアリだとは思うんですが、お気に入りの武器一種だけで戦い抜くのが仕様上不可能に近いのは残念なところ。ついでに言うなら

・武器種が先述の剣・斧・槍の3種だけで、クラフトソード物語(先述の3種+ナックル・ドリル)より武器の種類が減っている。特に本作では機械キャラのモーヴがいるのにドリルが無い。

・クラフトソード物語では「槍はリーチが長いが懐に入られると弱い、斧は隙が大きいが相手を弾き飛ばす戦いが得意」みたいな個性があったのに対して、本作だとモーションに差はあれど剣・斧・槍に目立った性能差が無い

などの点もクラフトソード物語より劣化しているポイント。2021年の据置機のゲームが2003年の携帯機ゲーにシステムですら負けてるのは流石に看過できない。総じて、遊べなくはないけど面白くはないです。

・戦闘以外のシステム

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まず、ダンジョンが少ないです。たぶんラスダン含めて8種で、ラスダンがやたらとだだっ広い以外は基本的にこぢんまりしたダンジョンばかり。それをストーリー進行に必須のミッションでも各3回4回と周回させてくるので、まあすぐに飽きます。

任意参加のサブクエスト的なミッションに関しては会話イベントがほとんど無いものも多く、ひたすら同じダンジョンに潜って同じ道を歩いて敵を倒す作業です。なので正直サブクエストは無視したいのですが、本作は「サブクエストを全部やってようやくストーリーの推奨レベルになる」くらいの調整なので、ガン無視していると大体レベルが足りなくなります。

まあレベルが足りなくても大抵の戦闘はタメ攻撃連発でどうにかなるのですが、時々敵が4人くらいで袋叩きにしてくるボス戦が存在し、そうしたバトルだと流石に敵の攻撃を全部避け続けるのは不可能に近いので、どこかで稼ぎは必要になります。私はバルガチャレンジ(ボスキャラ1体倒すだけですぐ終わるミッション)を周回してました。

その他、ザコ敵が10パターンくらいしかいなかったり、収集要素としてアピールされていた「絶滅危惧種発見」も全21種のうち8枠を主人公たちが埋めているので実質13種しかなかったり、探索にせよ収集にせよボリュームが薄いです。

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そして、その薄さが最も問題になっているのが重要要素の「コンカツ」、そしてデートイベントです。何が薄いかって、ちゃんと会話してくれるデートイベントは各キャラ2回くらいしかないんだよ。

じゃあ残りは何かと言うと、デートの行き先を選ぶ→背景が変わってキャラクターが一言感想を言う→帰る これだけです。一応、キャラごとに好きな場所・嫌いな場所があるのですが、同じ行き先を何度も選ぶことはできず、どうせ全部行くことになるので当たり外れの意味がありません。まあ、そもそも好感度なんてすぐ上がるので当たり外れがあったところでどうでもいいんですが。あくまで「このキャラはこういうのが好きで、こういうのが苦手なんだな」と知るための当たり外れと割り切るしかないです。どっちみち一言しかコメントしないので好き嫌いを知れると言ってもそれほどの掘り下げにはなっていないんですが

そして先述の通り、ちゃんと会話してくれるイベントですら主人公の台詞が異常に少ないので会話が非常に不自然です。モーヴにコーヒーを淹れてもらうイベントは比較的不自然さが少ないし、イベントCGもカッコいいのでそこそこお気に入りなんですけどね。

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そもそものところ、サモンナイトシリーズの「夜会話」の良さと言えば、その章で起こった出来事について各キャラクターの意見が聞ける、そのキャラクターの視点・注目するポイントが垣間見える点だったと思います。

例えばサモンナイト2でアグラバインがアメルの実の祖父ではないことを明かした14話では、二人が真実を知っても関係を壊さずにいられたことを喜ぶ者・家族の在り方について考える者・アグラバインの過去の任務について考える者・アグラバインの正体について考える者などがそれぞれ居て各キャラクターの重要視するものが見えるし、フォルテとシャムロックが「怒りに任せただけの素人じゃルヴァイドを抑えられるはずがない」と全く同じ事を言っていて二人の過去の繋がりを感じられる点なども面白かったんです。

それで、その結果としてキャラクターと親密になる、恋愛関係などに至るのも確かに魅力ではあったんですが、決して夜会話の魅力は「ただキャラクターと仲良くなるだけ」じゃなかったわけですよ。

なのですが、本作のデートイベントはつまるところストーリーの本筋と離れたところで遊ぶだけなので、サモンナイトの夜会話と比較するとキャラクターの掘り下げとしては正直言って弱いんです。デートイベント自体が悪いわけではないんですが、少なくとも「夜会話に相当するもの」「夜会話に代わるシステム」としては全く確立できていない。

唯一、ラスボス戦前の「メモリアルデートイベント」だけはちゃんと今までの振り返りと最終決戦への決意を話してくれる、いわゆるサモンナイトでの「最後の夜会話」と同じ事をやってくれているので、この点は素直に良かったと言いたいんですが…やっぱり主人公が喋らねえんだよ。そして本編中で主人公が空気だから「あなたのおかげで変われた」みたいに言われても「そうか?」って思わされるし……いや、本当に惜しい。

(3/23 追記)あと本作、発売前から「同性でも異性でも、友情ルートか恋愛ルートかを選べる」と明かされたことで少し話題になっていましたが、恋愛ルートを選んでも普通の日常会話みたいなノリの中で「どこまでも付いていきます、だってあなたが大好きだから」みたいなことを言って終わるくらいで全然恋愛っぽい雰囲気にはなりませんでした。

恋愛要素が好評だったサモンナイト3の場合だと、終盤の夜会話でハッキリと「あなたのことが(異性として)好きです」と告げた上で、甘い雰囲気の中で辿々しく愛の言葉を交わしたりしていたんですが、本作だと全然そんなことがないので(何度も書いてますが、魔王が全然喋らないし)友情ルートと恋愛ルートを分けた意味があったのか甚だ疑問です。

「同性でも友情か恋愛か選べる」というシステムに関しては、まあ同性愛者への配慮とかもあるんでしょうが、それを抜きにしても価値のあるシステムだと思っていました。サモンナイトシリーズだと、「性能的に女主人公を使いたいけど、女性キャラの恋愛ルートを回収したいので仕方なく男主人公を使うしかない」みたいな経験が頻繁にありましたし、ぶっちゃけ会話が破綻してもいいから同じ主人公で異性側のエンディングを回収したいと思うことは多々ありましたからね。

けど本作だと男女の主人公での性能差もないし(多分)、わざわざルート分けてあるなら恋愛ルートは過剰なくらいにイチャラブしてくれてもいいのに全然そんなこともないので、本当にこのシステムも無価値に近いです。そもそも登場人物が少ない時点で恋愛ゲーとしては弱点なのに、その少数のキャラの恋愛イベントすら作り込んでないので本当に長所が全然無いんですよ。なんか書いてて泣きたくなってきた。

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(3/23 追記)元々、感想記事は2周目のプレイが終わってから書く予定だったのですが、結局2周目の途中で諦めてこの記事を書きました。で、その理由を書き忘れてたんですが本作、周回プレイ時の引き継ぎ要素がほぼ「無」なんですよ。

見ての通りクリアデータによる特典はあるんですが、レベルや武器、習得スキル等は一切引き継ぎません。好感度は特典なんか無くても操作キャラに選んでればすぐ上がるので正直どうでもいいし、獲得経験値増加は予約特典・早期購入特典の方が強力。資金は無いよりマシですが、このゲームは終盤になると100万単位で金を使うので10万あっても本当に序盤しか恩恵がないし、序盤の金が増えても回復アイテムくらいしか買う物がないのでほとんど意味がないです。

そしてあろうことか本作、図鑑やギャラリーが共通データではなく各セーブデータごとで独立しているのにそれの引き継ぎも無し。同じく周回特典が皆無だったグランテーゼですら図鑑は引き継いでたのに。プログラマーが異常にやる気がなかったのか、わざと不便にすることでプレイ時間の水増しを図ったのか定かではありませんが、とにかくこの周回特典のスカスカっぷりのせいで2周目のプレイ途中で面倒になって力尽きました。ボリューム不足なりに丁寧に作ってあるならもうちょっと好印象だったんですが、この辺りの仕様の杜撰さもイマイチ印象を悪くしている原因です。

・さようならサモンナイト

正直なところ、私は本作に結構な期待をしていました。

と言うのも、「サモンナイト5」「サモンナイト6」が面白くなかったのは過去作のライターがメインで書かなくなったから「サモンナイトシリーズの作風」を掴めておらず、雰囲気が変わってしまったのだと考えていました。

まあ過去作のライターがものすごく優れていたとは思っていないんですが、少なくとも「サモンナイトシリーズの作風」を作っていたのはライターの趣味とか作風とかの結集体であって……つまり、本作で旧サモンナイトのライターがシナリオを執筆するならば、少なくともシナリオ部分に関しては「昔のサモンナイトみたいな雰囲気」を期待しても良いと思っていたのです。

そして確かに、「サモンナイトらしい要素」はありました。平穏な日常の裏側に隠された真実とか、過ちの清算とか、絶対悪とは言えない敵とか、胡散臭い知り合いが実は神みたいな存在だったとか、優しいけど怒ると怖いお姉ちゃんキャラが絶対出てくるとか。

しかし同時に、「サモンナイト5」で感じていた不自然な主人公持ち上げ・プレイヤーが当然感じるであろう疑問や不満に一切言及しないキャラクターたちなどの要素が本作でも見られたことで、あれは新しいライターがダメなんじゃなかったと叩きつけられたのは悪い意味で衝撃的でした。いやまあ…元のライターもクソ親父みたいなアレな人物を完全無欠のヒーローみたいに描いてたからな…今になって思えばそういうことだったんだな……ああ。

メインキャラクターもダンジョンも収集要素も数が少なすぎるし、アクションも単調でキャラの性能に個性もない。シナリオは不完全燃焼で、デートイベントはスカスカ。正直言って褒められるのは「イラストは綺麗で2D画面の雰囲気は良い」くらいしかありません。全く遊べないほど酷いわけではないですが、あえてこれを遊ぶ理由は何もありません。これが2000円くらいのインディーゲーだったら「まあまあ面白いよ」くらいは言えたかもしれませんが、ダウンロード版で6400円するゲームですからね。ダメだこりゃ。

もし本作が面白かったら「サモンナイトの転生体」として全力で応援する気だったんですが、俺にはもう無理だ。サモンナイトのブランドは地に落ちて、何度も死体蹴りされて、それでも希望を持とうとして。

流石にもう理解しました。未練がましく死んだ子供の歳を数えるような真似はやめます。

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