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スティーブ・ジョブスの伝説のスピーチや「イン・ザ・ハイツ」にみる、大学と学生との関係

こんにちは。

私が先に投稿した「リハビリの教員が対応に疲弊してしまう学生さんの問題 5選 その2」の中で、経済的問題を抱える学生さんが増えている件についてお話しました。そのときふと、Apple創業者スティーブ・ジョブス氏のスピーチの一節を思い出しました。

ジョブス氏の伝説のスピーチとは?

そのスピーチとは、ジョブス氏が2005年にスタンフォード大学の卒業式に招かれたときのものでして、わが国でもいわゆる「伝説のスピーチ」として有名です。

このスピーチでは、ジョブス氏の生い立ちやApple黎明期、栄光と挫折、そして自らの死を予期するかような人生哲学がドラマチックに語られており、きっと社会に旅立つ若者に対して強いインパクトを与えるメッセージになったのではないでしょうか。

スタンフォード大学はアメリカのカリフォルニア州にある世界トップクラスの有名大学です。IT中心地のシリコンバレーにあり、Appleも近いことから、カリスマのジョブス氏が卒業式に来校するとなれば、それは(好きな)学生さんたちは大喜びですよね。映像ではどの学生さんもいい顔してます。

10年ほど前(まだジョブス氏の生前)に友人から勧められてこの映像を観ましたが、Mac世代の私としては、まさに肺腑を貫かれるような感覚でした。

このスピーチは現在でもYoutubeなどで字幕付きで観ることができますので、もし興味のある方がいらっしゃいましたら検索してみてください。

スピーチでの一節

スピーチの締めの言葉、“Stay hungry, stay foolish”(ハングリーであれ。愚か者であれ。)は名言中の名言で、シビレた方も多かったと思います。

ただ、私が今回紹介するのそれではなく以下の部分です。

そして17年後、私は本当に大学に通うことになった。ところが、スタンフォード並みに学費が高い大学に入ってしまったばっかりに、労働階級の両親は蓄えのすべてを学費に注ぎ込むことになってしまいました。そして半年後、私はそこまで犠牲を払って大学に通う価値が見いだせなくなってしまったのです。当時は人生で何をしたらいいのか分からなかったし、大学に通ってもやりたいことが見つかるとはとても思えなかった。私は、両親が一生かけて蓄えたお金をひたすら浪費しているだけでした。私は退学を決めました。何とかなると思ったのです。多少は迷いましたが、今振り返ると、自分が人生で下したもっとも正しい判断だったと思います。

ジョブス氏が入学したのはリード大学というオレゴン州にある大学だったのですが、とても学費が高かったと仰っていますね。スピーチをしているスタンフォード大学並みということですが、当時は分かりませんが現在のスタンフォード大学だと授業料で年間約$50000、総額で約$70000くらいです。

$1=100JPY換算としても…700万ってめっちゃ高くないですか⁉でもスタンフォードだけでなく、アメリカの大学って授業料$50000~60000って普通みたいですね…。そもそも物価や平均給与も日本より高いし、給付型奨学金も充実しているようですから、単純に比べることはできませんが。

ジョブス氏はそんな学費の高い大学に通って、何者かになることに意義を見出せず、やがて中退を決意したのです。労働階級の両親(養父母)が自分のために身を粉にして働いていることも、彼にとっては耐えがたかったのではないでしょうか。(ジョブス氏の生い立ちやアイデンティティについてはスピーチや成書でも語られていますのでご覧になってみてください。)

映画「イン・ザ・ハイツ」にも似たような描写が

※ここから先は若干ネタバレが含まれますのでご注意ください。

2021年夏に公開されて話題を呼んだミュージカル映画「イン・ザ・ハイツ」にも似たような描写がありました。

登場人物のひとり、ニーナは移民街ワシントンハイツ一番の俊英で、街の人々の期待を背負いスタンフォード大学に進学しました。しかしニーナは大学で挫折し、ワシントンハイツに帰ってきます。ニーナは退学したこと父に打ち明けられずにいます(厳密には、父が大学に確認したところ学籍はまだあるようでした)。中南米移民のニーナの父は、スタンフォード大学の学費の捻出のために身を粉にしてワシントンハイツでタクシー会社を経営しています。そしてニーナを復学させようと自分の会社を手放してまで、学費を捻出しようとします。

…子どもを進学させるために奔走する親の姿はどの国も変わらないと感じました。

親の心子知らずといいますが

親の心子知らずといいますが、そうでもないかなと思います。

ジョブス氏も「両親(養父母)が一生かけて蓄えたお金をひたすら浪費しているだけ」と話しているとおり、子どもなり親に負担をかけている自分を不甲斐なく思い、でも未成熟がゆえにどうすることもできないジレンマを抱えているのでしょう。

リハビリの学校など医療系の学校は、アメリカの学校に比べれば安いとは思いますが、一般文系大学に比べれば年間50万くらいは高いと思います。お子さんを学校へ送り出すために並々ならぬ努力をされている親御さんもたくさんいらっしゃることでしょう。

お子さんだって、その気持ちを知らないわけではありません。だから行き詰ったときに悩むのだと思います。

ジョブス氏もニーナもやがて自分のアイデンティティを確立し、自分なりの人生を切り拓いていきました。大学だけが人生の意義を見出せる場所ではないと私は思っています。

今日も学生さんは元気ですが、その笑顔の裏側にはさまざまな悩みや葛藤があることでしょう。

私はいつも、学生さんの悩みに耳を傾けつつ、

そして私たちの学校に送り出してくれた親御さんたちの「切なる想い」にも、思いを馳せるのです。

長文になりましたが最後まで読んでいただきありがとうございました。

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