尿路結石で救急搬送された

死を覚悟した

つい先日の6月24日に29歳となった私ですが、今まで正社員として働いたことが一度もありません。当然ながら健康診断なんてものを受けたこともなく、漫然と「ある日突然ヤバい病気で倒れたりするんじゃないか」なんて不安を抱えつつも、守るべき家族も居ない一人暮らしの身でわざわざ金と時間を使って検査に行く気もならず、そのまま過ごしていました。

そして7月5日、タイトル通り尿路結石で救急搬送されました。何か特別なことが言えるわけでもないのですが、自分にとっては壮絶な体験だったので注意喚起みたいなものも兼ねて体験を綴ろうと思います。

なお、これを書いている7月7日現在、症状は落ち着いていますが結石の排出は確認しておらず、ここから再び戦いが始まる可能性もあります。なので、もしかすると今後また書くことが増えるかもしれないのですが、ひとまず搬送時の記憶が新しいうちに記事にしておきます。


おぼろげな予兆

先述の通り救急搬送されたのは7月5日なのですが、後から思い返すとその四日前、7月1日の午前2時ごろの時点で症状が出始めていました。

その時は「ちょっと痛いな」くらいの腹痛で、よくある「トイレに行けば治る腹痛」と同じくらいか、もっと軽い程度です。便意は無かったし、腹痛を感じたときには就寝の直前だったので、「なんか痛えな」と思いつつも特に気にせずに眠りました。

翌日には腹痛は消えていたのですが、その日の夕方ごろから入れ替わるように発生したのが強烈な残尿感。とにかく限界まで尿を出しても全くスッキリしない。まだ出そうだと思うものの全く出ない。だから仕方なくトイレを出るものの、1分後には「やっぱりまた出るんじゃないか」と思ってトイレに駆け込み、やっぱり何も出なくてトイレから出る。そんな事を繰り返す。「尿意がひどくて作業ができない」という経験を人生で初めて味わいました。

半日ほど経つと残尿感が「なんとか耐えられる」程度に落ち着いてきたのでそれほど重くは考えず、「腹を冷やしたせいで下半身が不調なのかも」「梅雨入りして気圧が下がったから不調なのかも」「低気圧対策に飲んだ五苓散の副作用かも」などと自分の中でいくつか仮説を立てつつ、とりあえず様子見のつもりで過ごすこと約二日。7月4日になりました。

結局、残尿感は収まりかけたかと思えば悪化してを繰り返し、流石に無対策ではマズいと思った私は「たぶん膀胱炎だろう」と考え、近所の薬局で膀胱炎の薬を購入しました。それから一日ほど様子を見て……特に改善の兆しは無いままでした。(ちなみに過去に膀胱炎にかかった経験はないので、このときの判断は症状から考えた当てずっぽうです)


そして嵐は突然に

7月5日。大体12時ごろに起床し、特に食欲はなかったものの(これはいつも通り)何か食事を摂ろうと考え、先日買った西友のチーズピザとレッドブルを胃に流し込みました。

私が強烈な腹痛に襲われたのは、その直後のことでした。タイミングがタイミングだったので、「起きがけの胃に刺激の強いものを入れたのが良くなかったか」などと考えながらトイレに向かったものの、特に何も出ない。しばらく待てば落ち着くかと思ったものの、10分ほど耐えても特に何も変わらない。むしろ痛みは増すばかり。

流石に不安を感じて内科の病院を検索したものの(今の住所になってから内科に行ったことは一度もなかった)、近くの病院は13時に午前の診療を終えて休憩に入る場所ばかり。その時の時刻は12時40分くらいで、非常に悪いタイミングでした。救急車を呼ぶことも少しは考えたのですが、この時点ではまだ「胃炎か何かじゃないのか?」とも思っていて、流石にそんなもので救急車を呼んだら恥かくし後で文句言われそうだな、と思って却下。

あれこれ考えたものの、初めての病院に行くことの億劫さもあって結局私は「最寄りの薬局で痛み止めを買おう」と判断。この時点で自転車に乗るのも辛いレベルの痛みだったため、移動時間が伸びるのも覚悟で1キロちょっと先の薬局へ徒歩での行軍を開始。ついでに「歩いているうちに痛みが落ち着けばそれで良し」くらいの気持ちもありました。

そして歩く、歩く。健康なときの半分くらいの歩幅で、できるだけゆっくりと、振動や衝撃を抑えるために優しく地面に足を付く。よちよちと歩いて歩いて、薬局までの道のりの6割ほどを歩きました。痛みは更に増す一方で、この辺りで私は「これって盲腸炎か何かなのでは?」と疑い始めます。

いよいよもって痛み止めを飲んだ程度で抑えられるものではないと判断した私は薬局に行くことを中断。再び検索した結果14時まで診察している病院が現在地から再び1キロちょっと先(自宅から約2km)にあることを確認した私はそちらへと目的地を変更し、よちよち、よちよち。


本当の地獄の始まり

そして病院に到着。入口に貼られた「当院は予約制です」の文字に絶望しかけるも、正直そんなもんに構っていられる状況ではなかったので受付で話をした結果、流石に病院側も只事ではないと判断してくれたのか診察を受けられることに。なお、無理に歩いたせいか痛みはこの時がピークで、もう本当に一歩動くのすら辛い状態でした。と言うか後になって思えば、尿路結石の痛みを抱えたまま30分以上も歩いて病院までやって来た方が異常だったんだと思います。

そうして診察が始まったわけですが、感染症予防の都合もあって「明らかに体調が悪い人は院内での診察ができない」と言われたので病院入口のソファに横たわり、ちょっと待たされては病状を伝える。また待たされては病状を伝えることの繰り返し。口を開くのも辛い痛みの中、「きっとお医者様が助けてくれる…」「俺は死にそうなんだぞ!一秒でも早く何とかしろよ!!」みたいな感情が交互にやってくる。とにかく一瞬でも早く救われたい思いの中、地獄のような待ち時間。

全く動かないでいると僅かながら痛みが落ち着くのですが、ずっと同じ姿勢でいるのも辛いので時々寝返りを打つ。せめて寝返りと同時に少しでも楽な姿勢を探そうとするものの、その作業も嫌になるほど痛い。自分の隣を誰かが歩き、床が僅かに揺れる程度の刺激すらも耐え難い。けど足音は医者のものかもしれないので希望でもある。ただの患者が自分の隣をドスドスと歩いていった時は殺意すら抱きました。身勝手を承知で怒鳴りつけたいとさえ思うものの、そんな気力も無し。とにかく救いを求めて耐える。痛みと同時に、忘れていた尿意にも襲われる。全方面から隙なく不快が押し寄せてくる。何もできない、したくない。でも今の痛みから開放されるためには診察に最大限の協力をするしかない。

もう本当に寝返りを打つことすら嫌だったものの、「検尿をした方がいい」と言われてトイレへ。案の定ほとんど尿は出ない。戻ってソファに倒れ込む。死にそうだ。死ぬかもしれん。死んだら楽になる。もう頭の中に「生」「死」の二文字くらいしか浮かばない。いっそプツンと意識が途切れてくれれば楽だと思うのに、それも叶わない。まだ苦痛が足りないのか?と理不尽への怒りを噛み締めていたら、ようやく医者から「たぶん尿路結石」と口にされました。

まだ確証はないものの、状況の検討が付いたことへの僅かな希望と、「じゃあさっさと何とかしてくれよ」という思い。しかし、私が行った病院の設備では手が打てないようで、他の病院に行こうにも私はもう一歩も動けない。ということで、救急車のお出ましです。

希望が見えると同時に「まだ待たされる」と言う死刑宣告のような状況に私は「せめて痛み止めだけでも」と改めて医者に伝えたのですが、「まだ原因がハッキリしていない以上、安易に痛み止めは出せない」との返答でした。地獄の終わりはまだまだ先です。


絶望の先へと

救急車到着までの時間は10分くらいだったでしょうか。遅いと言うほどではないものの、ものすごく早くもなく。普段なら10分や20分なんてスマホでも見てれば一瞬みたいなものですが、もう私は1秒すら耐え難い痛みに、この時点で1時間ほども耐え続けていたのだから10分でも地獄です。

それでも、絶望の先にだって道は続いています。聞こえてくる救急車のサイレンの音。この音が嬉しかったのは人生で初めてです。救急隊員が入ってきて、カートに載せられて病院の外へ、そして救急車へ。搬送されながら、さっき病院で聞かれたのと同じような病状の質問を再びされる。「そんなもん事前に医者から聞いとけよ」と思いつつも、そんな説明を聞くよりも迅速に出動したことを優先したんだろうと自分に言い聞かせながら質問に答える。名前や生年月日、職業も答える。「今そんなもん答えてる余裕ないから後にしてくれ」と言いたくなるもののそれで会話が増えると余計に困るので素直に答える。そしてただ到着を待って、待って、待って。ようやく大きな病院へ到着しました。

病院に到着してから程なくして、こみ上げてくるもの。これは何だ?感動か?違う、吐き気だ。さすがに医者や看護師もプロだ。俺の様子を察知して「吐きそう?」と吐くための器を差し出してくれる。吐いた。

ちなみに私はほとんど嘔吐の経験がなくて、たぶん最後に吐いたのは20年近く前です。その時も全然吐いた経験がなかったので、母に「吐きそう?」と聞かれても"吐きそうな感覚"が分からなくて、「違う」と答えているうちに盛大にゲロをぶちまけたのを覚えています。この20年前の経験が活きた。俺は自分が吐きそうなことを察知できたのだ。やったよ20年前の俺。

まあ、そんな話はともかく、吐いたら僅かながら気分が楽になりました。と言っても猛毒を塗られた高圧電流の流れるノコギリで体を引き裂かれていたのが、ただの猛毒ノコギリに変わった程度の違いですが。

そして再びの診察。同じようなことを3回も説明させられる煩わしさを感じながらも大人しく答える。そして血液検査をして、痛み止めの点滴。まだ「原因がハッキリしてない」はずなんですが、結局痛み止め打っていいのかよ。まあ私が抵抗する理由は何もないので「ようやく!」と点滴を受け容れました。なお、針を刺す際に「チクっとしますよ~」と"いつもの挨拶"をされたのですが、今回は針を刺す程度の痛みなんて本当にどうでも良かったです。既に腹に針が千本入ってるような痛みが走ってるんだもん。腕に一本増えたって本当にハナクソみたいなもんです。

さて、それから程なくして、痛みはかなりマシになりました。ようやく「酷い普通の腹痛」くらいのレベルです。待つ時間にスマホを眺める程度の余裕もギリギリ生まれてきたし、立って歩くくらいはできる。歩けるだけで感動です。

ようやく本格的な検査のために動けるようになった、ということで本当にようやく、精密な検査が開始。レントゲンとCT検査を行い、そして再び待ち時間。痛みがマシになっていたこともあって、もう苦痛や恐怖よりも希望が大きい。そして待って待って……ついに告げられた痛みの原因は――やっぱり尿路結石とのことでした。(記事的にはバレバレだ)

さて、尿路結石と言うと薬で溶かすとか超音波で砕くとかの対処を聞いたことがありますが、私の場合は「痛み止めだけ出して自然排出待ち」との結論でした。と言うのも、薬による対処は現在では「ほとんど効果なし」と否定されており、超音波については大きめの結石への対処として行うのですが、今回の私の場合は小さめの結石なので積極的に超音波での対処を行う必要はないとのことです。(余談だが、結石が大きいほど痛みが強いわけではないらしい)

結局散々地獄を見たのに結論が「痛み止めを出す」だけなのは何だかスッキリしないと言うか、「まだ解決は先延ばしかよ」と思いはしましたが、それでも原因がハッキリしたこと、その場しのぎとは言え痛み止めで症状が抑えられたことで状況は相当マシになりました。

入院して手術みたいな面倒事にはならなかったし、「尿路結石以外に大きな問題は無かった」と言われたこともポジティブになれた理由です。先述の通り健康診断には全く行っていなかったし、本当に死ぬんじゃないかと思う痛みだったので「もう手遅れです」みたいに言われる可能性も考慮してました。マジで。

しかし、再び起き上がって歩き、会計を済ませる頃には再び痛みが復活してきて、結局自力で帰れそうもないのでタクシーで帰宅。一人でタクシーに乗ったのも何気に人生初でした。最寄り駅から徒歩で10分以上かかる環境なので、多少値が張るとは言えこういう時に家の前まで運んでくれるのは最高だ。


ゲロと座薬とポカリ

帰宅したのが大体17時くらいでした。およそ累計4時間での帰宅です。何とか無事に帰り着けた安心感と、もう医者は居ないという不安感。そして、こみ上げてくるもの。これは何だ?感動か?違う、吐き気だ。吐いた。

元々私は乗り物にあまり強くない方なのですが、先述の通り嘔吐した経験は20年近く前で、少し車に乗る程度なら問題ないため主な原因はたぶん尿路結石の痛みだと思います。胃に異常は無いのに痛みだけで2度吐きました。

もう完全に腹の中身を全部出して、また少し気分が楽に。とは言え痛みはどんどん復活してくるので、早速私は処方された痛み止めの座薬を尻に突っ込みました。座薬も20年ぶりくらいですが、思ったよりスムーズに使えました。まあ腹の痛みに比べたら尻の異物感なんて本当にどうでもいいです。

そして、後はもう寝るだけです。助けてくれる人はいませんが、もう医者からの質問にいちいち答える必要もない。ただ横たわって、痛み止めが効いてくるのを待つ。また「ただ待つだけフェイズ」だ。それから何分経ったか忘れましたが、いつしか痛みは引いて、私は眠りに落ちました。

目が覚めたときには、痛みはほとんど消えていました。座薬は偉大でした。ついでに嘔吐感も消えていて、まともに水分くらいは摂れるように。結石の自然排出を促すために水分を多く摂るよう言われていたので、常備してあるポカリをひたすら飲みました。多めに水分を摂ったおかげか、結石が動いて状況が変化したのか、ようやくまともに尿が出るように。

それから二時間、三時間。そして六時間が経過。「痛み止めは6時間以上空けて」と言われていたので予定では6時間経過後すぐに次の痛み止めを飲むつもりだったのですが、この時点で痛みが「ほぼ無」になっていたので、また突然痛みが復活する恐怖を感じながらも痛み止めの追加はせず、そのまま就寝しました。


結局どうすればいいのか?

で、結局それから丸一日以上が経過した7月7日現在、そのまま痛みは再発していません。尿は正常に出るようになったし、残尿感も目立って感じることはありません。

ただ最初に書いたように、結石の排出を確認したわけではないし、まだ脇腹に突っ張るような違和感が出ることがあるため、おそらく現在は痛みが落ち着いているだけで、結石自体は未だ残っているものと思われます。気付かずに排出した可能性も無くはありませんが。

とにかく、まだあの地獄が蘇る可能性は残っているし、そもそも尿路結石は再発の確率が非常に高いらしいので、今回を乗り切っても再び地獄を味わう危険性が大いにあります。つまり全く安心できません。そんなわけで、私の使命は二つです。

一つは、現在の結石を排出するために水分を多めに摂ること。もう一つが、再発を防止し、もし再発した場合に迅速な対応をすること。

主に尿路結石の予防策としては「多めの水分摂取」「カルシウムの十分な摂取」「就寝前に飲み食いしない」等が挙げられているので、この辺りは心がけておこうと思います。実際どの程度予防の効果があるのか分からないし、今後ずっと食生活に気を遣うのも面倒ですが、あの痛みを再び味わうくらいなら食生活を変える方がマシです。

そして「迅速な対応」についてですが、今回はとにかく最初の動きが良くなかったと思います。記事の最初の方で書きましたが、今回は本格的な痛みの症状が出る4日も前から予兆は出ていました。「たぶん膀胱炎か何かだろう」なんて素人判断をせずに、さっさと医者に行って「残尿感が酷い、あと腹痛があった」と伝えていれば本格的な痛みが出る前に尿路結石という結論に辿り着けた可能性は大いにありました。それでも痛みの発生自体を完全に防ぐことは不可能だったと思いますが、あらかじめ痛み止めを用意し、水分を多めに摂るくらいの対策は取れていたはずです。この点は本当に今回の教訓にしておきたいです。

この記事を読んでもなお「まあ俺は尿路結石なんて絶対にならないからへーきへーき」とか「どうせ大げさに書いてるだけでしょ?俺なら結石の痛みなんて余裕だぜ」みたいな感想の方は何の対策もしなくて結構です。そしていつか尿路結石になって、ワンピースみたいに号泣しながら「ごべん゛な゛ざい゛!!お゛れ゛!!な゛に゛も゛わ゛がっでな゛がっだ!!!!!!」と叫んでください。

そうでない方は、「痛み止めを常備しておく」「突然の残尿感と腹痛(主に脇腹~背中辺り)があったら尿路結石を疑う」辺りを心がけておくと良いと思います。正直それでも症状が出たら相当キツいと思いますが、痛み止めも無しで何時間も耐え続けるよりは遥かにマシです。

それから、あとは私の痛みが再発しないまま結石が無事に排出されることを祈ってください。繰り返しになりますが、多分まだ完治してないんですよ。今は落ち着いていますが、また痛みが再発する恐怖に怯えっぱなしです。

とにかく、尿路結石は怖い。それだけの記事です。

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