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応援ラボの活動報告〜第5回勉強会〜

9月14日、親子・子育て応援ラボのメンバーで第5回の勉強会を開催しました。完全オンラインで、講師はNP O法人ブリッジフォースマイルの林代表です。

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タイトルは

「児童養護施設退所者支援の最前線より

〜アフターケアから考える虐待防止の根本解決について」

これまで児童養護施設の退所者支援を多面的に行ってきた林代表だからこそ語れる、出身者や退所者が求めていること、また社会に出てから困ってしまうこと、そしてそれを支援するために行政や地域が取り組むべきことは何か?と言うことについて、地方議員だけでなく虐待サバイバーや児童養護施設出身者、また子育て中のママなども参加された中で皆で考えていく場となりました。


ブリッジフォースマイルがこれまで行ってきている退所者支援は

就労支援(インターンシップ)

巣立ちプロジェクト(一人暮らし準備支援)

アトモプロジェクト(退所後の繋がり支援)

居場所事業

スマイリングプロジェクト(シェアハウス)

出張セミナー(各所に出向いて施設にいるうちからの早期支援)


と、これだけではないのですが多岐に渡ります。

行政などの支援ではともすれば縦割りになってしまったり、所属先や年齢が変わるたびに担当する部署が変わってしまうなどの「分断」は往々にして生じてしまいますが、ブリッジフォースマイルさんではとにかく「早期に」「住まいのことも就労のこともつながりのこともひっくるめて」「継続的に」支援をしていくことを目標として取り組んでこられたと言うところが印象的でした。


児童養護施設を出た後に、退所者がどう暮らしていっているのか、厚生労働省の行っている社会的養護の現状についての調査資料があります。

保護者のいない児童や、被虐待などの事情により家庭で暮らすことができず、施設や里親などの社会的擁護のもとで暮らす児童は全国で約4万5千人。

そのうち、18歳で施設等を退所した後の進路については、近年進学率が高くなってきていると言うこと、ただそれでも日本平均の75%に比べると30%と半分以下であること、また今年4月からの高等教育無償化の支援があり大きく向上が見込まれることなどのご説明がありました。


卒業後の進路

ただしこの後については継続的な支援やフォローの必要性を強く感じる数字があります。

4年後の中退率は27.1%、奨学金返済などの問題があり行方不明等になってしまう中退者なども含めた不明者が15.3%いると言う調査結果があることがわかりました。


また、住まいについても困難がある状況がわかる調査結果があります。

住まい

こちらは2018年11月にブリッジフォースマイルさんの行った調査ですが、退所してすぐの2018年退所者の最も多い住まいは社員寮や学生寮であるとわかります。

住まいが必要だと言う事情があり、寮に入れると言う条件を重視して就労や進学を選択している場合もあるのかもしれません。

これが、退所してから3年たった退所者たち、この表で言うと2015年退所者に関していえば社員寮や学生寮で暮らしている人が19.5%と、当初から半減していることがわかります。

学業の継続に加え、就労の継続にも何かしらの難しさを抱えている可能性があります。

これはもともと、施設や学校などから紹介されていた仕事が「やりたい仕事」ではなく「条件のいい仕事」=寮があり住まいを確保できる仕事、であったため、結果として仕事が長続きしなかった、と言うこともあると言うお話を伺って、もともと紹介される仕事の選択肢が少なすぎる、狭すぎる問題をどうにかすることはできないのだろうか、と思うに至りました。


退所者支援に限らずですが、行政や公教育などが何らかの支援を特定の対象に行う場合、その支援は大変選択肢が少ないことが多いです。

ですが、もちろん仕事も住まいも、その人の人生を形成していく大変大きな要素の一つであり、「なんでもいい」わけではないはずです。

住むところがない、保証人がいない、それなのに住まわせてもらうのだから、ここでいいでしょう。と言われても、ある程度の本人の希望や条件があるはずです。

働くところがない、仕事がしたい、けれどもこちらも保証人などはいない、と言う場合、実際に働く場所の選択肢が大変少なくなってしまっていると言う話は各支援団体等からも聞こえてくることがあります。


林代表からのお話の中で、特段心に残ったのは

「退所後支援では遅い」

と言うことです。


18歳に施設を出てから、そこからの足りないものを支援するのではなく、

幼児期から学齢期、また就労については少年少女時代から様々な体験などに触れる機会が確保されてきたのかどうか、そこについても想いをはせて足りないものをもっともっと遡って社会で提供・共有していけるようにしないといけない、と言うことはまさにその通り、と参加者一同うなづいておりました。


大変多くの意見や質問が出され、時間いっぱいまで全員が疑問や制度についての改善ポイントを話し合いました。


最後には、ご自身も退所者の一人であるブローハン聡さんより、林代表への一言を、とラボ事務局の田添区議からお願いをすると、林代表を愛称で呼び、素敵なご挨拶の言葉をいただいて、会全体が暖かい雰囲気になりました。


退所者支援には、同じような課題に悩まれている他の様々な属性の方たちにも通じる部分が多々あります。

そのため、取り組むにあたっても、あえて属性は限定することばかりでなく、

対象を広く、

支援はつながりを持って幅広く、

進めていく必要があると思いました。


いつも参加してくださるラボ関係者の皆様や、参加者の皆様にも感謝します。

意見交換を経ることで、様々な気づきや学びがあります。

次回は11月7日、元厚労省の千正さんよりご登壇いただく予定です。

ぜひ、ご参加をお待ちしております!


文章担当・斉藤