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【配信を拝診⑨】俳優陣は豪華渋オジ揃い踏み!! されど物語はご都合主義な地雷含み... いろいろと既視感バリバリなスパイアクションドラマシリーズ『Game Of Spy』をキミは楽しめるか?!

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。(・ε・`●)
 "スパイ"といえば、『ミッション:インポッシブル』や『スパイ・キッズ』よりも全く世代ではない『エスパイ』を思い浮かべちゃう、どうにも天邪鬼なO次郎です。

尾崎紀世彦さんが歌う主題歌「愛こそすべて」
タイトルが全てを物語っているような一大ヒューマニズム大作。
"東宝の特撮映画"ということもあって奇抜なSFギミックビジュアルは
昭和ゴジラシリーズみたいな雰囲気だが、取って付けた様なお色気描写で一応大人向け。

 今回は先般配信開始されたアマプラの独占ドラマシリーズ『Game Of Spy』です。
 東山紀之さんという、"見てる分には凄くて憧れるけど、実際に付き合うとなると此方にもそのストイックさを求められそうでしんどいかも"カテゴリ(イチローさんなんかも同カテゴリ?)の完璧思考の俳優さんが挑む、それも男の子がいくつになっても憧れる”スパイアクション”というジャンルの作品。
 考察の必要な難解な内容ではなかろうと気軽に手を出してみたわけですが、思っていたよりもさらに気軽な内容だったというか細部の詰めが甘すぎるというか・・・
 しかしながら一方で、主演の東山さんが自ら望んだという地上波では放送不可なハードアクションは確かに見応えが有り、ベテラン・中堅の俳優陣の演技は好もしいものでしたので、良しも悪しもポイント絞りつつ語って評してみようというわけです。
 未見だけれども地雷評価が多くなってしまっているので鑑賞の是非を迷っている方々、はたまた既に鑑賞済みで評価に困っている方々、感想の一つとして読んでいっていただければ之幸いでございます。ネタバレございますのでそのへんはご注意を。
 それでは・・・・・・・・・悲しみにつばをかけろ!!



藤岡弘、さん主演作の中で個人的に特におススメなのが1974年のハードボイルドアクションドラマ『白い牙
 陰謀に巻き込まれて同僚を射殺し、恋人であるその妹に真実を告げぬまま警察を辞した主人公が、悪を憎む心はそのままに警察で手に負えない悪を追い詰める事件屋となり、やがて巨悪の術中に嵌っていく…。
 舞台劇のようなワンシチュエーションの中でのどんでん返しが秀逸な第18話「事件屋仕掛人」は特に必見。DVD化済みでレンタルも有るのでゼヒ。
 その悲痛な結末も含めて70年代の反体制の気風を強く感じます。


Ⅰ. 作品概要

 早い話が”日本版CIA”のような諜報組織の精鋭たちがテロを未然に防ぐ、というものすごくテンプレートなチームアクション作品です。
 テンプレならテンプレなりに各登場人物の掛け合いや人物設定、物語の転がし方など、細部で個性の出しようが有る筈ですが、残念ながらそのどれもパッとしない印象を受けました。
 特にマズいのが人物設定で、例えば主人公は、
〇極度の方向音痴
〇語学力不足(日本語以外解らないという諜報機関員にあるまじき体たらく)
〇過去に奥さんを何者かに殺害された
というキャラクターとしての奥行きを用意されていたのですが、それがストーリー内で全く消化されないばかりか人間性にそれが寄与しているようにも見えません。取り敢えずの特性として入れた感バリバリで、他のキャラクターも含めてどうにも薄っぺらさを感じてしまいました。

"依頼が入ると冷静かつ迅速に任務を遂行する"という設定のわりには
すぐ頭に血がのぼったり自分の倫理優先させたりするし。

 また、中盤でGOSメンバーの一人の香月の妻子が誘拐されますが、任務に背いて彼らを救い出すために右往左往、その一方でテロ組織に新型天然痘ウイルスの培養を強要された教授とその娘をみすみす敵に殺させてしまったことに関しては特に後悔の色が有りません。
 なんというか、全体を通して実力の伴っていない安っぽいヒューマニズムに満ちており、学生の部活感すら感じてしまうのが辛いところです。

綺麗事の度合いでいうと安彦良和先生の漫画の主人公、みたいな。

 終盤に内通者たちによる裏切りが発覚しますが、物語の山場を作るための急増感が強く、動機や改心の様子もなんとも機械的に映ってしまったのは残念なところです。
 それをまた実力・知名度とも揃った名優陣が演じているので、なおのこと勿体無い。

TBSの"日曜劇場"枠にも負けない濃いキャスティングなのに・・・

 加えて、でんでんさん演じるGOSメンバーの発明家ポジションのおじいちゃんのトンデモ兵器の存在感がこれまたどっちつかずで、基本はギャグ描写に使われながらラストは起死回生の一手になるのでどうにもこうにも。
 思うに、あんまり奇抜な道具のビジュアルに頼りすぎるとせっかくのガチンコアクションのインパクトが薄れるし、されど遊び心を見せたいし…という制作側の煩悶がそのまま出ちゃったのかもしれません。

ポカやらかすとこも含めてドラちゃんポジション・・・か?

 総評すると、"架空の東京万博を間近に控えた首都圏でのテロ"という大筋のストーリーだけで全8エピソードをもたせるだけの十分なノウハウが製作サイドに無く、結果として毎回の"引き"のためにその場凌ぎの裏切りや殉職というあからさまな引き延ばしをせざるを得なかったのではないかと。
 スポンサーサイドからのスケール感に関する注文等も有ったのやもしれませんが、一話完結型のエピソードで各話毎にメンバーの中で主人公を定めてその人となりをしっかり描き、アクションと秘密道具も回を重ねてその個性を視聴者に浸透させつつ配するべきで、巨大な事件の発生はそれこそシーズン2への"引き"にすればよかったのに、と思います。
 日本でまだこれだけの本格アクションが撮れる、という実績を示せたのは大きいですが、使い古された題材を敢えて用いたのであればその描き方についても旧習を守って手堅く作るべきであったのに、と外野ながら口惜しいところです。



Ⅱ. 各キャラクター・キャストについて

・羽柴猛役 - 東山紀之さん

個人的には伝統の日テレ土曜夜9時の"ジャニドラ"枠で放映された『喰いタン』での
シュールなコミカルさが忘れられない…。

 さすがに長年時代劇で殺陣を経験されているうえにご自身のストイックな気質も相俟って体術もガンアクションも海外作品のそれに見劣りしないレベルでした。
 物語や設定のしょっぱさに目を瞑って彼のアクションだけに絞って観られる人なら本作は結構な"買い"とも言えると思います。
 過去に奥さんが何者かに暗殺されたことが回想シーンで挿入されましたが結局語られず、それが数少ない次シーズンへの持ち越し課題のようです。

まんま『絶対零度』のシーズン3からの主人公沢村一樹さんと同じような設定ってことか。
ていうかお二人、一歳違いなのね。


・香月政晴役 - 小澤征悦さん

個人的に小澤さんを初めて意識したのは単発TVドラマの『遺恨あり 明治十三年 最後の仇討』。
親の仇を終生追い続ける復讐の徒の物語ということで『修羅雪姫』に近いストーリー。
仇敵を演じたのが小澤さんでしたが、絶対悪ではない多面性がなんとも印象的で。

 小澤さんについても主演の東山さんのバディ役と同等レベルのハードアクションをこなされているうえ、上述のように妻子を人質に取られたりと悲運に見舞われるので主人公以上に印象は強いです。
 ただ、Wikiを見て初めて"東大法学部を主席で卒業"という設定に思い至ったぐらいにインテリ感が薄く、主人公同様に猪突猛進のイメージが強かったのでそこは脚本の功罪と言えるかも…。

ラストで何事も無かったかのように妻子との団らんの日を迎えているのがどうにも。
旦那の仕事の所為であれだけの危機に見舞われたんだから
離婚云々の憂き目のエピソードが有って然るべきやんか・・・。(´;δ;`)


・檜山レイ役 - ローレン・サイさん

これまでの作品を全く知らないと思ったら『テラスハウス』出身。
個人的にまったく興味のない分野でした・・・すんません。

 彼女もアクション担当ということで、ハリウッドアクション映画の経験者だけの堂々たる体捌きでしたが、脚本が役を持て余してあまりにもステレオタイプな不二子ちゃん的アイコン、という感じ。衣装にしても全身ラバースーツが如何にも過ぎて居たたまれん…。
 でんでんさん演じる久我山に育てられた過去の描写もなんともいい加減で、なんとも勿体無い限り。もし次シーズンがあるならキャラクターでテコ入れが一番必要なのは彼女でしょう。


・夏目篤彦役 - 植野行雄さん(デニス

やってるゲームが『ストⅤ』ってのも捻りが無さすぎというか、
キャラクターにもゲームにも拘りがイマイチやん。

 "凄腕ハッカー"っていうテンプレポジションに芸人さんキャスティングというこれまたテンプレの意外性。
 飄々とした雰囲気に面白ユーモアは流石ながら、彼にこそちょこっとでもアクションをやってもらえばそれこそ意外性として演出的に良かったのでは?

・久我山繁信役 - でんでんさん

今やすっかり"怪優"の代名詞のような方でやはり『冷たい熱帯魚』と言いたいところですが、
反対にサイコパスに翻弄された悲劇の小市民の駐在警官役の『CURE』も忘れ難きところで。

 チームのメカニックというか秘密道具担当。
 彼のいぶし銀感を生かし切れていないどころか、明らかに必然性の無い不必要な殉職で無理くりのお涙頂戴展開はいただけないどころの騒ぎじゃないよという。
 彼にしても、"実の娘を過去に失ったことからレイを実の娘のように可愛がって云々"というテンプレ展開をきちんと消化すらさせずに退場…というのがドイヒーに次ぐドイヒーというところで。
 彼にしても、次シーズンが実現した暁には"容姿が瓜二つの弟"なりの強引演出をしてでもきちんと名優起用した責任は製作サイドに果たしてもらいたす。
 

Ⅲ. おまとめ

 そんなこんなで不満点ばかりが目立ってしまいましたが、それもこれもとどのつまりはそれだけ”もっといいモン出来ただろう”というキャスティングの豪華さゆえの期待の裏返し、というわけで。
 全体としてドラマシリーズの尺を持て余している感が強かったので、単発作品としてやってれば間延びしたいろんな要素がギュッと凝縮されてよかったのかも…。

テロリスト側用心棒を演じていた、
元競泳選手というジェイソン=ステイサムみたいな異色の経歴の藤本隆宏さん
素晴らしい存在感だったのに…。
本作での演技とアクションが高く評価されることを願います。

 余談ながら、
〇ベタな隠密スパイアクション
〇ベタな特殊ギミック
〇ベタな脚本

という共通点で思い出したのが、2017年放映のTVドラマ『コードネームミラージュです。

仮面ライダーW』でも主演した桐山漣さんがあちらとは正反対の
寡黙で冷徹な暗殺者を演じた作品。
広井王子さん原作とあって安定感のあるベタさ!!

 本作を観ていろいろな点での手落ち感でフラストレーションの溜まった方はそちらも観ていただけると昇華出来るかもしれませんのでおススメいたします。
 他にもサブスク配信コンテンツの中でおススメのアクションシリーズが有ればコメントいただければ恐悦至極にございます。

 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




広井王子さんといえばなにはともあれ『サクラ大戦』だけども、こんなのも有ったなぁ。



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