【配信を拝診⑦】ロボトミー手術より恐ろしいハイテク治験実験に囚人は怒り怯え、クリヘムは泣き笑う... Netflix独占配信映画『スパイダーヘッド』は割り切って楽しむこと!
結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。(´ ∀`)
昨日はオフィスの引っ越しで終日てんてこまい + 荷解き作業による汗だくで絶叫の宇宙だった、O次郎です。
引っ越し業者のスタッフの方、お客さんに対してはものすごく優しいんですけどその一方で同僚の作業員に対する態度は厳しくて、見ててちょっとビビったり….(⦿_⦿)
ということで思い出すのが松村さんのこのモノマネ。
今日は、去る6/17(木)よりリリースのNetflix独占配信映画『スパイダーヘッド』についてのお話です。つい先日はクリヘムことクリス=ヘムズワースプロデュース・奥様のエルサ=パタキー主演の『インターセプタ―』についての記事を書きましたが、今回はクリヘムプロデュース兼主演作品でございます。
もうすぐMARVELの『ソー』シリーズの最新作も公開されるということで自身のクリヘム熱をくべておくべく、話題作には素直に乗っかるべく、そしてやっぱり単発作品かつサブスク配信ということで時間とお金を掛けずに観られる最新作、ということで飛びついてみたわけです。
観終わってみてストーリーや演出的には詰めが甘いなーというのが正直なところだったのですが、メジャー俳優の意外な役どころや共演というところでは各人のフィルモグラフィーに明記されるべき一本とは言えるかと思います。詳しくは後述ということで。
クリヘム大好きだけど本作はどうかな~という様子見の方や、既に観たけど他の人はどう見たかなと気になってる方々、読んでいっていただければ之幸いでございます。ネタバレございますのでご容赦を。
それでは・・・・・・・・・どうぞよしなに。
Ⅰ. 作品概要
娯楽や移動の自由の整ったハイテクで快適な刑務所生活を約束する代わりに、被験者の感情に作用する新薬の治験実験に参加することを余儀なくされる受刑者たちが次第にその恐怖と真相の虜になっていく物語。
刑務所の責任者であり、治験実験で次第にその冷徹で利己的な人間性を見せつける悪役のクリヘムと、主演作は少ないながら大作に絶え間無く出演している人気実力ともなったマイルズ=テラーの共演、というところがパッと見のアピールポイントですが、そのままその部分に注目して演技を楽しむのが吉です。
というのも、"感情に作用する複数種の薬液のアンプルの入ったケースを腰に装着し、スマホアプリで体内に注入"という現代的な演出はいいとして、負の感情を誘発する薬液の治験実験で受刑者に犠牲者が出てしまい、それを受けて受刑者の一人であるマイルズ=テラーが実験とその主体であるクリヘムに疑念を抱く、という展開が非常に短絡的で、正直言って捻りがありません。
こういう看守と受刑者という絶対的な立場の隔たりがある設定の場合、それを受刑者側が如何に知略と団結で以てして看守側の横暴を暴いて勝利するか、というのが目指すべきカタルシスかと思います。
この”知略”あるいは”団結”が希薄で、主人公とヒロインだけがクリヘム側の陰謀に気付いてその支配から逃れようとする展開だったのでどうしても浅く、交通事故で友人二人を死なせた主人公や、不注意で幼い娘を死なせたヒロインの暗い過去もイマイチストーリーに生かせずで、トータルとして芳しくない評価になったように思います。
例えばですが、
〇クリヘム側は囚人側に利益誘導はせず、個々の囚人に互いに偽の誹謗中傷を聞かせて、互いに疑心暗鬼状態にさせる ※人を支配する常套手段
〇囚人が自殺する直前に投与された薬液が怪しいと踏むものの、後日同じ薬液を別の囚人に投与しても異常無し → 実は数種類の薬液の投与の組み合わせで特殊な副作用を発症
〇主人公であるマイルスが他の囚人たちとの会話や、直近投与された薬液の組み合わせの整合性からそのカラクリに気付く
〇主人公と彼にただ一人味方するヒロインが他の囚人たちに自らの罪を告白して協力を仰ぎ、みんなで蜂起して大脱走
みたいに謎解きや人物背景の見せ方にもうちょっと工夫が有ればだいぶ評価も変わったのではないでしょうか。
加えて、悪役であるクリヘムの人物造形も中途半端で、金のためなら自らの身体での実験も辞さない全力銭ゲバなのかと思いきや、一方で受刑者の目にすぐつく所に悪事の証拠を置いてしまっていたり、主人公に追いつめられるや証拠隠滅のために囚人もろとも施設を爆破することもなくさっさと自家用機で逃げようとしたり。設定の詰めが甘くて大スターのクリヘムのオーラを生かしきれていないように思います。
Ⅱ. キャスト及びスタッフについて
・監督 - ジョセフ=コシンスキー
今まさに大ヒットを続けている『トップガン マーヴェリック』の監督としてこれからめちゃくちゃ引く手数多になっていくであろう御仁。 ※先日『~マーヴェリック』の記事も書いたのでよろしければご覧あれ。
大学は機械工学デザイン科専攻だったとのことで、自身の初期のフィルモグラフィーである『トロン:レガシー』『オブリビオン』のかなり独創的なメカニックビジュアルは彼の負う部分も大きかったのでしょうか。
反面、他の監督作も含めてストーリーに関しては捻りの少ない王道の人情譚ばかりなので、本作のようなサスペンス作品を撮るには不向きというか方法論が自身の中で確立していなかったのかも。
本作では上述のようなユニークなメカギミックに乏しかったのも口惜しいところ。刑務所という特殊空間なのでアレンジの余地は大きかったと思うのですが。
・レイチェル(ヒロイン)役 - ジャーニー・スモレット=ベル
クリヘムとマイルスの話は上のほうで書いたので彼女の話をば。
最近ではU-NEXTで配信もされた、黒人差別+モンスター襲撃をミックスした異色スリラー『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』の主演で有名ですが、子役時代に助演した、父親の不倫を目撃したショックから憎悪を募らせて"呪い"に目覚める少女の狂気を描いた『プレイヤー/死の祈り』も既に強烈。
せっかくのスクリーミングクィーンの登用なのに本作中での彼女が投薬に恐れおののく演出はなんとも単調な感が否めなかったので、薬によって変調していく様をもうちょっと尺を割いて演じてもらえばまた作品全体の印象の底上げになったのではと思えてならない。
Ⅲ. まとめに思ったことをつらつら
今作の肝である投薬の目的は、表向きは「感情を人為的に左右させる薬」、その実は「どんな状況でも人を従わせる研究」ということで、想起させられるのはロボトミー手術でしょうか。
上述のように、展開に今一つ捻りが足らないと感じたのですが、危険な投薬を自分のリスクを狡猾に回避しつつ続けるクリヘムに対し、受刑者たちが団結して復讐する”因果応報”的な終わり方であればあるいはストレートで分かりやすいカタルシスに繋がったかもしれません。"愛"と"憎悪"の感情を増幅された受刑者たちがクリヘムを愛しながら殺す、とかね・・・。
ということで今回はNetflix独占配信作品『スパイダーヘッド』について語ってみました。監督は上述のようにデザイン畑出身ですし、原作のジョージ・ソーンダーズは児童書から出発されている作家さんのようで、そこに万人受けするスターキャストやアクションも盛り込もうとした結果……別方向の才能がまとまりきらずどっちつかずで、”船頭多くして船山に登る”というのがあらためての本作に対する感想かもしれません。
大作映画でよく目にする名前とはじめて聞く名前が混在するのがこうした独占配信作品のユニークなところですが、その出来栄えに関しては闇鍋を楽しむような割り切りというか玉石混交を覚悟する必要はあるかもしれません。それもまた映画の醍醐味なので、これからも率先して読んでくださる皆さんのお毒見役腕下主丞を務めさせていただく所存です。
今回はこのへんにて。
それでは・・・・・・・・・どうぞよしなに。
もしももしもよろしければサポートをどうぞよしなに。いただいたサポートは日々の映画感想文執筆のための鑑賞費に活用させていただきます。