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美術展めぐり

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実際に足を運んで見に行った美術展の感想を書き留めています。
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#ホー・ツーニェン

「旅館アポリア」ふたたび

2019年のあいちトリエンナーレでは、メイン会場となる愛知県美術館のほか、「まちなか会場」として円頓寺商店街や豊田市街などが登場した。特に豊田会場には優れた作品が多く、その中でも白眉だったのが、かつての料理旅館「喜楽亭」を舞台にしたホー・ツーニェン作品《旅館アポリア》。これは自分の感覚だけでなく、絶賛する人を多く見かけたので、間違いないと思う。 《旅館アポリア》は、映像と音響をメインとするインスタレーションで、12分のエピソード7つでひとつの作品を構成する。喜楽亭の各部屋に

闇と光のあわいで跋扈する者達

久しぶりの豊田市美術館は、ホー・ツーニェン「百鬼夜行」展。妖怪をテーマにした独自の映像作品を堪能することができた。 ホー・ツーニェンの作品に接するのは2回目。1回目の出会いは2019年の愛知トリエンナーレ豊田会場だった。豊田市内の旧旅館「喜楽亭」にて「旅館アポリア」が展示(上映)されていたのだ。かつて旅館として使われていた建物まるっと1棟が映像インスタレーションの舞台となっていた。短編映画のような作品の連作で構成され、音と映像の洪水に圧倒されたのを覚えている。あれは「鑑賞」