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音楽制作の依頼で知っておいてほしいこと

音楽制作を人に頼むのは難しい

僕は自分の作品をリリースする傍ら、個人の方や企業から依頼をいただいて楽曲制作させてもらうことがあります。

ご相談に来る方は様々で、コンテンツ用のBGM曲が必要な企業さん、YouTuber、VTuberのような活動をしている方もいれば、全くの個人という方もいます。

そして、多くの場合、依頼を下さるのは音楽制作をしたことがない方がほとんどなんですが、

音楽制作したことないが故に、自分の要望をどうやって伝えたらいいのかということに苦戦されている方も多く会ってきました。

そこで、「こんな風に伝えたら、作り手はあなたのやりたいことを理解できます、こちらもやりやすくなりますよ」という依頼の方法、ポイントを僕の視点と経験からお伝えしてみます。


依頼時のアンケートフォーマット

僕は制作のご依頼を受けることになった場合、下記のようなアンケート形式のフォーマットにお答えいただく形で事前情報を確認しています。

1、楽曲の用途(例:音楽配信/YouTubeのBGM/等。楽曲に望む雰囲気や世界観、コンテンツの目的などもご教示ください)

2、希望納期(いつまでに必要か。通常は最低14日、作詞込みで最低21日、作業内容等で変動します)

3、楽曲のテーマ・雰囲気・テンポ(例:明るい、暗い、カッコいい、可愛い、キレイ、速い、遅いなど、詳細にいただけると助かります。参考楽曲があれば「それに近い感じ」でもOK)

4、参考にしたい楽曲と参考にしたいポイント(YouTubeやサブスク配信のURLなどで)

5、ochiに依頼いただいた理由(参考曲が今回のイメージに合った、など)

6、歌ものの場合、歌う方がどなたかと、歌える音域の範囲

7、仮歌が必要か

8、希望の納品形式(パラトラックでの納品希望や、ファイル形式、ビット数などの指定)

基本的にこの項目を埋めてもらえれば、概ね何を望んでいるか、どんな方向性にしてどんな形でお渡しするかが分かります。
1つずつ解説していくと、

1、楽曲の用途

これはシンプルに「作った音楽を何に使いますか?」という質問です。

例えば、ご自身のアーティスト活動の作品として、音楽配信でシングルとして出します、だったり、◯◯というイベントをやる予定でその中で流す出囃子にします、だったり、どういうシチュエーションで誰に向けて聴かせる音楽なのかを把握したいのです。

聴く相手や流す目的が決まっていると、音楽もそれを想定した作りにできるからです。

特に個人の方だとこれをはっきり教えていただけないケースも意外と多くて、まだ解禁できない事情とか色々あるのかな、など思うんですが、「どんな理由で作られる音楽で、聴き手にどういうものを届けたいのか」はお伝えいただく方が、より理想的な結果につながります


2、希望納期

これはそのままで、制作スケジュールを確定させたいという質問です。


3、楽曲のテーマ・雰囲気・テンポ

これめちゃくちゃ大事な項目で、一番依頼者さんと擦り合わせたい情報です。

音楽を作りたい、ということは何かしら曲に込めたい思いやイメージ、ストーリーがあると思うので、そういった考えも文章箇条書きとかで構わないのでキーワードとして多くいただけるとインスピレーションになります。

特に一番いいのはジャケットなどのビジュアルイメージをもらえると、「この絵から流れてくる曲」という想像をしながら作っていけるので、こちらも色々捗ります。

また、BGM曲のようなインスト作品は、ジャンル名やメインになる楽器で指定していただくと大きくズレないかなと思います。


4、参考にしたい楽曲と参考にしたいポイント

多くの場合YouTubeのリンクが貼り付けられて、依頼者さんの好みの曲が来ることが多いんですが、既存の他のアーティストが作った曲を参考曲として提示される場合、気をつけて欲しいのが、

参考曲のどこを取り入れたいのか

を明確にしてほしいということです。

1曲だけ参考曲を渡されて「これっぽくしてください」とだけ言われてご依頼をいただくことがあるんですが、それだけでそのまま制作すると「この曲っぽくしたい」以外の情報がなくて、

こちらとしては「イメージと違う」と言われるのは避けたいので、楽器の構成、テンポ、キー、おおまかなコード進行のような音楽として感じる雰囲気をできるだけ参考曲に寄せて作ることになり、結果的にほとんどパロディみたいな雰囲気に仕上がってしまったりします。

なのでこれを避けるために「同じ楽器を使って欲しいのか」「テンポやリズムの雰囲気を揃えて欲しいのか」「曲の展開を似せてそれ以外はオリジナルでこちらにお任せさせてくれるのか」など、参考曲の何を取り入れたいのか、まで指定いただけると(こちらからヒアリングすることもあります)

何を求めてるのかをこちらも推測しやすくなり、結果的にイメージに近いものが出来上がりやすくなると思います。

また、たまにAmazon musicやApple musicのリンクを送られるケースがあるんですが、それらはサブスク契約していない人は再生できないので、できればYouTubeのリンクでいただいた方が確実です(聴けなかったら聴けないで、こちらで検索して探しちゃうんですが)


5、ochiに依頼いただいた理由

これは言わなくてもいいんですが、「自分に何を期待していただいてるのか」が分かるとこちらのモチベーションが変わります(笑

真面目な話、「誰だか知らないけど曲作れそうだし、機材も揃ってるみたいから頼みました」と漠然と言われて作るのと、「あなたのこの曲が、作りたいものの雰囲気にすごく近くてお願いしました」と具体的に言われるのでは、自分も人間なのでやる気がだいぶ変わるっていうことです。

ちなみに僕は自分の曲で歌入れなどをお願いする場合は、シンガーの方に必ず、「◯◯さんが出されていた参考音源のこの曲の歌い方が良かったから」「◯◯さんの声質が今回の曲とイメージが合ってたから」というようなお願いする理由を絶対につけて相談するようにしてます

制作は信頼関係が大事だと思うので、やっぱりこういう一言があるとないでは「期待していただいたからよ〜し頑張ろう」というような気持ちを持てるかどうか、というものなので、何を期待していただけたのかを教えてもらえたら僕は嬉しいです。


6、歌ものの場合、歌う方がどなたかと、歌える音域の範囲

制作するのが歌の場合のメロディに大きく影響する項目です。

理想の形は「地声だとG3~C5、裏声だとB4~E5」みたいに音で教えていただけるとベストですが、分からないことがほとんどだと思うので、カラオケでよく歌う曲とかを教えていただくのでもこちらで大体推測します。

「全く分からない!そもそも普段歌わない!」みたいな場合は、できるだけ広い音域を使わないように作るか、こういった一般的な音域の範疇で収まるように作ります。

こういう場合、最初の段階で歌のメロディーのデモをお送りしたら必ず自分でも歌ってみて声が出るか、音程が取れるかを確認するようにして、歌うのがきつかったら必ず言ってください。


7、仮歌が必要か

仮歌、というのは文字どおり、代わりに歌った仮の歌です。大体はシンセサイザーのメロディで入れることが多いんですが、それだと歌い方のイメージがつかない人もいるので、歌声が何らか入っていて欲しい場合は指定をしてもらいます。

ちなみに僕は仮歌はSynthesizerVというAI音声ソフトを使って入れてます。


8、希望の納品形式

これは専門的な話も入るので難しくなっちゃうんですが、例えば「歌のメロディが入っていないカラオケ音源と、全部の楽器のパートを個別の音源でください」というような、どんな状態で納品して欲しいかを伝えていただくものです。

どう伝えていいか分からなかったら、完成した後に自分がしたいこと(歌を自分で入れたい、ボカロに歌わせたいなど)を伝えてもらえればそれに合わせた形式で納品します。


これは覚えておいてほしい

ここからは、音楽制作を他人に依頼する上で覚えておいて欲しいことを説明します。

音楽制作請負は美容室みたいなもの

音楽制作を人にお願いするというシチュエーションは人生で中々ないので初めてだと戸惑うと思うんですが、美容室に行って髪型を変えてもらうようなものだと捉えてもらえると想像つきやすいのでは、と思います。

どういうことかというと、美容室はお客さんの要望を聞いて、実現したいことを加味しつつ、お客さんの髪質や頭の形、雰囲気を踏まえて髪型を作る技術者ですが、音楽制作の仕事も同じようなものです。

「こういうことを音楽で表現したい!」があって「こういう風にしてください」という参考曲・イメージを伝え、でもそのまま同じものを作るわけにいかないのでこちらからも提案して最終的に完成形ができる、わけなんですが、

例えばここで「精神性はパンクで、音楽性はジャズで」みたいな、人によって受け取り方が変わるような表現で要望を伝えられると、作る側は混乱します(そして「それってこういうことですか?」という確認作業が続きます)

なので、伝え方としては「サウンドはパンクのように荒っぽくて元気だけど音楽自体はあくまでジャズっぽく」というような具体的な形で説明するのを意識していただけると、こちらも「ああ、fox capture planとかSOIL&"PIMP"SESSIONSみたいな感じにしたいのかな」のように具体的に想像がつけられるので、イメージがすれ違わないで済みます。


こだわるのはいいことだけど、終わりの見えない作業は辛い

人によってはものすごく細部までこだわる方もいました。「試しにこれをやってみてください」「ここがこういう風になるとどうなるか聴いてみたいです」のような。

それ自体はすごくいいことだと思うし、音楽が良くなることならこちらもやりたくなります。

ただ、作る側としては、そういったリクエストを受ける場合「何を解決したいのか」「どういう結果になれば正解なのか」が見えないと、目隠ししながら箱に手を突っ込んで正解のものを引き当てる、みたいな、

作業する自分の頭にないイメージを元に、ゴールが見えないことをやり続ける状態になり非常に辛いので、修正依頼など、何かを変えて欲しい時は必ず「どういう状態ならOKなのか」というゴールイメージを明確に持ってお伝えください。


音楽のフレーズは「音色」と「モチーフ」とでできている

細かい話になりますが、これも理解しておいて欲しいことで、音楽の中で鳴るフレーズは、「音色」という音の質感(硬い音、柔らかい音みたいな)、「モチーフ」という音の高さと鳴るタイミングの2つで構成されています。

なので例えば「この曲のx:xx〜から鳴るフレーズみたいにしてください」というリクエストをする場合は、「音の並び、モチーフとして似たようなフレーズを作ってほしい」なのか「音の質感を近づけてほしい」なのか、その両方なのか、というところも合わせて要望して欲しいです

「このフレーズっぽいのを入れたいです」と言われたことがあり、3日考えて結果、曲に合わなすぎて入れようがないです、と返事したところ「フレーズではなくて音色を似せて欲しかったんです」と言われて、ああ、こちらのヒアリングが浅かったなと反省したことがありました。

と、長々と書いてきましたが、制作のご依頼をいただくのはどんな場合でもとても嬉しいものです。自分の曲で誰かの役に立てるのはとてもやりがいがあるので、この記事でお伝えしたことをちょっとだけ意識していただきながら、ぜひ楽曲制作を僕にお任せいただけると幸いです!

ご依頼・ご相談は、僕のサイトかココナラでお受けしています!


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