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リハビリの教員が対応している学生さんの問題 5選 その4

リハビリの教員が対応している学生さんの問題 5選 その4ということで、その3からの続きになります。まだご覧になっていない方はそちらもいかがでしょうか?

リハビリの教員が対応している学生さんの問題

リハビリの教員が対応する学生さんの問題は主に①成績の問題②生活・家庭の問題③経済的問題④学校の人間関係の問題⑤精神的な問題です。これらは単体で起こるのではなく、同時多発的に起こることが多く、複雑になるほど問題解決に時間がかかり、しかも良い結果にならないことが多いです。

4-③実習指導者との人間関係の問題

「リハビリ」「実習」と検索すると、かなりネガティブな情報が多いですね。「寝れない」「休めない」「帰れない」などのほか、ハラスメントの宝庫でして、例を挙げればキリがありません。昭和-平成の時代にリハビリ職につかれた方のほとんどが、時に過酷で、理不尽で、不条理な実習を経験しています。実際に成績不振や進路変更以外で中退する最後のタイミングが実習です。

…が、この情報も過去のものになりつつあります。

今、リハビリの実習は大きな転換期にあります。大きいところでは学生さんを病院でお預かりする実習指導者が資格制になったことと、実習時間の上限が明確に定められたことです。もちろん今までも指導者は資格制でしたし、ちゃんと実習時間の上限もあったのですが、あまり機能せず、いわゆる施設のローカルルールに従うのみでした。

細かく言うと実習指導者の資格は経験3年から経験5年に引き上げられ、講習会を受講が義務付けられました。業界外の方にご説明しますが、内容を簡単に言うとコンプライアンスやハラスメント講習です。今時の世間の常識的な部分です。 

さて、昭和‐平成を生きてきた方々の現在のポジションはたいてい上席かと思います。私は講習会の講師をしたこともありますが、ブレイクアウトセッションで消極的なのはどちらかというとベテランの中高年の方です。新しい枠組みに対し、どこか固執があり、どこか保守的です。(もちろん高い学識と人間性を持った方もたくさんいらっしゃいます。)

これはある意味仕方のないことかと思います。前回のラーニングリンケージの話題を出しましたが、「人は自分教えられたようにしか教えることはできない。」「自分が育ってきた時代やコニュニティーの思想・文化・哲学など、体に染みついた教えから逃れられない。」と、まさにそう思います。(私も人のことは言えませんが。)

ですから、企業を経験してから医療業界に転身した私としては、言葉の端々(敬語の使い方)や振る舞い方(ビジネスマナー)、思考(サービス業?)に違和感を感じることが多かったりします。

かつての実習指導者はそう言ったタイプの方が少なからずいらっしゃいましたし、コンプライアンスが低くても、理不尽があっても、容認する業界風土、雰囲気があったような気がします。

でも、今のタイミングで変わらなければ、正直まずいです。

さて、本題とズレましたが…

今、問題の多くはミスマッチ。(ガチャ。)

現在の、実習指導者と学生さんの問題の多くはミスマッチだと私は思っています。なぜなら実習指導者を変更することで成功したケースはたくさんあるからです。

つまり、学生さんの能力が低いから実習がうまくいかない訳ではなくミスマッチの問題なのです。これはとても重要なことです。教員のなかには「あの学生はどこに行っても上手くいかないでしょ。」とおっしゃる方もいますが、それは違います。成績の良い学生さんがミスマッチであっさり脱落するケースだってあります。

人間はそんなにすぐには変われませんし、一度壊れた人間関係は簡単に戻りません。いっそのこと実習指導者を勇気をもって変更することが重要と考えます。何があっても担当の実習指導者を変えないのはまさに「親ガチャ」と一緒です。指導者の方も自分と合わないと思ったら、勇気を持って上席に伝えて担当を変えてもらいましょう。御身も大切ですから。

ただ、コンプライアンスの低い実習指導者に出会ってしまったら不運でしかありません。「学校に入るんじゃなかった」「自分はこの職業に向いていないかもしれない」「患者さんに申し訳ない」などの自虐、マイナス思考が波濤となって押し寄せ、「寝れない」はやがて「眠れない」になり、身体と精神を病み、実習地からの連絡で教員が認知したときにはもはや脱落の選択しか残っていない状態。そしてコンプライアンスの低い教員が間に入れば傷は拡がるばかり。学生さんは「自分のせい」にするしかなくなってしまい、良い結末に至らない、ということになります。

指導者の方にもいろいろなタイプがいらっしゃるかと思います。マネジメントに秀でる方、テクニックのある方、患者さんに優しい方、教えるの上手い方。学生さんに携わる上では担当の指導者のみに委ねるのではなく、それぞれの適性を考慮してみんなで育てていく方が良いと思います。学生さんもそれぞれをロールモデルや反面教師として、理想の将来像を想い描くわけですし。

最終的には教員・学校・システム

ここまで実習指導者について良いことをあまり言ってこなかったのですが、ここで本来責めを負うべきは教員・学校とシステムです。

事前に学校で学生さんに十分な準備をさせなかったこと、ミスマッチが起きた時の対応方法を教えなかったこと、学習経過を観察しなかったこと、実習地をコミュニケーションをとらなかったこと、そして何より最後の味方ならなかったこと。学生さんのレジリエンスについては前回触れましたが、実習が成功しなかった原因はそれだけではなく、教育の専門家たる教員・学校に寄与するところが大きいと思っています。そして実習指導者の力量に委ねることが多かった実習のシステム自体にも問題があると思っています。

取り留めもない長文になってしましましたが、最後まで読んでいただきましてありがとうございました。学生さんから尊敬される指導力のある先生方もたくさんいらっしゃいますので、文章が失礼に当たるようでしたらお詫び申し上げます。かつて指導者も教員もしたことのある私へ、自戒の意味も込めまして執筆した次第です。

次回を最終回に、と思っております。筆が遅いですが、また機会がありましたら宜しくお願いいたします。


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