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暗やみの展示室探検

いかにも何か出そうなタイトルだけども、実際に出てきたのは光のマジックなのでご安心を。
夏休み最後の週末、愛知県陶磁美術館にて「ナイトミュージアム」というイベントが行われるとの情報を見つけた。普段は見ることのできない夜の美術館をめぐるガイドツアーだという。「夜の美術館」と聞くだけで、魅惑的なイメージがわきあがる。

具体的にはどんなイベントかというと、

クリエイターの河村陽介氏の監修のもと、夜の館内を巡る特別観覧(ナイトミュージアム)と、本館ロビーにそびえる狛犬展示にて光と音をもちいた演出(プロジェクションマッピング)を行います。

陶磁美術館HPより

いかにも夏の夜っぽさが漂う内容ではありませんか。日にち限定の予約制だったので、その日のうちに申し込んだ(当日払いの有料イベント)。

さてさて、当日はさっさと仕事を切り上げ、夜の美術館に予期しない何かが出るかも、と楽しみにしつつお出かけ。
受付が終わると、Aチーム、Bチームに振り分けられる。片方はロビーでプロジェクションマッピングの作品を見てから展示室探検、もう片方は逆の順番で、ということのようだ。参加層は半分くらいが小さなお子様連れ。あとからわかったが、暗い展示室内にお子様含む団体を入れるということはかなりリスクが高く、美術館側の懐の深さを知ることになった。

自分のいるチームは先に狛犬タワーのプロジェクションマッピング鑑賞から。これはかなり見応えがあった。映し出された模様は、すべて陶磁美術館が所蔵する作品由来だというが、どれも見事なものばかり。人々が願いをかけるために奉納してきたという狛犬の由来にも触れながら、インスタレーション作品として見事に成立していた。

これは染付の模様かな
今度は鮮やかな赤系

続いて、「走るな」「さわるな」「指定された以外の明かりを使うな」という厳重な注意のもと(実際はもっとマイルドな表現です)、ガイドとともに真っ暗な展示室への探検が始まる。使ってよいのはブラックライトのみ。うす青い光を頼りに文字探しをし、各所に仕掛けられた音や光の作品を見つける。

白い馬が光のマジックでシマウマに?!


なのだが……小学校低学年以下の男子が言いつけを守れるわけがない。白く明るい光が時おり室内を照らし、プロジェクションマッピングの光源は遮られ、カメラの位置はズラされる。物の怪的な何かがいたとしても、とても出る幕じゃない……。

その時のガイドは館長氏だったのだが、そのくらい想定内という雰囲気での対応で、さすがだなぁと思わされた。子どもたちが何かやらかすたび、きちんと注意しつつも熱心に作品の説明をしたり感想を引き出したりする。子どもたちの言葉にしっかり答え「みんなよく見てるねぇ」と。その姿に、作品愛というか陶芸愛、そして子どもたちにこそ展示品の面白さを伝えたいという熱意を感じた。

いっぽうオトナたちは、むしろ暗くてよく見えない常設展示に心惹かれている模様。これが昼間の来館につながればよいのだが。

ふと気がつくと、あやまって展示ケースにぶつかったり、暗い中で迷子が出たりしないよう、あちこちで見守っているスタッフの多いこと。リスクを承知のうえで、それでも面白い企画を提供したいという美術館の意気込があるからできることなのだろう。

文字探しクイズは明らかに小学生向けのネタだったが、オトナ的に一番受けたのは「モザイクで名画クイズ」だった。有名な絵画作品を解像度の荒いモザイクにして、元の絵が何だったか当てるクイズ。これがなかなか面白い。なんとなくわかる絵もあれば、ぜんっぜん見当のつかないものもあり、元ネタを聞いて「へぇ!」となる。これは違う企画に使いまわせそう。「全部当てた人には次回企画展の招待券プレゼント」とか。

無事にナイトツアーを終えた参加者たちには、なんと現在開催中の特別展「ホモ・ファーベルの断片 ―人とものづくりの未来―」の鑑賞券がお土産として手渡されたのだった(大人のみ。学生以下は違うチケットをもらっていたようだ)。ナイトツアーの参加費が900円、特別展のチケットが800円だから、実質100円であれだけのイベントを楽しめたことになる。お・と・く。というか、「ぜひ、昼間の展示を見に来てね~」というアピールには絶好のチャンスに違いない。

終了したイベントですが、参考までにチラシを貼っておきます



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