鬼ヶ咲あちたん

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(1)

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 【あらすじ】 日本の中小企業で、社長秘書という名の縁の下の雑用係をしていた私。シンデレラの世界にシンデレラを虐める次姉とし…

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(13)

十三話 そして、それからも  派手な音をしてパッカーンと割れたあのくす玉の正体は、セオドアさまの記憶だった。  ルークは確かにセオドアさまからソフィアの記憶を奪…

シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(12)

十二話 記憶にない誰か  ソフィアはルークがセオドアさまを治癒する前に、スミスさんに全てを話した。  これから魔法使いがセオドアさまの目を完全に治して、寝たきり…

シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(11)

十一話 緑頭の魔法使い 「そんなに簡単に割る決心しないで! 本当に代々の魔法使いに呪われてもおかしくない代物なんだよ!」  マッシュルーム頭に隠れて見えないが、…

シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(10)

十話 いつもと違う病  これまでは数日で回復していたセオドアさまだったが、専属医の予想に反して長く床に臥せったままとなる。 「今日で十日目、これまでと一体何が違…

シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(9)

九話 下される鉄槌 「ぐわああああっ!」  侯爵の顎にシンデレラのアッパーが決まる。  海老ぞって飛んでいく侯爵。  警備にあたっていた騎士たちが騒ぎを聞きつけ…

シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(8)

八話 始まる歓待の宴  ブルーベル王女歓迎の宴は、日没から始まった。  高位貴族たちが見栄を張りあって装飾した会場内は、あふれんばかりの光がシャワーとなって降り…

シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(7)

七話 バチバチの火花  やっぱりね。  ブルーベル王女さまは、ガッツリと肉食系だったわ。  我が家にもいたから、そのやり口は知っているわよ。  女の戦いは先手必…

シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(6)

六話 王女さまの本質  ブルーベル王女は形だけの外交官代理だと思っていたが、そうではなかった。  我が国の外交官とも丁々発止で渡り合い、その知識は本物だという。…

シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(5)

五話 画策する高位貴族たち  セオドアはうんざりしていた。  それは本日、議会に集まった上院に属する高位貴族たちの言葉に対してだ。  半年ほど前に議会が決定を下…

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(4)

四話 抗議するシンデレラ  シンデレラが来ているとソフィアに教えてくれたのは、若くして騎士団長になったレオさんだった。  レオさんはセオドアさまの護衛につくこと…

シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(3)

三話 囲われて溺愛  お城に連れていかれたソフィアは、すぐにセオドアさまの私室に招かれ、そこで熱くもてなされる。 「ソフィア、遠慮せずに僕の膝に座っていいんだよ…

シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(2)

二話 王子が探してる令嬢  王子さまが、舞踏会で見初めた令嬢を探しているという告知が出た。  家名も、名前も、分からないという。  本来ならば、シンデレラが落と…

ひとりぼっちになった王女が辿り着いた先は、隣国の✕✕との溺愛婚でした(1)

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 【あらすじ】 側妃を母にもつ王女クラーラは、正妃に命を狙われていると分かり、父である国王陛下の手によって王城から逃がされる…

ひとりぼっちになった王女が辿り着いた先は、隣国の✕✕との溺愛婚でした(31)

小話集  ◇◆ 小さな恋のお話 ◇◆ 「この齢になっても、いまだ心残りなのね」  会心の出来栄えだったクラーラの肖像画と相まみえて、精神が影響を受けたのだろう。…

ひとりぼっちになった王女が辿り着いた先は、隣国の✕✕との溺愛婚でした(30)

30話 難攻不落なのはどちら【完】 「おかえり、クラーラ。さあ、お兄さまのもとへおいで」  オルコット王国の港で、既視感のある出迎えをしてくれたのは、両腕を広げた…

シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(1)

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

【あらすじ】

日本の中小企業で、社長秘書という名の縁の下の雑用係をしていた私。シンデレラの世界にシンデレラを虐める次姉として転生したものの、どうやらまた他人の尻拭い役のようです。ちょっと、シンデレラ! いい加減にしてちょうだい! これ以上、私のシンデレライメージを崩さないで! そしてなぜか、私が王子さまに見染められてしまって……

【1話】

一話

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(13)

十三話 そして、それからも

 派手な音をしてパッカーンと割れたあのくす玉の正体は、セオドアさまの記憶だった。

 ルークは確かにセオドアさまからソフィアの記憶を奪ったけれど、それを魔力には変換しなかった。

 あとほんの少しで魔力が全快できると分かっていたルークは、シンデレラが持ってくるという呪いの剣に賭けたのだ。

 ソフィアが自分からセオドアさまに名前を告げることがあれば、そのときに記憶を返

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(12)

十二話 記憶にない誰か

 ソフィアはルークがセオドアさまを治癒する前に、スミスさんに全てを話した。

 これから魔法使いがセオドアさまの目を完全に治して、寝たきりから回復させる。

 ただし、回復したセオドアさまにはソフィアの記憶がない。

 おそらくお妃さまを選び直すことになるだろう。

 ソフィアは王子妃の部屋を出て実家に戻ることにする。

 どうか後のすべてを、よろしくお願いしますと。

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(11)

十一話 緑頭の魔法使い

「そんなに簡単に割る決心しないで! 本当に代々の魔法使いに呪われてもおかしくない代物なんだよ!」

 マッシュルーム頭に隠れて見えないが、きっと泣いてるんだろうなという声だった。

 ちょっと可哀そうになって、ソフィアは振りかぶった手を下ろす。

 魔法使いは安心して床にしゃがみこんだ。

「良かった……またお婆ちゃんに怒られるところだった……」

 やっぱりお婆ちゃんか

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(10)

十話 いつもと違う病

 これまでは数日で回復していたセオドアさまだったが、専属医の予想に反して長く床に臥せったままとなる。

「今日で十日目、これまでと一体何が違うのかしら」

 専属医は毎日、朝と夕に診察をしてくれる。

 状態については、これまでと何ら変わりはないようだ。

 ソフィアは数人の看護師と手分けをして、セオドアさまの看病を続けた。

 看病しているソフィアがそろそろ疲れでふらつい

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(9)

九話 下される鉄槌

「ぐわああああっ!」

 侯爵の顎にシンデレラのアッパーが決まる。

 海老ぞって飛んでいく侯爵。

 警備にあたっていた騎士たちが騒ぎを聞きつけ集まってくる。

 そこかしこで悲鳴が上がり、倒れる令嬢もいるようだが、まだ始まったばかりだ。

 すべての視線がこちらを見ていることを確認した上で、ソフィアは静かに語りかける。

「ブルーベル王女、こちらは賓客としてあなたをもてな

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(8)

八話 始まる歓待の宴

 ブルーベル王女歓迎の宴は、日没から始まった。

 高位貴族たちが見栄を張りあって装飾した会場内は、あふれんばかりの光がシャワーとなって降り注いでいた。

 言葉通り、セオドアさまには眼に毒ね。

 ソフィアはなるべく早く計画を実行に移せるよう、控え室へと足を急がせる。

 灰色のまざったピンク色のドレスを着たソフィアに、「今度は何に擬態しているの?」と聞くシンデレラを連れ

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(7)

七話 バチバチの火花

 やっぱりね。

 ブルーベル王女さまは、ガッツリと肉食系だったわ。

 我が家にもいたから、そのやり口は知っているわよ。

 女の戦いは先手必勝、マウントを取りに来ているのでしょう?

 出鼻をくじくのが一番だって、グレイスもシンデレラも言っていたわ。

「ソフィアさま、貴女って後ろ盾がないのですってね? 王子殿下のご寵愛が薄れてしまえば、あなたの味方はいなくなるわ。私が

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(6)

六話 王女さまの本質

 ブルーベル王女は形だけの外交官代理だと思っていたが、そうではなかった。

 我が国の外交官とも丁々発止で渡り合い、その知識は本物だという。

「参ったよ、上院の貴族たちはこぞってブルーベル王女の味方だ。下院議員と僕が反対しているけれど、このままでは関税の数値はディランシア王国の思惑通りになりそうだ」

 寝る前に、ソフィアとセオドアさまはワインとチーズを持ちより、ブルーベ

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(5)

五話 画策する高位貴族たち

 セオドアはうんざりしていた。

 それは本日、議会に集まった上院に属する高位貴族たちの言葉に対してだ。

 半年ほど前に議会が決定を下したことで、先々月に王子妃を選ぶ舞踏会が開催された。

 それはまだいい。

 自分にもそろそろ妃が必要なことは分かっていたし、時期としてもちょうどよかった。

 そしてなにより、そこでソフィアという最愛に出会えた。

 だから感謝こ

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(4)

四話 抗議するシンデレラ

 シンデレラが来ているとソフィアに教えてくれたのは、若くして騎士団長になったレオさんだった。

 レオさんはセオドアさまの護衛につくことがあるので、ソフィアとも顔合わせを済ませていた。

 筋骨隆々の体に、黒髪黒目の精悍な偉丈夫だ。

 セオドアさまの剣と護身術の訓練も担当しているのだとか。

 つまりセオドアさまの見事な逆三角形を作ったのは、レオさんだったのね。

 

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(3)

三話 囲われて溺愛

 お城に連れていかれたソフィアは、すぐにセオドアさまの私室に招かれ、そこで熱くもてなされる。

「ソフィア、遠慮せずに僕の膝に座っていいんだよ?」

「いえ、緊張してしまうので、お隣で許してください」

「じゃあ僕に寄り掛かるといいよ。ああ、可愛いソフィア、僕の癒し」

 目の前では、側近のお爺ちゃんのスミスさんが、ソフィアたちのためにお茶を入れてくれているのだが、セオドアさ

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シンデレラの次姉ですが、この世界でも私の仕事は他人の尻拭いですか?(2)

二話 王子が探してる令嬢

 王子さまが、舞踏会で見初めた令嬢を探しているという告知が出た。

 家名も、名前も、分からないという。

 本来ならば、シンデレラが落としたガラスの靴を持って、ピッタリの足の令嬢を探すものだが。

 しかし、うちのシンデレラはガラスの靴を落としてないので、ここはノーヒントだ。

 さて、王子さまはどうやってシンデレラを見つけるのでしょうね?

「ちょっと王子さまに、探

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ひとりぼっちになった王女が辿り着いた先は、隣国の✕✕との溺愛婚でした(1)

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

【あらすじ】

側妃を母にもつ王女クラーラは、正妃に命を狙われていると分かり、父である国王陛下の手によって王城から逃がされる。隠れた先の修道院で迎えがくるのを待っていたが、数年後、もたらされたのは頼りの綱だった国王陛下の訃報だった。「これからどうしたらいいの?」ひとりぼっちになってしまったクラーラは、見習いシスターとして生きる覚悟をする。そんなある日

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ひとりぼっちになった王女が辿り着いた先は、隣国の✕✕との溺愛婚でした(31)

小話集

 ◇◆ 小さな恋のお話 ◇◆

「この齢になっても、いまだ心残りなのね」

 会心の出来栄えだったクラーラの肖像画と相まみえて、精神が影響を受けたのだろう。

 その夜、ドリスは絵画を描くのに没頭していた少女時代の夢を見た。

「先生……すでに、この世にはいないのかもしれない」

 10代のドリスに絵を教えてくれたのは、世界中を放浪していた著名な画家だった。

 弟子をとらないことで有名

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ひとりぼっちになった王女が辿り着いた先は、隣国の✕✕との溺愛婚でした(30)

30話 難攻不落なのはどちら【完】

「おかえり、クラーラ。さあ、お兄さまのもとへおいで」

 オルコット王国の港で、既視感のある出迎えをしてくれたのは、両腕を広げたベンジャミンだ。

 その隣にはファミーとイライザもいる。

 ずらりと総出で並ばれて、船から降りたクラーラは驚いた。

「お兄さま、お義姉さま、それにイライザさんまで。わざわざ来てくれたんですか?」

「クラーラの初めての対外的な公

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