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滝口寺伝承

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「横笛」:横笛は平安末期のお話(エピソード0) 「火宅の女(ひと」:は現在執筆中の鎌倉~南北朝時代のお話です。 同じ滝口寺であった二つの物語です。
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【滝口寺伝承(2)火宅の女⑦】

【滝口寺伝承(2)火宅の女⑦】

隠岐回想~蝶々千種忠顕は回想を続ける。

千波の津を頼りない船で漕ぎ出した帝一行を待ち受けていたのは如月の新月の闇。先頭の一艘目には有世と行房、真ん中に帝と千種忠顕、最後に女御らが続きます。

この凍てつく闇に落ちれば死。対岸にたどり着いたとて、鎌倉方の追手が伸びていればさらに非道い仕打ちが待っていましょう。

かの大覚寺統の主も、今は頼りなどなく本当に心細い御身となりました。この逃避行以前、伯耆

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