ニュージーランドは医療崩壊待ったなし

正直このブログを読んでいる人がどれくらいいるのかは不明だが、今やニュージーランド政府はニュージーランドを破壊するためだけに移民政策をおかしな状態に陥れ、それによって人材の流出を加速させ、流入を停止していることで、ますます国家的な破滅を加速させている。

クリス・ファーフォイという名前の軽快さを裏付けるかのような軽やかな国家崩壊だ。

ニュージーランドはどこまで行っても移民に依存した国であり、この国の経済も発展もあらゆる点において移民がいないと成立しないことは政府も知っていることだろう。

だからこそ今の政府のやっていることの異様さが際立っているということでもある。

ニュージーランドはコロナからうまいこと逃げることができたおかげで医療崩壊なども免れたし、国民も慌てて予防接種を受ける必要がないうえに、世界的なコロナとはまるで別世界のように日常を謳歌できている。

しかし、移民局のおかげでそうもいっていられない事態になった。

今回紹介する記事は、一人の医師がニュージーランドへの移住をあきらめたことで、1300人もの患者が医療を受けられない可能性が出た、という話だ。

今のニュージーランド政府がやっている異様なまでの移民差別、移民への人権侵害、人道上の罪、というのはどれも「ニュージーランド国民のため」という大義名分があるのだが、その結果としてニュージーランド国民が医療を受けられなくなっていくというこの状況に対してなぜ政府が反応しないのか、本当に興味深い。

いい加減ニュージーランドの選挙権を持つ人々は、今のニュージーランド政府がニュージーランドをただただ破壊しているだけということに気が付かなくてはならない。彼らのバランス感覚はもはや正常ではない。

ニュージーランド政府がここまでかたくなに移民制度を修復しないことの理由は、普通に考えたら、「放置されたがゆえに状況が変わってビザを却下された人々からの訴訟を恐れているから」だろう。というよりもほかに理由がない。もしくは「差別しきっているので放置しても全く平気」かだ。

この記事は非常に主観に基づいて書かれているので、ソースだの根拠だの提示するつもりはさらさらないことは事前に言っておく。

永住権のプロセスは、申請者の状況が変わってしまう、ということを考えて、せいぜい半年から1年程度で終わるように設計されていた。1年以内に状況が変わってしまうなら、アンラッキーで済むかもしれないし、申請者ももう一度やり直そうという気持ちも持てる。

しかしこの設計にたった一つのルールを追加するだけで見事に永遠に終わらないうえに金持ちばかり優遇する制度にできたのだ。このあたりのセンスは本当に称賛に値する。いったい誰がこのルールを考えたのかは知らないが、まぁ、ウィンストン・ピータースの言っていた移民政策そのままなので、彼の発案だろうし、彼が首相代行をやっていた間にねじ込んだ可能性はある。

もしくは連立政権をやるためのバーター取引の一つだったかもしれない。

ニュージーランドはもともとは二大政党制の国家だった。この二大政党は、レイバー・パーティとナショナル・パーティの二つだった。これら以外の政党は許されていなかったのだが、その後の法改正によって、連立政権の構築が許された。時とともに極右と極左の受け皿としてのGREENとACT、そして、アンチ移民政策を掲げたNZ First政党が誕生した。大体この5政党が毎回NZの政府をにぎやかにしている。あとは、マオリ枠としてマオリ党がある。

さて、前回の選挙では、レイバー・パーティが単独与党になれるレベルで議席を獲得したために、第二期ジャシンダ政権が発足したのだが、その前の選挙では、レイバーは単独過半数を取れず、NZ First政党との連立政権を組んだ。

この時の世論としては、NationalとNZ Firstでの連立政権を有権者は希望していたのだが、その通りにはならなかった。

ニュージーランドに住んでいる人々ならばこのNZ Firstという政党のやばさは知らない人はいないだろう。特に移民ならばこの政党のことはよく知っておかなくてはならない。この政党が力をつけたときは移民政策が絶望的な状況になる。

当時の記事にも書いたが、NZ FirstがNationalと連立与党を組んでも、National自体は当時最大政党だったので、単に自分たちの立場を盤石にするだけだったが、LabourはNZ Firstと連立政権を組まないと、議席数ではNationalに負けていたので、与党になることはできなかった。

どちらと組んだほうがよりおいしいかなんて言うのはWinston Petersならすぐにわかる。彼は政治家としてはかなりクレバーだと思う。政策が歪み切っているが。

では、LabourがNZ Firstと連立政権を組むためにいったいどれだけの手土産を用意したのか、という点だ。ここからも完全に主観に基づいて話すことになる。陰謀論程度に聞けばいいだろう。

まず、間違いないのは「ジャシンダ・アーダーンが産休を取っている間の首相代行ポストの確約」だ。これは間違いないだろう。なぜならWinston Petersが副首相になったからだ。日本では自公連立政権を取っているが、公明党の党首が副総理になったことはないはずだ。つまり、国のかじ取りをする立場の人は、その政党の人でなければならないということでもあるのだろう。

この話はもうちょっと深堀すると、ジャシンダ・アーダーンは選挙後産休を取ることは確定していた。日本ではこれについては大絶賛だったようだが、現地にいる身としては、そんな状況の女性を担ぎ上げて選挙に打って出るとか何考えてるんだろうとしか思わなかったが、これが連立政権を立てるうえでの最高の手土産になった・・・とは言えないというのが次だ。

Winston Petersが最も欲しがっていたのは、首相の座では実はない。彼がもっとも欲していたのは、移民制度をコントロールする権限、すなわち移民大臣のポストだ。こればかりはさすがにレイバーも断ったかもしれない。その代わりにできるだけぼんくらのクリス・ファーフォイを大臣にした可能性はある。

移民大臣にはしてあげられないけど、彼を存分に操ってください、といわんばかりに。

彼は連立政権の時の妥協案について「全くこれっぽちも満足していない、こっちの望むものなど何一つ手に入っていない」ということを言っていた。これを聞けばWinston Petersにとって、首相代行の立場などは大して魅力がなかったということでもある。

Winston Petersはかねてより移民政策をNZ Firstによこせ、といっていたが、彼らが移民政策をコントロールしだしたら、状況は今の比ではなかっただろう・・・と思いきや、実は今の移民政策はNZ Firstの考え通りに「なぜか」進んでいる。

ここが本当におかしな点の一つだ。

連立政権を構築したあとに、急に年収規定が設けられたが、これは実はNZ Firstが言っていたことでもあった。このほかにも、Resident VISAからPermanent Resident VISAに切り替えられる期間を3年から5年に延ばすべき、とかも言っていた。これはさすがに反映されなかったが、年収規定一つ入れただけで移民制度が崩壊したのだから、Winston Petersは満足かもしれない。

そんなわけはない。

Winston Petersの野望は、「移民のいないニュージーランド」だからだ。

今ニュージーランドに住んでいる人の中で移民ではないのはマオリしかいない。そしてWinston Petersはマオリの血を引いている。

彼の政策の行きつく先は、マオリの国家であるアオテアロアの復活といってもいいだろう。

彼がなぜここまでアンチ移民にこだわるのかはわからない。なぜなら彼の母親はスウェーデン移民だからだ。なので、アンチ移民というよりは、ニュージーランドという国家の管理権をマオリにとり戻したいのかもしれない。

ここにはワイタンギ条約の問題が横たわっていると考えたら考えすぎだろうか。

ワイタンギ条約というのは、ニュージーランドという国家をイギリスの植民地にするために、当時イギリス政府と、マオリ族との間で取り交わされた条約だ。

そしてこの条約の中で最も問題になっている個所が「この国土の主権者」という部分だった。

条約をマオリ語に翻訳した際に、マオリ族が読み取った意味は「この国土はマオリ族のものであり続けて、英国の保護だけを受けることができる」であったが、英語版では「国土の主権はイギリスが持つ」でったようだ。

つまり、マオリ族からしたら、自分たちの国土をイギリスに差し出すことなく、一国家としてイギリスと関係を構築できる、というものだったのだ。

そしてこれによってニュージーランドでマオリ戦争が勃発した。

当然当時世界最強クラスの英国にマオリがかなうはずもなく、条約の記載の不備は英国が力でねじ伏せる形で終了してしまったが、マオリからしたらこれは今でもくすぶり続けている。

事実、強盗などをするマオリの論理には「マオリの土地に勝手に外国人が入ってきたんだから、あいつらの持ち物はそもそも我々がどうしようと外国人には何も言う権利はない」というものもあるくらいだ。

もしWinston Petersがそんな彼らの意をくんでいるのであれば、彼の野望はかなり果てしないことになるのだが、信じるも信じないもあなた次第だ。

そういうわけでニュージーランドに来ることはお勧めしない。


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