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【最新作云々60】おバカインフルエンサーはお高いのがお好き...なだけではない! 絶望・再起・友情・嫉妬・そして妄想も入り乱れるシチュエーションスリラー映画『FALL/フォール』

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。(o´・ω・o)σ
 発売から2年余りもず~~~っと品薄だった"アレ"が「今月に入って安定共有体制が確保された」というニュースを聞いて、半信半疑で昨晩仕事帰りに最寄りの某ゲームショップに寄ったらホントに新品が定価で買えちゃって拍子抜け・・・なO次郎です。

予想以上に外箱がデカくてビックリだったので
ウチのぬいぐるみの中でもひときわ大きい50cmのドラちゃんといっしょに一枚、、、
ちなみにディスクドライブの無いデジタルエディションの方は品切れでした。
まぁ、PS4ディスクとの互換性に鑑みてPS4本体を売り払えると考えれば妥当と思うことに。
実は十年ほど前にまさにその某ゲームチェーン店でバイトしてたので
そのよしみで延長保証サービスにも加入しました。
たしかサービス開始当初は中古本体購入時も半年間は延長保証出来たんだよな…懐かしい。(*´罒`*)

 今回は最新のハリウッド映画『FALL/フォールです。
 フリークライマーの女性二人が度胸試しに解体間近の地上600mのオンボロテレビ塔に登って降りられなくなる・・・まるで近々巷間を賑わせているSNSのやらかし問題の如きタイムリーな内容の作品で、ワンアイデアの即物的なパニック映画かと思いきや、ストーリーが進むにつれて徐々に二人の秘密が明らかとなったりどんでん返しが待ち受けていたりと、なかなかに緻密に練られた構成の良質なワンシチュエーションスリラーでした。
 印象としては『ゼロ・グラビティ』『ザ・ウォーク』『ALONE/アローン』あたりに近く、そのあたりの限定状況作品がお好きな方々はとみに読んでいっていただければ之幸いでございます。いつも通り盛大にラストまでネタバレしておりますので予めご了承くださいませませ。
 それでは・・・・・・・・・・・"HD DVD"!!

ご存じBlu-rayディスクとの規格争いで敗れたフォーマット・・・
00年代半ばの話ですからもうかれこれ20年ほど前の話ですね。(゜Д゜)
僕が大学生ぐらいの頃にレンタルチェーン店でだいたい棚一列ぐらいで
Blu-rayと並列陳列されてたのを思い出します。
Blu-rayのパッケージがブルーだからこっちは赤ってのがなんともかんとも。
PS2が出た時は「DVDも観られる!」そしてPS3が出た時は「Blu-rayも観られる!!」と
心躍ったもんだけど、今回「UHD BDが観られる!!!」とはなんないというか、
もうすっかりサブスク配信に慣れちゃってすっかり円盤媒体かわなくなっちゃったわけで。
これを機にUHDソフトな何か買ってみるか・・・・・・おススメございますかね?


Ⅰ. 作品概要

(あらすじ引用)
 フリークライマーのベッキーは夫ダンをフリークライミング中の事故で亡くし、1年が経っても悲しみに暮れていた。親友でクライマー仲間のハンター(演:
ヴァージニア・ガードナー)はそんな彼女を元気づけようと、新たなクライミングに誘う。
 2人が登るのは、人里離れた場所にある高さ600メートルの使われなくなったテレビ塔だった。2人はさび付いた梯子を慎重に登りながら、なんとか頂上へ到達。ベッキーは夫の遺灰をそこから撒くことで彼を偲び、新たな1歩を踏み出す決意を示すがその時、地上に降りるための唯一の手段だった梯子が突然崩落してしまう。携帯電話の電波も圏外のため助けを呼ぶこともできず、2人は高いテレビ塔の頂上に取り残されてしまう。

 そんなこんなで、冒頭は主人公ベッキーとその夫ダン、そして二人の親友ハンターの三人でのロッククライミング。崖に身を預けながらもイチャつく夫妻と先行しつつそれを窘めるハンターでしたが、アクシデントの重なりによってダンはあれよあれよという間に転落死・・・・・・そこから一年以上もずっとベッキーは現実逃避の酒浸りで、一人親である父親のジェームズ(演:ジェフリー・ディーン・モーガン)の叱咤の声も殆ど届きません。
 蓋し、ダンの事故の原因がベッキーやハンターにあるのならその罪悪感で…と理解が出来ますが、彼女は純粋に彼を喪った悲しみのみで一年以上も臥せっており、それだけ愛が深かったのもあるでしょうが同時にパートナーへの依存心が相当に強い女性であることも伺えます。

 そうして自分の殻に閉じこもっている彼女を救い出すべくハンターが登場。彼女のほうはどうにか件の事故の折り合いをつけ、各地で危険なクライミングに挑戦するインフルエンサーを続けており、その新たなる対象である問題のテレビ塔へのチャレンジにベッキーを誘います。
 なんとも傍迷惑な話であり、最初のうちはベッキーも断りますが、「これでダンのことはふっ切ろう」「これをやり遂げれば今後の人生何も怖くなくなる」と懸命に説得され、渋々ながらダンの遺骨を持参して危険な挑戦に挑むことに。

表向きには誰も思いつかないような奇抜な企画で動画収入を得ようという魂胆ですが、
ハンターには彼女なりの人生哲学に則っての今回のチャレンジのご様子。
彼女と付き合いの長いベッキーだからこそ最後には頷いたのでしょうが、
傍目には人騒がせなうえに他人を巻き込む奇人としか映りようが無いもので。
マン・オン・ワイヤー』(2008)
それはさながらワールド・トレード・センターのツインタワー間での綱渡りを断行した
フランスの大道芸人のフィリップ・プティのようでもあり…。

自らの命を絶対的な危険に晒す行為であるうえにたとえ達成したとしても
好奇の目は向けられても地位や名誉は全く伴わず、それどころか犯罪行為に問われてしまう。
それでもその達成に自分の全精力を傾注して入念に準備し、身命を賭す・・・という
世評に捉われずに自分の思うままを全うするまさに"人生"を感じさせます。
本作でのハンターも彼ほどの執念ではないにせよ、その挑戦を通しての
世人には理解出来ない本人だけの達成感というものが見据えられているのでしょう。

 そんでもって最寄りのモーテルとレストランで英気を養いつつ、いよいよ問題のテレビ塔へ。老朽化しているうえに既に無用の長物と化しているため数か月以内に取り壊し予定、ということで当然ながら柵で封鎖されているのですがグングン進んでいってしまいます。

プロのクライマーのわりにはあまりにもふだん着でふだんの心桃の花。
対象が岸壁ではなく鉄塔なので使えない道具も多々有るでしょうが、
それにしてもインスタ映え前提過ぎるわけで。

テレビ塔の足元の砂漠地帯には獣の死体とそれを啄むハゲタカ、といういかにもな描写。"行きはよいよい 帰りは恐い"とばかりに登る途上でボルトが緩んでハシゴが軋るくだりもいかにも如何にもです。

道中でも常にハンターがリード状態。
ブランクも手伝って途中で何度も挫折しそうになるベッキーを
励まして高みへ誘います。

 そうしておそらくは小一時間程度でいよいよのてっぺん到着による記念撮影とベッキーによるダンの遺骨の散骨。二人して達成感と立ち直った感を満喫してからの、、、

ほぼ最上層からのハシゴの崩落!!
外れたハシゴが落下中に下層のハシゴのパーツにぶつかって
これまた崩落させていく雪崩式のそれです。

 ハンターが背負っているリュックの中に最低限の道具は揃っているため、てっぺんからロープを垂らしてなんとかベッキーをルーフトップへ帰還させますが、ここからじっくりと生還の可能性を見出して試してはそれが潰されていく展開がじわじわと続いていきます。
 標高が高すぎるゆえに携帯電波が届かないのでSNSに救助を求めるメッセージを打ち込んだハンターのスマホの投下(スニーカーにくるんで衝撃ガード)は不発に終わり、手書きの救助要請メッセージの紙を託したドローンはレストランに不時着する寸前でトラックにぶつかって大破し、ルーフトップに備え付けの信号弾で夕方に奇跡的に近くを通りがかった車へ合図を送ることに成功するも救援を読んでくれないばかりか自分たちの車を盗まれてしまう…。

その途上、ドローンのバッテリー充電のために
尖塔の航空誘導灯のランプから電気を拝借しますが、
足を負傷したハンターに代わってベッキーが担当。
ハゲタカに啄まれて何度も落ちそうになりながらも充電を完了させます。
"死中に活を見出す"とばかりに、それまで希死観念に囚われていた人物が
絶対的危険状況の中で鮮やかに生存本能を目覚めさせていく
シチュエーションスリラーの醍醐味でしょう。

 生存の可能性が悉く潰されていった後は人間心理の核心として、当事者間でのいがみ合いが始まってしまいます。
 本来なら互いの編み出した策の浅薄さを詰り罵り合うのがセオリーでしょうが、本作ではここで初めて生前のダンがベッキーと知り合う前はハンターと愛し合っていたことを知る展開がなかなかに鮮やかです。

これが露悪的な脚本や二昔前の恐怖系のレディコミとかであれば
主人公が疑惑の恋敵を怒りのあまり謀殺する流れですが、本作ではそこまで野暮なことはなく、
互いの内心をありのままに懺悔します。

 ハンターはハンターで手痛い失恋の末にダンの不慮の事故で二人の幸せな生活をこれ以上見ずに済んだ、という複雑な思いを抱えており、彼女もまたベッキーとは別の形で過去から逃げていたのでした。

 ここまでの推移だけでもなかなかに視聴者を飽きさせない工夫が凝らされていますが、本作では最後にもう一押し有ります。
 助かるための試行錯誤の途上で最上層からいくらか下方のテレビアンテナにリュックが落ちてしまい、それを回収しにハンターが下りるのですが足を滑らせたハンターはアンテナに激突して落命してしまい、しかもその事実を受け止めたくないベッキーは妄想内で助かった彼女と一昼夜時間を共にしていたのでした・・・

途中からは一人残された絶望に打ちひしがれていたベッキーの妄想の光景…。
ただでさえ助かる見込みの無い中であまりにも惨いミスリードでした。

 しかしながらあまりにも絶望的な状況の中で主人公の中で一切の整理が付いたのか、「限りある生を真剣に生きなければ」という生前のハンター、ひいてはダンの意志を胸に生存本能を開花させるその姿。
 残された自分のスマホで救助メッセージを再度投下する最後の賭けに出るのですが、そのために自分の足の傷を啄むために舞い降りたハゲタカの油断を誘ってその首を折り、引き裂いてその肉を喰らい(菌とかの問題は有りますがこの際彼女はそのへんを超越していて…)英気を養ったうえ、テレビアンテナに激突して絶命しているハンターの腹部の裂傷の中に自分のスマホを仕込んだスニーカーを埋め込み、彼女の亡骸を衝撃の緩衝材とする形で自分のスマホを彼女ごと投下します。

それはさながら、極限状況化で生き残るために
あらゆるものを最大限に利用する戦士のように、、、

 かくしてベッキーの最大最期の、そして己のモラルを擦り減らしての渾身のサバイバルは功を奏し、SOSメッセージが届いて救急車と梯子車、そして連絡を受けた父のジェームズに迎えられる形で物語は幕を閉じます。
 野生動物を直に貪り、そして親友の肉体も活用する形で生還を果たしたベッキーは謂わばその後の人生で何重もの十字架を背負って生きていくことになるのでしょうが、それだけに最期の瞬間まで真剣に生きる濃密な全き"人生"となることでしょう。
 果たしてそうした"生き延びるために行動した"経験を経た主人公に修正寄り添える気概を持った新しいパートナーが現れるかどうかは定かではありませんが、少なくとも父親はその生ある限り寄り添ってくれることを願わずにはいられません。



Ⅱ. おしまいに

 というわけで今回は最新のハリウッド映画『FALL/フォール』でした。
 正直言ってキャストは著名人たちではないうえに数えるほどの人数しか画面に出てきていないものの決して低予算の作品ではなく、それ以外のところに労力と予算を振った傾斜生産方式な力作でした。
 "人生について考える映画"というと、余命いくばくも無い老人や大病を患った人物の物語を想像しがちですが、そうした世人からの同情の余地の有るところとは言わば対極の、「自業自得」の一言で片づけられ同情を拒絶されてしまうシチュエーションの中で人の生の何たるかを考える一本でもあり、そういう意味では多分に説法めいたヒューマンドラマ的アプローチを嫌う人にこそ刺さる作品なのかもしれません。
 これ以上捏ね繰り回すと自分も訳が分からなくなってきそうなので今回はこのへんにて………。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。



 

ちなみに冒頭の規格争いの話で、VHSベータマックスの構図を成していたとされる
80年代後半は幼児期でしたのでさすがに当事者感は皆無に等しく、
ベータの現物を拝んだ記憶は思い付く限りございません。
さらに記憶を掘り起こすに、ビデオデッキについては型の古さはあるにせよ
物心つく頃には既に実家に在ったので、いわゆる"好きなTV番組をなんとかして形に残すべく
テープレコーダーで音だけでも"的な原体験は無かったわけで。
まぁ、だからなんだよっていう話ですが…。(´・ω・`)


 



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