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野球協約第7章

1951年に発効され、その後の改定を経て今日に至る野球協約。その第7章「地域権」の章は、いわゆるフランチャイズに関する協定が記載 されている。

この地域権含めて協約は戦後、アメリカからの輸入物。現在となっては、球界全体でファンを開拓しようという取組のハードルやファン不在の規定になっちゃいないか、と少し違和感もある。

まず、章の最初(第37条)の条文で地域権とは何ぞやの定義が定められている。

第7章第37条(野球上の利益保護)
この組織に属する球団は、この協約に定めによりそれぞれの地域において野球上のすべての利益を保護され、他の地域権を持つ球団に侵犯されることはない。

「野球上のすべての利益」?、「地域権」?、「侵犯」て、物騒な表現は、いかにも英文を和訳しましたね…と突っ込みどころ満載の条項だ。
きっと既得権益やら、これまでの経緯やらなんやらで、手の入れようがないのだろう。

そして第38条では、NPBに属する12球団のチーム呼称、専用球場と保護地域が記載されている。

株式会社横浜DeNAベイスターズ
横浜DeNAベイスターズ
横浜スタジアム
神奈川県...

ちょっと飛ばして、第7章第43条、この条項がなければ、ベイスターズは、チーム名もろとも大きく変わっていたかもしれない。

第7章43条(地域変更の時期)
保護地域の変更は、それを実施する年度の前年10月末日までに実行委員会およびオーナー会議で承認を得なければならない。

2010年、当時の住生活グループ(LIXIL)が、TBSからベイスターズ買収を画策した際に、交渉終盤で本拠地移転(新潟or静岡)を持ち出し、TBS側が承諾しなかったことから、この条項にある10月末の期限に間に合わなかったというのが、計画破談の決定的要因だったとされている。

ハマスタを愛するファンとしては、この条項に救われたといっていい。

しかし、LIXILも交渉前の下調べが甘い。「社内の検討チームから、本拠地が横浜スタジアムではダメだという報告が出てきた。現状の形では、誰がやっても現状の(厳しい)結果しか出ない。」と破談の背景について、LIXILサイドからの弁明がある。

ファンとしては憤懣やる方ないコメントだ。ベイスターズ売却ありきだったTBSはよくぞ踏みとどまったと、ここは拍手を送りたい。

年間延べ120万人しかハマスタに行かなかったファンも、そのときばかりは移転反対の大合唱が起こった。

おそらく、保護地域としての横浜(神奈川県)がダメというより、当時はサードパーティだった横浜スタジアムとの契約形態に問題点を見出したのだろう。買収交渉の中で、移転先が不定のまま、移転問題が発生したというところからも推察できる。

この一連の騒動は、横浜スタジアムを保有していた横浜市も相当考えさせられたようだ。

翌2011年12月に本拠地移転なしでDeNAへの売却が決まり、その後は周知の通り、お役所的かつサラリーマン的な現状維持前提の球団運営から脱却して、起業家的運営で、地域とコラボして、コンテンツとしての球団価値を高めることに成功している。

ちょっとファン目線で脱線したが、保護地域の存在がDeNAの球団運営の手助けになっていることは明らかだ。

一方で、地域とのコラボに関しては東京都民から見るとちょっと羨ましい。

第7章第39条(他球団の保護地域使用)
ある球団が、この組織に属する他の球団の保護地域において試合を行い、又は野球に関係する行事を実施するときは、あらかじめその球団の書面による同意を得なければならない。

東京都の地域権はジャイアンツとスワローズが有しているが、他の地域のように住民間で共有や共感ができるコンテンツになってるとはいい難い。

東京ドームや神宮、ベルドやハマスタにもアクセス可能な多摩地区在住、贅沢な悩みだが、ちょっと寂しい思いをしている。

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