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【名作迷作ザックザク⑨】~"祝!4Kリマスター放送"その2~ ドライなモルモット扱いは生命倫理スレスレ! 怪獣プロレスは超スピーディーでキレキレ! 『フランケンシュタイン対地底怪獣(1965)』の世界

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。(ノ゚∀゚)ノ
 そういえば昔、"歯磨きガム"ってのが有ったなぁと不意に思い出した、O次郎です。

幼少期にワンボックスカーで家族旅行に行く時とかに準備してたおもひで。
年少の子は道中の車中、退屈してる上の兄弟に暇つぶしでからかわれるんですわ…。(-.-;)

 先月から『シン・ウルトラマン』の公開を記念してということで、CSの日本映画専門チャンネルで円谷特撮映画が4か月連続リマスター放送されてます。
 先月は『モスラ(1961)』で、それについてのnote記事も書かせていただきましたが、今月は『フランケンシュタイン対地底怪獣(1965)』です。ちなみに自分は昭和の東宝特撮映画はゴジラシリーズや変身人間シリーズ、血を吸うシリーズ(すげぇ括り方だ…)あたりは観ましたが、本作については今回が初視聴です。
 で、昨夜のCS放送を観ていろいろと自分的に刺さった部分をご紹介しようと思います。私のように王道のゴジラシリーズだけで単発の怪獣映画のはノータッチだったという方々への端緒となれば之幸いでございます。
 それでは・・・・・・何をするだァーー-ッ!

”フランケンシュタイン”といえば、当時18歳で執筆した
19世紀初頭の女性作家メアリー=シェリーの生涯を描いた『メアリーの総て』。
非行に走ってもおかしくないような不運不幸からの悲憤を作品に込めた。
…個人的にはお姉さんのダコタ=ファニングの方が好み。



Ⅰ. 作品概要

 ”地底怪獣”と書いて”バラゴン”と読む!ということらしい。作品自体は知ってたけどそれは初めて知った…。
 公開時期からすると、ゴジラシリーズの『三大怪獣 地球最大の決戦』と『怪獣大戦争』の間ということのようで、あちらが怪獣対決重視・物語平易の方向に舵を切っていったのに対してということなのか、本作は情を掛けられながらもあくまでモルモット扱いされる異形の者の悲哀が強調され、コメディー描写も極力抑えられていることもあって、マイノリティー排斥の気分さえ感じられました。序盤に洞穴に隠れて怯える彼を村の警察や子供たちが追い立てるシーンなどはその最たるものです。
 そうしたビターなストーリー部分に沿うように怪獣対決もゴジラシリーズと比してヒロイックな印象は薄く、ラストシーンは特にそうした”厄介者感”を端的に示したシニカルな風合いです。
 ちなみにWikiにも書かれている結末2バージョンですが、今回放送分はオリジナルバージョンでした。

「大ダコ出現版」の方もスチール写真は幼少期からムック等でよく見かけました。
円盤をレンタルするなりしてちゃんとそっちも観ないとダメか。



Ⅱ. 見どころザクザク

 まずストーリー冒頭ですが、ゴジラシリーズを含めた子ども向けの怪獣映画にしてはかなり踏み込んだことに、戦中の交戦描写や原爆のキノコ雲のシーンも直接的に描かれており、原爆症の子どもが登場したり、物語の中心舞台が広島だったりと、”戦後”を在り在りと画にしています。本作が日米合作の怪獣映画としては初、ということですが、それまでのゴジラシリーズ以上に海外公開が前提になっている状況でなかなかに攻めた脚本だと思いました。
 社会派な一作目の『ゴジラ』ですら原子力怪獣としながらも核描写は避けられていましたが、フランケンシュタインの心臓が戦中末期にドイツよりもたらされたということもあり、”枢軸国側の狂気の産物””負の遺産”というフランケンシュタインのバックボーンが強烈に意識されるのがポイントだと思います。

『仁義なき戦い』のオープニングじゃないよ!

 
 そしてキャスティングについてですが、ゴジラシリーズでもおなじみの水野久美さんが本作では特にべらぼうに美しいです。

共演するニック=アダムス(予告篇で"ハリウッドの魅力"ってテロップ出た!なんだそれ!)から
実際に言い寄られた、という話ですが、なるほどそれもわからんでもない。

 公開当時御年28歳、ということでまさしく妙齢、ということもあるでしょう。
 がしかし、本作の2年前の『マタンゴ』での妖婦やゴジラシリーズの『怪獣大戦争』での敵異星人といった強烈なキャラ付けがされておらず、フランケンシュタインに対する母性は示しながらも人間への被害に鑑みて処分にも理解を示して取り乱さず、同僚の川地やジェームズ博士からの好意にもビジネスライクにあしらう、まさに「大人の女性」です。解り易い人物設定で粉飾されていないぶん、彼女本来の品が画に出ているからだと個人的には思います。
 
 また、特撮については合成がかなり巧みに使われています
 この3年前の『キングコング対ゴジラ』ではキングコングとゴジラから逃げ惑う人々の姿国会議事堂を上るコングの腕の中の女性等、ブルー基調の合成がかなり浮いており、”苦心の跡”の感が有りますが、本作は色調も粒子間も大分調整されていて円熟の感が有ります。・・・フランケンシュタインに見せるTVの嵌め込み合成はアレでしたが。

"大きい1年生と小さな2年生"

 そして本作で登場するフランケンシュタインは、着ぐるみではなく特殊メイクなのが怪獣映画の中に在って非常にユニークです。
 急激な成長に伴ってどんどん顔つきが険しく、歯が乱杭歯のようになり、それに伴ってメインの研究者3人があくまで”試料対象”としての思いを強くしていくことがなんともやりきれません。

サンドの富澤さんじゃないよ~っ!!

 いよいよバラゴンとフランケンシュタインの対決ですが、まずバラゴンが鶏・猪・馬そして人間と、捕食シーンも直接描写するところに本作の透徹した映像スタイルを感じます。
 しかしながらフランケンシュタインの出自と行く末で尺を使い過ぎなのか、バラゴンの深掘りが足りず、土中を掘り進む相対ショットや推進工事現場を掘り当てて崩落させるなど、敵役としてもう少し見せ場を用意してあげて欲し立ったところです。
 とはいえ、一方のフランケンシュタインが着ぐるみを着ていないことによる怪獣プロレスはかなり躍動感に溢れていて本作の大きなユニークネスとなっており、フランケンシュタインが火炎等のフィニッシュ攻撃ギミックが無いことでとことんまで追い詰めます。最終的にバラゴンの首の骨をへし折る様はもう、虎の穴の死角としてタイガーマスクと闘う資格のありそうな残虐ぶりです。

ルール無用の悪党に 正義のパンチをぶちかませ♪

 結局、生来決して好戦的ではないフランケンシュタインに怪獣退治を丸投げした挙句、バラゴンに起因する地割れに飲み込まれる彼を見るにつけ「どのみち生きていくのは難しかったからこれでよかったのかも」と宣う人間側。あんまり感情移入し過ぎて綺麗事を振りかざされてもそれはそれで暑苦しいのだけれども、それだけ達観してるのなら、せめて自分たちの利得のために他の動物をモルモットにして満足のいくデータが得られたらハイさよなら、という姿勢への自己省察ぐらいは挟んで欲しかったと思う。
 次作は『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』ということで本作のフランケンシュタインが続投ではありませんでしたが、あのラストなら本作の彼が人類に復讐する続篇でも十分有り得たのではないでしょうか。



Ⅲ. あとがき

 そんなこんなで『フランケンシュタイン対地底怪獣』でした。ゴジラシリーズのメジャー怪獣は登場しませんが、”人気怪獣に負けないものを作ろう”という制作側の気概はきちんと伝わってくる力作だったと思います。
 来月は『マタンゴ』のリマスター版放映とのことです。こちらもかなり以前から観よう観ようと思いつつ、サブスクのラインナップに上らなかったことも相俟ってそのままなので、来月のリマスター版放送まで待ってまた感想を書いてみる所存でございます。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・・・・どうぞよしなに。



フランケンシュタイナー!!


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