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〈詩〉きりんは見ている


送電線の鉄塔と並んで立っている
きりんは見ているのかもしれない
窓の形に視界を区切られ
一歩を踏み出すための広さは持たず
ただ端正な座法を持つ私を

きりんの顔の向きがそれを物語るのだが
視線は私の想像だ
送電線の鉄塔と並んだきりんは
夕映えを背にしたシルエットなのだから

送電線の鉄塔と並んだきりんの顔の向きが
きりんが私を見ているという想像を促す時
時間は忘れられている
視界を構成するのは空間だけではないのに

端然と座する私の視界はきりんを捉えたが
立っているきりんの視界は決して私を捉えない
どこまでもはるかに広くて深いその視界には
見えないものは何もないが
何かを見るという心の働きもないのだから

夕映えの背景に際立つシルエットは
やがて夜の暗さに溶け込むだろう
座する私は目を閉じて
窓を消し去ることにする








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