12月14日 火

目が覚めると、外は暗くて、スマホの時刻をみるとまだ5時半だった。こんな早起きは久しぶりだし、なんでこんなに早起きをしたのかもわからない。特に朝早くから予定があるわけでもないし、少し早く起きてベルイマンでもみようかと思っていたのは確かだが、それにしても早すぎる。しかし起きてしまったからには仕様が無い。ベルイマンの『野いちご』を観る。そうしているととても眠たい。以前、東京の映画館で、確か新文芸坐だったような気がするが、ベルイマンの3本立てくらいでオールナイトをやっていた。とても僕はそれに参加する自信がない。絶対寝てしまう。そう思いながら、先日TSUTAYAで借りた映画を、5日ほどで7本観終わった。

映画を観たあと、2時間くらい寝た。起きてどうしようか、出町座に『やさしい女』でも観に行こうかとも思ったが、その後の予定たちが窮屈で居心地の悪い思いをしかねないので、家でオーソン・ウェルズの『黒い罠』を観た。冒頭の長回し移動撮影が有名な映画で、聞いていた評判通り、そのカットは素晴らしいものだったのだが、それだけではなく、全体のカメラの使い方が素晴らしい映画だった。カメラを斜めに使ったり、高低を駆使した移動撮影、脚本こそよくありがちなサスペンスだったが、オーソン・ウェルズの映像的センスが光る傑作の1本である。

さて、大阪に向かうべく、出町柳までは自転車、そこから京阪の特急に乗り、淀屋橋に向かう。電車の中では、カズオ・イシグロを読み、あっという間に淀屋橋についたかと思えば、そこからはすかさず御堂筋線に。心斎橋で降りる。FLAKE RECORDSというレコード屋にいき、象眠舎の7インチレコードを探すが、売り切れとのこと。今日大阪で象眠舎のコンサートがあるので、それに合わせて買いに来る人もいるのだろう。潔く諦めて、酒を飲むこととする。難波の方までひとり歩き、家具店や少しお高い服屋が並ぶ通り、風俗街、居酒屋が並ぶ難波の中心的アーケードを通りぬけ、味園ユニバースへ。その近くの立ち飲み屋、スタンドおがわにて、軽く飯を食うことにする。居酒屋に入って必ずと言っていいほど頼むのはポテトサラダだ。誰かが「ボールにいっぱいのポテトサラダが食いてェ」と歌っているように、ポテトサラダはいくら食っても食い飽きる事はない。ビールとの相性ランキングも、どんなご時世においても上位に食い込んでくる。後はカキフライが気になったので頼み、そこからおでん、ハイボール、ミニ鶏マヨ丼と行った。以前のTENDREライブで出会って、一緒にTENDREを観て、AAAMYYYでも会い、そして今日も来るというお友達と合流して、会場時間をすぎてもなお酒を飲む。彼は明日、広島のライブ(TENDRE、Kan Sano、塩塚モエカ、田島貴男)に行くらしく、広島の喫茶店やお好み焼きなどの情報も少しだけ提供して、2軒目、ホルモンのお店に入ったが、お腹の膨れ具合的に焼きそばを頼み、酒をのみ、開演10分ほど前に入場した。

象眠舎は、TENDREの後ろでサックスとか、シンセサイザーとかいろいろやっているマルチプレーヤーの小西遼がプロデュースしているグループで、ドラム・ベース・ギター・キーボードはもちろん、ヴァイオリン・チェロ・トランペット・トロンボーンまでおり、ミニオーケストラのような大所帯バンドである。先でライブという言葉は使わず、コンサートという言葉を使ったのは、こういう事だ。しかも、ゲストボーカルとして、TENDRE、AAAMYYY、吉田紗良、原田郁子、Sara Furukawa、Emaという豪華メンバーもいる。場所は味園ユニバース。初めてくる場所で、ダンスホールや、曲線を描くソファ、シャンデリアというバブル絶頂期に作られたようなレトロ空間。スペシャルな夜になることは始まる前から明確である。そのうち、メンバーがゾロゾロ登場し、最後には小西遼が登場。指揮者台に立ち、演奏が始まる。象眠舎の楽曲や、ゲストのオリジナルソングを象眠舎アレンジで、時に小西遼がサックスを吹き、フルートを吹き、ゲストたちによるコーラスもあり、1番好きな曲である「65℃」という曲では、あまりの美しさに涙が出そうになり、2時間あまり贅沢なひと時を過ごした。終演後、物販にて、先ほど買えなかった7インチレコードを購入し、物販エリアにやってきた小西遼にサインをしてもらい、握手をして、言葉がなかなか出ない僕は「絶対にまた来ます」という言葉を伝え、京阪に乗って家に帰った。鞄を持っていなかったので、寒い中、自転車に乗り、レコードは手に持って帰った。今年数え切れないほどライブに行ったが、ライブ中の空間の美しさという点ではいちばんのコンサートだったと思う。ありがとう象眠舎。

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