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【名作迷作ザックザク⑪】奇行の背景に仄見える有りうべき格差婚の姿とは・・・ 孤独と劣等感に苛まれる新妻が"異食"にのめり込むスリラー映画『Swallow/スワロウ』

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。(ノ ´▽`*)ノ
 今秋発売予定の『メガドライブミニ2』を予約しようかどうしようか迷いっちんぐな、O次郎です。

第一弾は『ロックマンメガワールド』が含まれてたので即ポチりましたが、
第二弾の目玉として入れてほしいのは有野課長もプレイされたコレか…。
パワポケ』シリーズのサクセスモードのトンデモ展開はこのへん参考にしてるんやないの?

 今回は米仏合作のスリラー映画『Swallow/スワロウ』(2019)です。
 公開当時から既に何かと話題になってましたが、なんでか観に行かずじまい。しかも未だに各種映画サイトでトレンド入りしているのでこりゃイカン、ということで近々ようやく観ました。
 で、”異食症”という耳慣れないショッキングなテーマを題材にした映画であることも然ることながら、その裏で”結婚”あるいは”夫婦関係”というものの危うさを衝いている多層的な作品だと感じ、是非とも本作を題材に一本語らねば、と思った次第です・・・・・・独身アラフォーおじちゃんのわたくしが何言ってんだという話なのですが。( ・ิω・ิ)
 『ローズマリーの赤ちゃん』や『イレイザーヘッド』のような喩えようのない内面的不安を扱った作品が好物な方々、そして”格差婚”という言葉に胸を痛めておいでの方々、読んでいっていただければ之幸いでございます。
 それでは・・・・・・・・・・・・せ~~~が~~~~!!

第一弾で名作といわれてるソフトは粗方収録されたから、
第二弾は版権ものに果敢に挑む・・・とかどうでしょうか。



Ⅰ. 概要

 数少ない登場人物の中で家庭が抱える普遍的な相互不理解を効果的に描いています。
 また本作の根本である主人公の孤独も非常にわかりやすく、且つビジュアル的に鮮やかに表現されています。広大な邸宅にぽつねんと佇む主人公の姿や、彼女がやることが無いために唐突な家庭菜園やアプリゲームに興じる目の空虚さ、夫やその両親との食事の際には会話の途中で仕事の電話を優先されたり、笑い話(昔、浮浪者然とした男性に意を決して声を掛けたという話だが、途中で遮られたのでオチはわからず。本編の結末からすると主人公の父親だったのかとも思いましたが、『古畑任三郎』の「赤い洗面器の男」のような小咄なのかな)をスルーされたり…。
 作中、主人公に害意を持っている人物は誰も居らず、その周囲の善意がなおさら彼女の孤独と無能感を深めてしまいます。例えば新しい職場で先輩方からの「無理しないで」「出来なければこっちでやるから」という優しい言葉に自分が員数外であることをまじまじと自覚させられたり、あるいは大したことの無い自分の経歴を誉めそやされて気を遣われていることに睥睨感を読み取ってしまったり、誰もが経験し得ることです。

まるでティーンエイジャーのような無垢さ。
「部屋とYシャツと私」の平松愛理さんもビックリです。
義母からの「髪を伸ばしたら?息子は長い方が好みよ。」という言葉も
息子のガールフレンドに対する態度のようで自尊心の持ちようが無い。

 そうした夫やその家族・友人から、そして実は彼女自身の親族からもある種”腫れ物”のように大事に扱われてきた主人公が、自分が決して”憐れな女性”ではないという気付きを得て自分の人生を取り戻すお話です。


ちなみにですが・・・・・・・・


左がヘイリー、右がジェニファー。

 やっぱジェニファー=ローレンスに似てる!!
 それはさておき、これまでのフィルモグラフィーではセクシーシンボルや、屈強な男に守られるアイコン的ヒロインの役が多いイメージでしたが、
本作では製作総指揮も務めているそうで、そうしたイメージからの脱却を企図しての新境地のようにも思えます。
 本作での”異食”に耽溺していく演技は異様な魅力があり、これからの作品でまたぞろ新境地を見せて欲しいものです。


Ⅱ. ”異食”の正体

 主人公はとにかく、周囲の人たちから評価されていません。
 中盤に明らかになる通り、彼女は母親が若い時分に酒場で男に乱暴されて身籠った子であり、(バースコントロールを忌避する)カトリック教徒の教義に従って彼女を生んでいます。終盤の電話での会話からも明らかなように、彼女が彼女であるがゆえに愛しているのではなく、継父も含めて”努めて愛してきた”感が有ります
 
 夫に関しては、大企業の役員を勤める自分とブルーカラー出身の主人公とをとても同列には考えられず、健気に部屋の模様替えやガーデニング、夫好みの食事を覚えようと努力する妻の姿を上から見守り或いは苛立つ姿はまるで愛玩動物に対する態度のようです。であるとすれば、そういう彼自身も自分の父親の支配から逃れようが無く、その代償行為として無学な彼女を選んだのではないでしょうか。彼女の人間性ではなく、その客観的にも判る眉目秀麗な容姿と、自分との絶対的な社会的ステータスの差ゆえにマウンティング出来る相手として彼女を選んだのでしょう。元巨人の桑田真澄さんの言う「殴られて覚えた奴は自分が教えるときにも殴る」という理屈に近いかもしれません。
 彼女を子ども扱いし、彼女のプライドも斟酌せずに彼女の心の病を友人に公表し、ラストの電話での口論の際には「俺の子どもを返せ‼」との叫びには彼女自身のことはどうでもいいと考えている心理が透けて見えました。

お互いに”支え合っている”という意識のある関係であれば
こういう言葉にはならないはずです。

 そして主人公が異食をしないよう監視するために雇われた看護師です。
 日中ほとんど豪邸に一人で居ることの多い主人公の下に中年男性を連れてくるというデリカシーの無さがまず驚きですが、内情不安定なシリア出身の彼に異食を”贅沢病”と揶揄されたのも辛過ぎます。
 その一方で彼は徐々に彼女の孤独を理解し、埃塗れのカーペットに一緒に寝そべったりして唯一、彼女に寄り添おうとしています
 最終的に施設入院を回避すべく脱走する彼女を手助けしますが、如何にして憐憫に上回る同情を持つに到ったのか、定かではないところではありあす。

二人とも服従を強いられてる立場….ってこと?

 最終的に夫の下から脱走し、母をその昔暴行した実の父親の下を訪れます。彼にとって主人公は過去の自分の大罪の象徴であり、既に新しい家庭を築いている彼はこれまでの登場人物の中で誰よりも主人公を疎ましく思っている筈ですが、その彼から肯定されたことで、ようやく彼女は”庇護すべき存在”という立場から解放されます
 ラストシーンでの中絶は意見の分かれるところでしょうが、生来ずっと庇護者の支配下で申し訳無い思いで生きてきた彼女にとって、”庇護すべき存在”の象徴である子どもの出現はその構造を再生産させてしまう危険を孕んでいます。自分が自分だけで生きる価値のある人間だと示すためにも、ああするしかなかったのかもしれません。
 
 とどのつまり異物は彼女にとって自分自身の象徴であり、それを飲み込むことは自己肯定の代償行為だったのではないでしょうか。

「ハンターはハンターだけのものだ。誰にも好きにさせちゃいけない」

 


Ⅲ. 自分の話 

 翻って私の話ですが、両親の中が決して良くはありませんでした。
 教師の父親は厳格な家父長気質の祖父の影響で自分の考え方を家族に押し付け、母や子どもの気持ちよりも自分のプライドを優先し、自己肯定感の低さゆえに家族にマウンティングする。
 対して専業主婦の母親は時には手を上げさえする父を内心で軽蔑し、子どものために怒りや悲しみを飲み込むも時折それがラインを超えて子どもに八つ当たりをする。
 とどのつまり結婚はお互いに対する尊敬が何よりも大事だと思うのです。
 もともと他人だった二人が何十年も一緒に居ることになるのですから、愛情など薄れてお互いの嫌な面ばかり目についてくるのは至極当然です。
 そうした中で良好な関係を保つには、お互いに尊敬し合って、その相手に尊敬されている面をお互いに高め合っていくしかないのではないでしょうか。その尊敬が無ければいざ二人が衝突した際に歯止めが利かず、本音が転び出る形で人格否定の言葉を口走ってそれがお互いの癒えない傷として堆積していくことになります・・・・・・まさに本作のクライマックスの二人のように。
 逆を言えば二人の間に収入や年齢にどれだけ開きが有ろうと、お互いに一人の人間として尊敬し合ってそれを高める努力を続ければ、依存も支配も生まれずあるべき関係が築けるのではないでしょうか。
 そしてそうであれば周囲からの好奇の目にも屈せず、代償も求めずに済むのではないでしょうか。



Ⅳ. おしまいに

 というわけで、今回は未だ話題の渦中にある映画『Swallow/スワロウ』について個人的な思いの丈を綴ってみました。本作は格差婚の夫婦の話の形をとってはいますが、どこの家庭の誰の立場からも生まれ得る普遍的な孤独の形だと思います。
 それが表層的にはスリラーの形を成しているために映画的娯楽としての間口も広く、秀逸なアプローチだとあらためて感心しました。

 あんまり独り善がりな逆張りチョイスばかりになってもよろしくないため、今後もこうしたトレンド作品も語っていく所存です。こうした”実は深い”おススメ作品ご存じでしたらコメントでご教示いただければ恐悦至極にございます。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・・・・どうぞよしなに。




そういえば再ブレイクのキッカケの一つになった『内P』で
有吉さんがヤケになって土を喰ったりしてたのをふと思い出した。



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