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【名作迷作ザックザク⑫】かくて熱血中年刑事は権力に屈し、最愛の人のために正義を捨てて口を噤む... 『非情の標的(1973)』(ユーロクライム映画ばなし、その3)
結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。( *`ω´)
保育園・幼稚園・小学校・中学校・高校・大学と思い返して教室にエアコンが完備されてたのは中学校ぐらいだった、O次郎です。
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スイッチ入れてから起動するまでに10分くらい掛かったけど出力調整ガバガバですぐキンキンに。
日中も就寝中も扇風機で事足りてたし、やっぱり年々暑さ上限が上がってってるんだなぁ。
先日、ユーロクライム映画(70年代イタリア犯罪アクション映画の俗称)の個人的おススメ5選についての記事と追加でもう一本を書きましたが、つい先日、同ジャンルで名作との呼び声の高い一本を観ることができたので、今日はそれについてのお話です。
"巨悪に屈した中年男性"という脇役というか敵役に回るべきキャラクターを主人公に持ってくるイタリア映画の冷徹なリアリズム…。
俗に言う胸クソ映画やハードボイルド作品が好きな方々、読んでいっていただければ之幸いでございます。
それでは・・・・・・・・・・・・・歯磨きカレンダー!!!
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後日慌てて鉛筆で塗ってお歯黒状態に・・・。
Ⅰ. 『非情の標的(1973)』とは?
※英語版しかページが無いため、翻訳等でご覧ください。
『復讐のガンマン』や『狼の挽歌』といった硬派なアクションで知られるセルジオ=ソリーマ監督によるダーティーな犯罪アクション作品です。
若い頃は殺人課の刑事として活躍しながらも紆余曲折有って刑務所看守に身を窶している中年刑事が、誘拐された若い妻を救い出すために犯人グループと闘うも、余りの敵の巨大さと自分の属する警察組織の腐敗も目の当たりにして静かに体制に迎合していく姿を乾いたタッチで描いています。
主役の中年刑事を演じるオリヴァー=リードは、淫奔に塗れた宗教の欺瞞を衝いた『肉体の悪魔』や変態精神科医がモンスターを生み出す『ザ・ブルルード/怒りのメタファー』など、怪演ぶりが目立つ俳優さんですが、本作では脱獄させた囚人との友情と妻への愛と、そして巨悪への憎悪に揺れる正義漢を重厚に演じています。
特に囚人とぶつかり合いながら親交を深めていく様はこの上なく暑苦しくもどこかホモセクシュアルな漂いも有り、ずんぐりむっくりな体型に口ひげの勝新さんスタイルなことも相俟ってどことなく『兵隊やくざ』シリーズっぽさも感じさせる面も有ります。
銃撃戦やカーチェイスは少なめですが、その代わりに誘拐と人質交換を巡る駆け引きがとにかくドス黒く、ただただ巨悪に屈する陰惨なラストはジャンル映画としての様式美すら感じさせる完成度の高さです。
また、50代半ばで撮った本作がセルジオ=ソリーマ最後の監督作品になっている、というのもいろいろと考えさせられるところです。
Ⅱ. 非情な展開の数々
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ユーロクライム作品の例によって説明は全く無し。
しかも冒頭一分近く、真っ暗な画面に逃走する二人のうめき声だけが聞こえる
という異様なオープニング。
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この生き残りが今回のバディであるミロ=ルイズ(演:ファビオ=テスティ)。
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そして決定的な証拠も無しにその下手人として逮捕されたのがミロ。
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この人こそ主人公の妻の誘拐を指揮する黒幕のミシェル・グラニエ。
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「奥さんは此方に居る。返してほしくばミロを脱獄させろ」との脅迫。
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ついでに彼の脱獄を望んでいる心当たりが無いかも問いただすが、当人に思い当たるフシは無し。
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黒幕と共闘することを選択するミロ。
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犯人グループに見つかって轢き殺される…。
このへんの描写のリアルで淡々とした感じが容赦無し!!
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雇われ殺し屋に対し、素人仕事はここまでだ、と後を引き継ぐ黒幕のグラニエ。
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あっさり裏切られて銃撃されるヴィトとミロ。
応戦するヴィトだったが、ミロが足を撃たれてしまって命からがら撤退。
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犯人グループと繋がりの疑われるアルの元を急襲するとそこには彼の死体があり・・・
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直後、ヴィトは背後からグラニエ一味に殴られて昏倒…
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石油王の殺害は彼のバックに控える巨大組織の差し金であり、
下手人の替え玉として収監されていて真相を知るミロを始末しようとしていた。
脱獄した犯人を捕まえようとしたという体裁でミロを始末するようヴィトに促す。
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そして石油王暗殺の真相を警察に告白したヴィトだったが、
警察からも暗にミロを始末するよう促される。
警察組織内にも根深く敵の手が及んでいることを悟って愕然とするヴィト。
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お役所的な刑事が実に嫌らしい・・・。
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直接自分がミロに手を下すよう諭されたことも告白するヴィト。
それに対するミロは「新聞に暴露してどこまでも闘おう‼」という正義感ぶりだったのが…
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迷いを断ち切るように何発もミロに銃弾を浴びせるヴィト。
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石油王の死の真相を有耶無耶にしたい敵組織と警察の意向を汲んで口を噤むヴィト。
"妻を取り戻す"という大義名分のために正義と道徳を捨てた男の空虚な顔と、
それまでとは明らかに別人の雰囲気の夫に恐れ慄いて一歩下がる妻の姿。
二人の間にセリフは無いものの、今後まっとうな夫婦関係など
築けようもないことを暗示させるエンディング。
Ⅲ. おしまいに
というわけで今回はユーロクライムの知る人ぞ知る秀作『非情の標的』をご紹介しました。
上述の通り、本来ならば脇役に回されるような"権力に屈した男"を主人公に持ってきているのがまずスゴイのですが、おそらく、そうした背景が直接的に作中で描かれていなくてもそれを演じられ、その演技から観客にその背景を想像させてくれる俳優さんが、世にいう"バイプレイヤー"と呼ばれる盟友さんたちなのでしょう。
この物語はここで幕を閉じていますが、彼の無念を汲み取った誰かが巨大な権力に一矢報いたと信じたいところではあります。しかしながら、作中終盤でミロのガールフレンドが敏感に彼の死の気配を感じ取って離れていったように、悉く情を踏み躙る物語展開はハートフルなそれに慣れた身には強烈に響いて、また同系統の作品を観たくなる中毒性に満ちています。
もし同ジャンルで他におススメの作品がございましたらコメントいただければ恐悦至極にございます。
今回はこのへんにて。
それでは・・・・・・・・・どうぞよしなに。
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