見出し画像

親子子育て応援ラボ第11回勉強会   「こどもへの性暴力防止」


<開催概要>
2022年4月19日(火)10時〜11時30分
講師:NPO法人thinkkids 代表理事 後藤啓二氏
(弁護士、元警察庁企画官・内閣参事官)警察庁時代に、平成13年頃に、児童虐待やDVやストーカー対策について警察がおよび腰だった頃に対応する方針を出すことに携わり、退庁後は子ども虐待ゼロを目指すための法改正の提言を行うNPO法人thinkkidsを立ち上げ、活動中。
司会:森澤きょうこ(東京都議会議員・品川区選出)
企画:酒井なつみ(江東区議会議員)

はじめに

こどもへの性暴力事件の事例ついて、後藤先生からごく一部を列挙いただきました。いつでもどこでも起きうる犯罪です。実際、私が住む東京都目黒区でもベビーシッターによるわいせつ行為が明らかになったことがあります。こどもへの性暴力、性虐待は、まだ性への知識がないこどもに対して「悪いこと」ではないという刷り込みや「こどもであるあなたが悪い」という脅迫を与えることでこども自らが相談することを難しくさせ、発見されにくいことが特徴です。警察の「犯罪が起きてからしか動かない」という姿勢を変えてきた後藤先生から法律や条例で防いでいこう!という力強いお話しを伺いました。

親密な者からのこどもへの性犯罪

誰がこどもに性犯罪を犯すのかというと、
・教師保育士
・学童
・シッター
・学校ボランティア
・スポーツ指導者
・親
こういう人たちは、こどもに近く、
警戒しにくい、抵抗しにくい、訴え辛い。

子どもを手なづける行為(グルーミング)により性行為に及ぶため、こどもが悪いことをされたという意識をさせないため、繰り返し行われてもが見つかりにくい。グルーミングとは、性犯罪者がこどもをゲームやスポーツなどの共通の話題を持ちかけ仲良くなることを言う。さらに性的なコンテンツを見せることで性行為にこどもが同意するように誘導させるなどの姑息な手段でこどもを性犯罪の被害者にする。

容疑者が逮捕されたのちに、職歴が明らかになると、こどもに携わる施設の職歴が多い。犯罪が明るみになる前に別の施設に勤めていたのではないかとの推測される。

防ぐためには、性犯罪者をこどもに近寄らせないこと。日本では、2021年5月28日「わいせつ教員対策新法」が成立し、教員が性犯罪などを犯して教員免許失効となり、その後の再交付のハードルを高くした。しかし、これは教員だけの対応であり、イギリスのDBSという制度を日本でも実施し性犯罪者を子どもに近づけないことが必要だ。<編集より:DBSについては、国会に働きかけを行っているNPO法人フローレンス前田晃平さんの記事がわかりやすいので、ご参考に→コチラ

子どもを性の対象とすることを容認する制度・風潮

日本は、子どもの性的搾取、児童ポルノの規制が緩い。諸外国では規制されている内容が児童ポルノの規制対象が狭いため規制されていない。→thinkkisdsから児童福祉法34条、児童買春児童ポルノ防止法の改正を要望している。
性行為同意年齢が13歳というのは低すぎる。諸外国と同様に16歳に引き上げる必要がある。また、性犯罪の時効が短いためこどもの頃に声を上げることができなかった被害者が大人になってから公訴しようとしても時効が成立していてできない。(公訴時効は、強制性交等罪が10年、強制わいせつ罪。)

児童虐待について、現場の連携不足

児童虐待全般についてもthinkkidsさんが提言されている現場の連携についてお話しを伺いました。現場の連携が不十分であり、これまで児相が甘い判断を続けてきた結果、守れる命を失ってしまった。あらゆる立場から子どもを守るべきところ、現状は自治体による差がある。児童相談所、市町村、警察、病院、学校、民生委員、などの機関が情報共有することで、家庭訪問よりも把握できる。

自治体ができること

子どもを性犯罪から守る条例(仮)の制定または既存条例の改正。
条例制定の事例→宮城県「子どもを犯罪の被害から守る条例」
また、条例策定という大技でなくても、大阪府「安全なまちづくり条例」の「指針」に性犯罪防止対策を盛り込んでいく。大阪府の上記条例の指針。「安全なまちづくり条例」はどこの自治体にもあるので、ぜひその指針の中に盛り込んでいけるのではないかとの指南。

質疑応答

● 学校ボランティアで入り混んでしまうことの対策は?
 →学校ボランティアを広く募集するのはこどもに近寄りたい人も紛れ込ませてしまう可能性がある。(2010年西宮市の小学校で、自然学校に随行する有償ボランティアの指導補助員に応募してきた男性が、男児多数に対する猥褻行為で逮捕。)ネットで無作為に募集するのは避けるべきである。
● 虐待する親に対する支援についてお考えがあれば教えてください?
 →大阪府警にいたときに、ずっと電話していた刑事がいて、相談できる人がいない母親からの電話が来るようになった。相談できる人、愚痴を言える人、支援してくれる人がというのが大事。それは児童相談所だけでやることは難しいからこそ、関わる人が増えることが必要だと思っている。

お話しを聞いて

参加メンバーからの感想:成田ちひろ議員(三鷹市議会)
 長くご活動されてきた講師の先生のお話をうかがい、子どもを守ることについて深く考える内容の濃い勉強会でした。貴重な機会をありがとうございました。

編集後記:こどもへの性虐待は大人の気づかないところで起きているかもしれません。発見するのが難しい、だからこそ再犯防止を制度や仕組みで防ぐ必要があります。ただ、再犯防止だけでは初犯や発見されない被害を防ぐことはできません。
お話しを聞きながら私は、性教育や文科省が定める「生命(いのち)の安全教育」についても実施する必要があることをさらに強く思いました。「生命の安全教育」は、こどもが「あれ?何かおかしいな。嫌なことは嫌だと言おう。」と思い、行動することにつなげる授業です。こどもが自分の身を守ること、大人がしっかりとこどもを守る仕組みをつくっていくこと、これからも続けていきたいと思います。

今回、参加者には後藤先生から著書「子どもが守られる社会に」を頂戴しました。政策のブラッシュアップに活用させていただきます。

記事編集:たぞえ麻友(目黒区議会議員)