見出し画像

肩書

あるアーティストのモノマネ芸人がいます。
ハッキリ言って似てない。
もちろんテレビで見ることもない。
ショーパブやモノマネパブに出ていることもない。
ではなぜその芸人を知っているのか。
近所の商店街で年に一回か二回、余興をやっているからだ。
きっとそれなりの芸人を呼ぶよりはるかに格安で、
20分30分のショーをやってくれるならいいだろう、とこれは憶測。

とにかく似てない。
そうかと言って似てないことを自虐ネタにするわけでもなく、
商店街でショーを見るたびに鼻で笑ってしまう。
そんな芸人。

ある夜、家でふとその芸人を思い出したのでググってみた。
本人のFacebookやYouTubeチャンネルが出てきた。
ここまでは想定内。
しかし驚いたのはここから。
YouTubeのコメント欄。
「○○さん(モノマネされているオリジナル歌手)のラジオから飛んできました。」
「○○さんが絶賛されていたように本当に似ていますね」
などなど称賛の数々。
いや、似てない。
そこは譲れない。
絶対似てない。
ただ、このモノマネ芸人が、どこで活動しているかわからないようなモノマネ芸人の芸が、
オリジナルの国民的スーパースターの耳に入っているのにとにかく驚いた。

あと、その芸人のプロフィールを見ると、
『イラストレーター。メルカリで販売中』とあったので、メルカリでそのイラストを検索。
下手だ。たしかに色彩は鮮やかだけれど、
幼稚園か小学校の作品展で見たことありそうなイラスト。
しかし、販売中ではなく売れている。700円。
唖然とした。
700円、絶対バカにはしない。
僕も同じようなイラストなら描けるはず。
だけど700円で売れるか?と聞かれれば売れませんと即答する。

僕は思った。
世の中言ったもん勝ち。
鼻で笑ってしまう程度のモノマネでも本人に届くし、
幼稚園か小学校の作品展に飾られている程度のイラストでも値段がついて売れる。
モノマネ芸人とイラストレーターと名乗れば、
クオリティどうのこうのではなく、
モノマネ芸人であり、イラストレーターになれるのだ。

僕はどうだろう?
なんにも名乗る肩書もない。
ただ酒に弱いおじさんだ。
こんなおじさんに誰もお金は落とさない。
負けだ。完敗。バカにしてごめん。そのモノマネ芸人兼イラストレーターさん。
僕もどうにかして肩書探してみよう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?