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24年4月5日の日記

 ここ数日気分が優れないので気分転換に早朝の外へ出た。
 年度始めの週末、通勤の人は忙しなく散歩する高齢者や駆けるサイクリスト、歩行者優先を無視するイライラした車を見ながら散歩をした。3月中は異例の冷え込みもあり桜の開花時期は大きくずれにずれて、そしてここ数日の高温であっという間に満開になった。
 至るところで桜が咲き、早いものは若葉を芽吹かせ路面に花溜まりをつくっている。
 立ち寄った公園はジョギングをする人、まだ春休みなのかもしれない朝から元気にボール遊びをする子ども、体操をしている高齢者が思い思いに過ごしていた。誰も桜を見ていないのが良かった。
 私は桜を見たいので、東屋から桜を見上げる。公園の僅かな段差を上がるとき、耐え難い痛みが足首を駆け抜けたから、東屋から桜を見上げている。足は痛いが、道中コンビニで買ってきた牛乳がうまい。

 広島に帰ってきて働きはじめて、3月半ばに足を壊した。何かのきっかけで疲労が弾けた状態になってしまい、足首の筋肉が腫れ、それが足首裏を通る神経を圧迫して歩けば足裏まで激痛が走る。
 はじめは骨が剥がれるような痛みだったから、軟骨でもすり減ったのかと思ったのだがどうやらそういうことらしかった。どうにもならないので仕事を辞めた。

 健脚は取り柄だった。1日10キロ歩いたって平気な足が好きだった。今はバリアフリーを駆使しなければ、移動が困難なときがあるようになった。優先座席に座れない苦痛を体感した。エレベーターやエスカレーター、スロープのありがたさを噛み締めた。
 そうして、3月下旬頭に仕事を辞めてからここ数日、鬱憤や不安を晴らすように出掛けられる範囲でよく出掛けた。
 はじめはテーピングをしてバリアフリーなところを駆使しながら。だんだん痛みが引いて、テーピングなしでも歩けるようになった。
 それが先週くらいの話で、そして今日が落ち着き期間の終了だった。
 べつに、治りはしていなかった。
 気分が優れないのも良くならなくて、仕事もうまく見つけられなくて、どちらかというとまだもう少し休んでいたくて、また足が痛くなるのはもうトドメだ(けれど、これは治ったのかも、とケアを怠った私が悪い)。

 鬱々としながら、昼間はテーピングを買い足しにドラッグストアを訪ねる。ブルーレットを買ったと思ったら本体じゃなくて詰め替えだけ買っていたり、よく見たらテーピングもいつも買うものとは違うものを買っていた。朝の爽やかさとか、全くどこかにいっていた。

 いま、西日のひだまりにうずくまってこれを書いている。この1週間ほど、念慮は私の首にほとんどずっと手を掛けている。

 8年ぶりに迎えた広島の春は、野草みたいに苦かった。だけど、桜に染まる景色だけは、頬を撫でる潮風はずっと同じで、やさしく私を迎えてくれた。
 それでいいな、と思える気分なら良かったのに、とてろてろの毛布を腹に掛けなおす。気分が優れないから素直になれない。
 だがやはり心地は良い。
 絶望的な気持ちだが、こんなよい風土のなかでなら、悪くない絶望だ。

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