ニュージーランドはコロナの前に敗北した

ニュージーランドは当初はうまくコロナウィルスの侵入を防いだことにしていた。それは明かだった。

なんで防いだことにしていたとここでいうかは簡単な話で「政府が見つけていない感染者はいないことになる」というだけのことだからだ。

ニュージーランドは厳しい国境管理をすることで外国人を排除し、ついでに国内にすでにいる移民たちを追い出そうとしていたのだが、それでも海外から入ってくる外国人はそれなりにいたので感染者は防疫施設の中で見つかっていた。

ニュージーランドが採用していたPCR検査は10%程度偽陰性になるため、必ずしも感染者が見つかるわけではないこと、そして、無症状での感染者もいるために、この国境管理の網の目を潜り抜けて入り込んでくる人がいることは自明といってもよかった。

そのためたまに市中感染が見つかってはロックダウンをするということを繰り返していたからだ。どう考えても感染者はそれなりにいただろうということは疑いようがない。

ニュージーランドのコロナ対策はデルタ株まではうまく働いていたように見えるが、このころから感染者がじりじりと増えていき、オミクロン株の到来によってついに破綻することになった。

オミクロン株がニュージーランド国内に入り込んだと単に毎日2万人前後の感染者が見つかるようになり、入院患者もうなぎ上りに増えていった。

ニュージーランドにはもはやレベル4ロックダウンに再突入できるほどの体力も国民の危機感も政府への信頼もないためもはや強力なロックダウンはできなくなったし、オミクロンほどの感染力があるならば一旦感染者が減ってもすぐに元に戻ってしまう事だろう。

ニュージーランドは感染対策と称して国民にワクチンを注入し続けたが、それでも感染者の数は増える一方だ。

こんなことはワクチンが重症化の予防に一役買う程度のものでしかないことからすぐにわかるのだが、政府は徹底してこのことをぼかす。

ワクチンが感染を防ぐのかという質問に対しては「なくはないかもしれない」くらいの玉虫色な回答で逃げ続けているからだ。

予防接種をしようが、信号システムで赤を続けようが、ワクチンパスを義務化しようが感染者の増加に歯止めがかからないこの現状からニュージーランドはワクチンパスの義務化や予防接種の義務化を辞めることにした。

そして信号も赤から黄色になるようだ。

これはオミクロン株の感染がピークアウトするであろうという予測のもとに行われているようだ。絶対にオミクロンの前には私たちの対策は何の役にも立たないので、もう自然に任せるしかない、とは言わない。

政府は過ちを犯していないからだ。みとめなければ過ちではない。

これまで政府がやってきたことはオミクロン対策のためではなく、より広範なコロナウィルス対策だったはずだがいつの間にかオミクロン対策というように範囲が狭まっていたことに私は驚きはしなかった。

政府は、ジャシンダ・アーダーンはいつもいつの間にか主語や目的語を変えているからだ。

ワクチンの接種、ワクチンパス提示義務化、行動追跡アプリ、ソーシャルディスタンス、そのどれもがオミクロンの前には大して役に立たないという現実を彼女は絶対に口にしない。

客観的に見ればオミクロン株の猛威の前にニュージーランド政府の打ち立てたあらゆる感染対策が意味をなさなくなった、という事なのだが、ジャシンダ・アーダーンは絶対にこれを言わない。

彼女にとっては敗北を認めるようで気分が悪いのかもしれないが、まるでさもこれまでもこれからもオミクロン対策でしたが何か、といわんばかりにアナウンスをする。

だが、対策の主軸はオミクロン株であるという話を聴いたことは私にはない。

彼女は言っていないことを突然始めるという不思議な才能がある。

信号システムなんかもその一例だ。

三つに分けられた赤信号のフェーズは一体どこに行ったのか。

そもそも今はロックダウンレベルいくつなのか。

彼女はもう信号のことしか頭にない。

誰もそれを突っ込まない。

新聞は政府の言ったことを聞いて書くだけの存在でしかなく、政府の批判記事は有料にするなどどうしようもない。

国民はこの自由を享受して幸せになるというような人もいるが、そもそもジャシンダ・アーダーンが国民から無理やしはぎ取った自由を仕方ねーから返すかくらいのノリで返されてうれしいのだとしたらこの国の人々はまさに牧歌的なのだなと嫌味を言わなくてはならない。

ワクチンパスなどの撤廃は4月4日に行われる。

しかし政府は、義務にはしないがどうするかは各自に任せる、という責任放棄をしれっとしていることに注意しなくてはならない。

たとえばあるレストランではワクチンパスをもう見ませんということそれ自体は許されるが、それが原因で感染者が出たことにされても文句は言えない。

つまり、今後感染がどうなるかの見通しや、その際の政府の対応方針も明らかになっていないからだ。

ニュージーランドの政府において特徴的なものの一つに大事なことを言わないというのがある。だがどうやら陰では用意だけしており、そういう事態になったら即座に実行する準備もしているという噂がある。

かつてニュージーランドでは出生地主義を取っており、この国で出産した子供にはもれなく市民権だか永住権だかが与えられていた。そのため、この国にきて出産を行う女性たちもいたようだ。わざわざ母体を危険にさらしてまで欲しいのかと驚きを隠せないが、ある時一人の日本人女性が同じことをやろうとしたが、死産となった。

女性は病院の責任を求めて提訴をしたが、この時に永住権目的の出産とみなされたうえに敗訴、ニュージーランドは即座に出生地主義を取りやめた、というエピソードがある。

この女性の意図は確かに永住権目的で出産をしに来ていたが、出生地主義というルールである以上は受け入れざるを得ないものであり、これまでにも膨大な数の女性が永住権目的で出産をしていたくらいにポピュラーなやり方だったようだ。

この女性の落ち度はニュージーランドの医療を提訴したことだ。

なぜならこの国の医療は国によってがっちりと守られているからだ。

この国の医療についてはいつか話すこともあるかもしれないが、この時のうわさは、ニュージーランドはこういう人が明るみに出たらすぐに出生地主義を辞められるように準備だけしていたのではないか、というものだ。

この国にいる日本人は、ニュージーランドは決断が速い、という点を異様にほめる人もいるのだが、単にいつでもできるように準備だけしておきつつ隠しているに過ぎないことはこれを見れば明らかだ。

事実今の政府は、なぜ一回で決断しないで、こういうことを考えていますとアナウンスしてから問題ないことを再確認して実施というアプローチをとるのかという批判が新聞に上がったからだ。

要はこの国の政府は決断力も実行力もない、単にネタをしまって温めているだけで、リアルタイムに迅速な対応が必要な疫病対策では全く機能できないということでもある。

そもそもジャシンダ・アーダーンは人の言うことをいい子に聞き、人に気に入られるということは大変得意ではあるが、周囲の意見を取り入れる、リーダーシップをとっていくということは致命的にできないことは今の大臣たちの盆暗ぶりを見れば明らかだ。

おそらく何かあったら大臣たちはこぞってジャシンダ・アーダーンを血祭りにあげて逃げるのかもしれないし、ジャシンダ・アーダーンはそれに対してどうすればいいかもわからないので決断ができず、何かにつけて国民の顔色を窺っているという事なのかもしれない。

私はジャシンダ政権がここまで長期間続いている理由の一つに、彼女が体のいいおもちゃでいてくれるからというのがあると思っている。

実際ウィンストン・ピータースに好き放題されて全部ジャシンダのせいにされていたことを見れば明らかだ。彼女にはピータースを操縦することはできない。

ピータースを操縦できる人はこの国にはいないと思うが、操縦できると思ったのか、それとも党首に君にならできるといわれてその気になったのかは知らないが、徹底的にいいようにおもちゃにされていた。

つまりここ数年間のコロナに関するニュージーランドの混乱は今の与党の盆暗ぶりと首相のリーダーシップのなさが合わさって起きた悲劇の可能性すらある。

今回ニュージーランドがオミクロンに敗北したことによって、結局ニュージーランドはコロナ対策に失敗したことになる。

2年にわたる防衛戦という悲惨な戦いの中で国債は膨大に発行され、インフレは止まらず、人材は流出した。特に医療分野での人材喪失は深刻だ。疫病対策をしているのに、医療系の人材を減らすというわけのわからないことをしていた。

ジャシンダ・アーダーンは何回も結婚式をキャンセルせざるを得ず、国民の機嫌取り以外にしたことがない人、という評価を将来受ける可能性すらある。

そういうわけでニュージーランドに来ることはお勧めしない。

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