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愛してやまない、SoulFlex

 SIRUPはよくよく知られているのに、SoulFlexの知名度は低い。そんな話を音楽の趣味がバッチリと合う古着屋の店主さんとしていたことがある。「King Gnuは好きだけどMillennium Paradeって何ですか?」みたいな人いますよね〜、なんて。

 SoulFlexというのはアーティストのグループであり、3人のシンガー、ギター、ベース、ドラム、キーボード、サックス・フルート、という大きなバンドと、ビートメーカーやカメラマン、ペインターなどのアーティストもいる。好きなことをするメンバー、もとい。彼らはメンバーのことを「クルー」という。好きなことをするクルーが集まり、そこから音楽を作るようになり、徐々にファンが集まり、グループができて10年経った今もクリエイティブな活動をしている。

 このグループのシンガーの1人としてSIRUPが属しているのである。逆に、SIRUPバンドのバックバンドの半数以上はSoulFlexのクルーたちが務めている。アーティスト同士が互いのバンドにいるというのは、ファンからしたらとても微笑ましいことなのだ。例えば、TENDREのライブにはAAAMYYYがいて、AAAMYYYのバンドにはTENDREがいるように。

 どんな曲を作るのかというのは、SIRUPが属しているバンドということから、グルーヴィーでダンサブルな曲を作るのだろうなというのは容易に想像ができるのだろうけれど、まあこれを聞いていただくのがいちばん早いだろう。
 このMusic Bar Sessionに僕はたくさんお世話になっており、僕の好きなアーティストたちがたくさんここで歌っている。SoulFlexはそのたくさんの中のひとつにすぎないと言ってしまえばそうなのだが、その中でもSoulFlexには際立った特徴があり、それは何かというと、もっとも窮屈であるということだ。バンドの人数が多い分、スペースをギッチギチに使って楽器を押し込み、ボーカルの3人もなかなか身動きが取れないくらい窮屈だ。その中で体を揺らしながら演奏している彼らは見ていて気持ちが良い。でしょう?

 窮屈と言えば、ライブの時も窮屈だった。僕が初めてSoulFlexをライブで観たのは、今からちょうど1年前の3月末だった。ゲストにTENDREと韻シストを迎えたSoulFlexの10周年ライブがコロナで延期になり、さらにまた延期になり、最後の最後で僕はチケットを手に入れた。TENDREもその時がはじめましてだった。ステージが広く見渡せる最上段中央の椅子に座り、TENDREで揺れ、韻シストはそこまで熱烈なファンではなかったが、名前はもちろん存じ上げていたのでラッキ〜くらいの気持ちで観て、最後がSoulFlexだった。この時、SoulFlexは梅田クワトロのステージをキュンキュンにしてそのステージから非常にナイスな音楽が届けられた。

   ここで1度、ライブ当日の日記から感想を引用したいと思う。

「TENDREと韻シストとSoulFlexを見る。いちばん後ろのカウンターみたいなところに座る。ずっと座ったまま揺れていた。AAAMYYYのコーラスが心地よかった。ちゃんと耳掃除をしてきて良かったと思えた。」

「耳掃除をしてきてよかった」という音楽を褒め称えるにあたって最上級に熱烈な言葉が使われ、よほどライブを楽しんだのだろうなということが窺える。でしょう?

   そして、このライブの1年後、ぼくはSoulFlexに再会することになるのだが、それはまだ先の話である。

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