花屋で働く?働かない?

新型コロナウィルスの流行以降、セカンドキャリアとして花屋を目指すのが流行っている。

家に閉じこもる時間が長くなり、それまで続けてきた自分の仕事や働き方に疑問を持ったり、自宅用切り花のサブスクが大流行して花そのものへの注目が高まった結果だろう。

目指すのが流行っている、というのがどういうことかというと、Instagramにおいて、まず開業を目指して受けているレッスンの様子をアップするアカウントがぐっと増えた。その後に人気の花屋が次々と「プロフェッショナルコース」や「独立開業コース」という名前を掲げて半年〜1年のレッスンを開講し始めた。コロナ以前すでにあったサロン・レッスンプロ系の開業コースとはまた違うタイプの、店舗もしくは受注販売のアトリエを開くことを目的としたコースである。これを書いている2024年春も、「皆様からのリクエストにお答えして」という名目で、プロコースを始めた花屋はさらに増えた。

私がデスクワーク会社員から花屋になろうと思った202X年も、いくつかの人気店がプロコースを新設していた。始めは魅力的に感じていたものの、カリキュラムと受講料の詳細を取り寄せるうちに、とある疑問が浮かんできた。

これ、日常的に花を買える金を持っている層が、カモにされてない?

30万以上、高くて100万近くする受講料を払って1年間何か教えてもらうくらいなら、そのお金を安すぎる給料によって崩壊するであろう生活費の補填にあてて、1年間花屋で新人として働いたほうが早くない?

正直に言うと私はその時点でプロコースを受講したりスクールに通ったりするのに充分な貯金を持っていた。取り寄せたカリキュラムは、花屋での労働なしに開業にこぎつけるとしたら、見事に知りたい内容ばかりだった。

結果的に私は30後半まで積んだキャリアを捨て、花屋でアルバイトを始め、複数店舗を経てX年目にいたる。

「自分の選択は正しかった」というバイアスはもちろんかかっているとは思うが、私はレッスンの受講ではなく花屋での下積み労働を選んで良かったと常々思っている。理由はおいおいここで書いていく。
それでも、私と同じ選択ができる人ばかりではないと思う。子どもがいる、家族を背負っている、今の仕事をやめると奨学金が返せない、貧乏生活は絶対嫌、などなど事情は人それぞれだ。あなたが守ると決めた生活はあなたによって尊重されるべきである。
そんな人に、大小問わず花屋で得た実践的な経験や、周りの先輩から聞いた情報をシェアしたい。私の熱い想いや独立ストーリーではなく、とにかく実務のノウハウに徹することにする。花屋で長く働いている人からしたら鼻で笑うような内容でも、誰かには必要だと信じてなるべく細かく書いていく。
もちろん職務上の守秘義務を守り、己の身バレを防ぐ範囲内にはなる。ただしそのためにフェイクは混ぜないとお約束する。

また、有料記事がちょこまかあるのも許してほしい、前職から比べるとカスみたいな給料で働いている。花屋になると、花が買えない。疲れていても外食を我慢することが増えた。会社員時代好きだった高いビールを買わなくなった。ネトフリを解約した。読みたい本は図書館で借りている。

それでも自信を持って言える、花屋の仕事は楽しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?