ファッションローについて(1)

ツイッターでは、わりとファッションに関する法律関係について、コメントすることが多いので、ご存じの方はいらっしゃるかもしれませんが、私は、アパレル企業で法務を担当しています。この数年、にわかに、Fashion Lawという言葉・概念が、注目されてきています。この点について、少し、思っていること、考えていることを、何回かに分けて書いてみたいと思います。

(1)Fashion Lawって??

おそらく日本では、この分野の唯一の専門書であるの、「ファッションロー」(角田政芳・関 真也、勁単書房、2017年)によれば、以下の通りです。

ファッションローとは、そのような名称の単一の法律があるわけではなく、
ファッションデザイナーやフアッシヨン産業に関わる知的財産法、契約法、会社法、商法、不動産法、労働法、広告法、国際取引法、関税法等を含む法領域の総称である。

最近ですと、スポーツ、古くはエンターテインメント分野などのようにビジネスセグメントを切り出して、横断的に取り扱う法領域を指す言葉として、〇〇ローと言われることがありますが、そのファッション分野版ということですね。 私の感覚では、2016年くらいから、ファッションローという言葉が、日本では、使われはじめていて、2019年くらいから、浸透しはじめてきているといったところです。細かな定義は、時々で異なるでしょうし、それでいいと思います。こういった、概念やカテゴリーが浸透し、注目されることで、議論が活発になり、(個人的な感覚でも、実務的にも)法的なリテラシーがけっして高くなかった当分野が、活性化していくことは、純粋に実務に携わるものとして、とてもうれしく思います。

(2)日本における「ファッションロー」について思うこと

さて、私は、日本のアパレル企業で法務を担当しているわけですが、特に日本においては、私の知る範囲では、ファッションローの文脈で最も議論されているのは、知的財産権法の適用、つまり、どういった知財で、ファッションにかわるデザイン・商品を保護するか、ということだと思います。今後、例えば、人事労務面や、業界構造と下請法の関係等々、様々な問題がもっと議論されていくと思いますが、今は、このような状況かと思います。

ファッションの知的財産権法による、保護方法は、多彩です。意匠法、不正競争防止法、著作権法による、デザインの保護、商標法、不正競争防止法によるブランド名などがあげられます。

ファッションローの文脈で、知財の保護を考える際に、とても重要なのが、どういった「ブランド」の商品なのかということです。

例えば、ヨーロッパの名だたる有名ラグジュアリーブランドは、長く愛される(愛されている)商品があるでしょうし、逆に、日本のドメスティックなトレンドを追いかけるようなブランド(トレンドファッション)は、そのシーズンそのシーズンの流行をとらえるいわば、一過性の商品です。また、近時、企業によって趨勢がはっきりと現れ始めているファストファッションブランドは、シーズン内でもころころと売れゆきに応じて商品を変えています。 このような、状況である以上、ファッション分野、共通の知財戦略があるわけではなく、どういったブランドなのか、ブランディングなのかをとらえ、戦略的な知財保護が必要になってくることになります。

特に日本は、ちょうど真ん中のトレンドを追うような企業が多いと思いますので、ファッションローの文脈でも、日本独自の戦略を立ててく必要があると考えています。過去、このあたりをイメージとしてとらえるためにつくったものがありますので、貼っておきます。

画像1

少なくとも、日本が、この分野でも、戦略的に他国のブランドに通じるような知財の活用・検討ができるとよいなと考えています。もちろん、他法領域においてもです。

渋谷を日本のファッションの発信地ととらえて、これを、私は、「渋谷の片隅でファッションローを叫ぶ」と表現して、いきたいと思います(助けてください!!(MM)ってことですかとか、いわない、古い)マイペースに更新できたらなと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?