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廃校になった校舎はそれだけでアート作品

2019年に、旧名古屋工業技術試験所瀬戸分室で開催された「瀬戸現代美術展」に続編が生まれた。タイトルは「瀬戸現代美術展2022 プレエキシビジョン」。場所は2年前に廃校となった旧祖母懐小学校。参加しているのは瀬戸を拠点に活動する作家5名。校舎で展示するということで、今回は子どもたちとのワークショップで生まれた作品が多かった。

旧祖母懐小学校は約100年の歴史を持つ学校で、設立は大正5年(1916年)。
瀬戸の中心部を学区に持ち、窯業で羽振りが良かった頃は児童数も多かったが、陶器産業が下火になるにつれ児童数が減り、それは近隣の学区も同じことで、児童の数が少ないことによる弊害が心配されるようになった(6年間クラス替えが無いなど)。そこで2年前に祖母懐小学校を始めとする3つの小学校と2つの中学生が合併して、小中一貫校「瀬戸市立にじの丘学園」が設立され、同時に各小・中学校は廃校となった。

まだ廃校から2年しかたっていないので、校内は雑草や伸びすぎた植栽が目立つものの、荒れ果てた感じはなく、また訪れたときは近所の子供達が公園代わりに遊びに来ていたのもあって、まだ学校の魂が抜けきっていないというか、子どもたちの生活痕が至るところに残っていた。

昭和生まれの元小学生ならきっと皆んな知ってる二宮金次郎像

この小学校を訪れたのは初めてだったが、第一印象からして不思議なくらい既視感が強く、どうしてだろうと考えてみて、理由のひとつが自分の子供達が通っていた小学校と校舎や運動場の配置が似ていること、もうひとつが現存する校舎の建設時期が昭和40年代で、ちょうど自分が小学生だった頃と重なること、つまり自分が通った小学校とも似ている雰囲気があることだろうと思いあたった。

展示を見るために校内に上がり、次々と部屋をのぞいてゆく。室内はもちろん什器がすべて取り外され、空き箱のような状態で、だからこそ部屋の構造がよく見えて興味深かった。例えば1階にある保健室、校長室、職員室、どの部屋も窓から直接校庭へ出ていけるようになっているし、隣の部屋と内部のドアで通じている。特に校長室は廊下を通らなくても保健室、職員室どちらへも行けるのだ。また、職員室の小ささにびっくり。記憶の中の職員室は普通の教室3室分をぶちぬいたくらいサイズなのに、ここの職員室は普通の教室の1.5倍くらいしかない。先生たち、意外と狭い空間でお仕事をしていたのだな。この抜け殻のような状態ですら、どの空間も概念としての「小学校」を見事に体現しているとしかいいようがなく、ノスタルジー満載の場所だった。

理科室・収納用の引き出しにはきちんと器具の名前が書かれている。

強烈な存在感を放つ校舎を舞台にしての展示、前回と同じようにどの作品も場所の特性を見事に生かしており、とても面白かった。また、小学校という場所を意識してか、子どもたちと行ったワークショップ作品も多く、場所と共鳴してそこでしかあり得ない作品になっていた。プレということで出展作家は5人のみだが、在廊(在校?)作家の解説が聞けたり、カフェや物販があったりで、大変中身の濃い展示会場となっていた。

後藤あこ《シャッターと揃いの服》部分@保健室
ワークショップ「わたしたちの町を描こう」
by 岡本健児と子どもたち @校長室
岡本健児 作品7点 (いずれも《無題》)@職員室
ワークショップ「粘土で思い出の風景をつくろう」
by 後藤あこと子どもたち @ 来客用玄関
古畑大気《fit》の裏側 @放送室
近藤佳那子《bye bye》(左)《smile》(右) @ 図工室
※この部屋にカフェがあります
栗木義夫 (手前から順に)
《Untitled》《Untitled》《(窓の風景)(untitled)》


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