2022年の感想

またまたまた久しぶりにノートを更新しました。前回の最終更新は12月、つまり2021年のアドベントカレンダー時です。(笑) 放置されちゃっていましたが久しぶりに投稿します。…と、まったく同じことを昨年度の記事に書いています。noteの活用方法も2023にはもう少し考えても良いかもしれませんね。有機王(後述)スターターキットのデータを100円で売ろうかな…(冗談ですよw)
 今年も東海大の雲財先生の方より「理科教育 Advent Calendar 2022」の原稿のお誘いが来ました。ほんの少しですが、私も理科教育に携わっている身として何か残せたらと思い引き受けさせていただきました。拙筆ながら、皆さまの「何か」に引っ掛かり、そして残ったら幸いです。

 2022年は学校は変わっていませんが、働き方に変化が出た年でした。教務主任は無事バトンタッチでき、今はその方のサポートをしつつ、今までしたことのなかった別の仕事もさせていただいている状況です。少し教務主任を離れるとやはり視点が変わるというか、こうした方が良かったのかな?と思える点がぽつぽつと出てきています。それを感じて、また教務主任をしたいと思えるくらいには教務畑の人間になってしまいました笑
 理科では、今年も単位数は(上述の他の仕事の兼ね合いで)11コマだけで多くはありませんが、色んな隙間に入っているような持ち方です。科目で言うと2年の2単位の物理基礎と5単位の化学、4単位の生物です。物理、化学、生物の3色は初めてですね。9月はここに地学(基礎)もhelpでの追加がありまして、1カ月だけ4色フィーバーとなりました。なかなか大変でしたが、楽しかったです。
 また、twitterを初めて5,6年くらいたちます。昨年は「スペースで輪を広げる」という目標だったのですが、今年は「飲み会と勉強会をする」という目標でした。無事達成できましたので、記事にも書きます。

もくじ

  1. 2022年に行った実験・実習

  2. 新規の実習について

  3. twitterの輪を広げて

  4. おわりに

2022年に行った実験・実習

今年行った実験・実習は
化学
1.凝固点降下の測定 (踏襲)
2.Ca化合物の反応熱測定 (踏襲)
3.モール法 (踏襲)
4.アルコール、カルボニル、カルボン酸、エステル(踏襲、なお管理職に正当に酪酸を嗅がせるチャンスのもよう笑)
5.芳香族の合成実験(ほぼ新規)
6.有機カードゲーム作成(新規)
7.自由研究(これからで、楽しみです)
※プラスで昨年度末に新たに行った豆腐作りもあります。
各自の🏠で豆腐を作るという実習で、面白かったです。これは(新規)です。
生物
1.豚の眼の解剖 (踏襲)
2.マウスの解剖 (踏襲)
3.発生の観察 (新規)
4.PCを用いたエネルギー計算、遺伝シミュレーション (新規)
※物理基礎は担当であるものの、主担当ではないので割愛します。
実施した実習も昨年度と同じです。

(新規)は今年度初めて行ったもの・・・5つ
(改変)は昨年度までの行っていたものでやり方を大きく変えたもの・・・0
(踏襲)は昨年度まで行っていたものをほぼそのまま実施したもの・・・6つ

思っていたより新規がある…今年から学校で仕事をする時間が減ったのでもうちょっと少ないかと思いましたが。半分趣味のようなものですが、今年も色々チャレンジしてみました。これらの内容は基本的にtwitterでつぶやいていたり、スペースで共有していたりしますので、ぜひのぞいてみてくださいね✨
(Twitter:@nachu_science)
スペースは土日のどちらかの21:30頃~1h前後緩く話しています。

新規の実習について

新規で行った実験を少し紹介します。理科の実習せにゃならんけど何しようかな…という方、ぜひ参考にしてください。
芳香族の合成実験(化学)
やった内容は
1.サリチル酸の性質、アセチル化、エステル化と分離
2.アニリンのアセチル化(アセトアニリドの合成)と分離、同定
です。
1.サリチル酸の実験
・サリチル酸を水入れて酸塩基でゆらす(酸塩基の性質)
・サリチル酸に塩化鉄(III)を加える(塩化鉄III試験)
・サリチル酸にメタノールと濃硫酸でエステル化
 →わずかににおいがしますが、収量が微妙。他のやり方があるかも。
・サリチル酸に無水酢酸と濃硫酸でアセチル化
 →結晶化した後、吸引ろ過で分離
 →塩化鉄(III)試験で、やや紫色に呈色(未反応のサリチル酸があるため)
2.アニリンの実験
・アニリンを水に入れる(アニリンの水に溶けにくい性質)
・☝に無水酢酸を加える
 →初めは油滴が分離するが、短時間で沈殿(アセトアニリド)が生成する
・吸引ろ過で粗結晶分離
・水(と湯)で一度溶解、再結晶(場合によっては、溶液のろ過)
・得られた結晶を吸引ろ過、素焼き板上で水分吸収
融点測定により同定
 →余裕で融点に到達する前に融けます。水かな?
・最後にアニリンブラックの反応
 →アセトアニリドの結晶は黒くならない。アニリンは黒くなる。

こんな感じでした。定番実験を入れつつ、吸引ろ過は実は生徒実験で行うのが初めてでした。良い感じでろ過できることもわかり、それは収穫でした。
融点測定は難しかったです…。毛細管やシリコンオイルもない中、試験管とサラダ油で頑張りました…笑
がやはり水が含まれているようで、真空引きができるオイルポンプが必要と思いました。理想はTLCとかができればよかったのですがね。課題を残しつつ、改善して次回につなげられそうな内容となりました。

発生の観察(生物)
これは本当に初めてでした。用いたのは鶏卵でしたが、大学でもあまりやった記憶がありません。大学ではカタユウレイボヤとムラサキウニはしました(が、カタユウレイボヤは助手の方?の温度管理ミスで翌朝に全滅していました…笑)。鶏卵は農業関係の先生の知り合いをたどって、(別の)農業高校の先生から譲っていただきました。発生方法は2種類用意し、1つは殻に穴をあけて観察するウィンドウ法、もう1つは透明のプラカップに鶏卵を落とす殻外観察法でした。
結論から言うと発生6日目くらいで全ての胚の発生がストップしました。が、心臓の拍動や神経の形成くらいまでは観察することができました。また、1つの胚を育てる意識を持ってほしかったので、各班に1つずつ有精卵を渡しました。やはり、生徒たちは大切に扱っており、少しは生命の尊さに触れられたかなと思っています。↓拍動の動画と、6日胚の様子です。

6日目くらいの胚

ちなみに、鶏卵の発生の観察実験を始めようと思ったきっかけはtwitterで毎週しているスペースです。あの場でアドバイスを頂けたので、チャレンジしてみた次第です。つながりってすごいですね✨
観察した後は、生徒たちにはすこし生命について考えてもらう時間を取りました。発生が進んできた胚を処分する際に色々思った生徒もいたようです。そうやって哲学をしっかり経験しておくと、卒業したあとも、生命に対して少しは大人な視点で考えることができるのかな、とか思いました。

PCを用いた計算、シミュレーション(生物)
集団の生物学での実習です。chromebookとスプレッドシートを用いて、計算やグラフを作成する類の練習です。
初めに、各生物のエネルギー収支(総生産量とかそんなのです)をシートを活用して計算する練習をし、いよいよ本番。
2番目は生物の増加シミュレーションです。指数関数的に増えることを確認した後、グラフ化します。でもそのままでは変化が読み取りにくいグラフになります。そこで、授業で学習した“対数グラフ”の出番です。ここに気づけて、グラフを改良できていればしっかりと学習したことを活かせていますね。
3番目は少し複雑で、自然選択がある場合の遺伝子頻度の変化を計算式&グラフ化して、その傾向をみるといったものです。これも結構面白くて、自然選択だけだと漸近するようなグラフになります。
このような、数学を用いた生物の見方をPCを用いることで練習しました。これも初めてで、初めはついてこれるか不安な面もあったのですが、生徒たちは結構前向きに頑張っていました。
(ここまで読んでくれた方にはこっそりデータプレゼントします。評価シートも隠されています…笑)
データ1 (実習シート)

自然選択ありの遺伝子頻度の変化の様子

また、実習では使いませんでしたが、遺伝的浮動のシミュレーションのシートも作りました。こちらは欲しい方はtwitterからご連絡いただければ、使い方も説明いたします。(Twitter:@nachu_science)

有機カードゲーム-有機王(笑)-(化学)
有機化学のカードゲームを作って、学習を進めました。有機のカードゲームというものは昔からあり、実際に製品化されているものもあります。私もちょっとゲームを考えました。ルールはポーカーのような役を作っていくゲームです。役(=有機化合物)を4つ作れたら上がりです。(手前味噌ですが)このゲームの面白いところは、作った役を用いて新たな役を作れるところです。例えば、エチレン、水、金属触媒の役はエタノールですが、このエタノールを次の役、例えばエタノール、酢酸、硫酸で酢酸エチルにできる、という訳です。こういったポーカーを通じて、少しでも反応や物質名を知ってもらえたらと思い、まずルールと役、必要なカードを整理しました。そこが決まったらカード作成は生徒と一緒に行いました。今回は100均の名刺カードみたいなのを用いました。また、役ができた時に反応の種類を正確に理解できていたら得点が上がるような仕様になっていました。生徒たちも喜んでプレイしており、なかなか楽しい時間になりました。課題としては、ゲームは楽しむけど定着度が思ったより…といったところです。役を覚えていたら自然と反応も理解できるようにしたのですが…生徒たちの中では別物になってしまっていたようです。もう少し練ってみたいところでもあります。

ゲームの様子。札から何を作っているか分かりますか?^^

このようなカードゲームを作って、楽しみました。もしデータとか欲しい方がいらっしゃればtwitterからご連絡いただければ、使い方も説明いたします。(Twitter:@nachu_science) ルールを改変してプレイして頂いても結構ですが、使うのはご自身の授業の中だけにとどめていただきますようお願いいたします。

以上、4つの取り組みを紹介いたしました。他にも、いろんなことにチャレンジしていく予定です。ぜひコメントなどいただけたら幸いです。

twitterの輪を広げて

今年はSNSの輪の方も広げようと目標を立てていました。具体的には
・飲み会をする
・会って実地研修(という名の旅行)をする。
この2つでした。まぁ実地研修をすると飲み会も自動でついてきますので、実質は1つかもしれません。
この2つの目標ですが、この記事を書いている現時点で達成することができました。実地研修はたたら製鉄の見学に行かせていただきました。twitterで知り合った方と一緒に“本物”を見て勉強できることになるとは、twitterを始めた頃には考えたこともありませんでした。とても楽しく学べた時間となりました。来年の目標は継続して、第二回の研修会を私が企画する、って感じで立てようかと思います。
また、昨年始めたスペースも休みを挟みながら1年間継続することができました。リスナーさんからもたくさんご意見やお話を伺えました。非常に有意義で楽しい時間を過ごせました。こちらも、来年も継続しつつ、新たな視点で進めていきたいなと考えています。
暇つぶし程度の意識で始めたtwitterですが、今ではこのように1つの学べる場にもなっています。人が集まると、いろんな可能性が生まれるんだなぁと改めてそのパワーのようなものを感じた1年となりました。来年もこのSNSを活用した新たな“何か”にチャレンジできたらと思います。

終わりに

 ここまで読んでいただきありがとうございます。この他にも、様々な実験も紹介しております。実験内容は地味なものも多く、有名どころの実験もあります。しかしながら、教育的な視点に重きを置くように努めていますので、見ていただいた方はぜひ使って頂けると幸いです。興味のおありの方はTwitter @nachu_scienceにも紹介していますのでよろしければ覗いてみてください^^
 2022年は比較的楽しい感じの実習が多かったように思えます。記事を読んでいただいた皆様からも実験の報告をいただけることを楽しみにしております。皆様と色々な実験を共有するのが私のささやかな楽しみです。

 この前も後も理科教育 Advent Calendar 2022では様々な方の記事があると思います。ぜひ、見ていただいて理科教育について思いを馳せてください。
2022.12.14















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