ニュージーランドは警官の武装を強化することにした

ニュージーランドにいる日本人の多くが言うこの国の利点の一つに治安の良さがある。例えばニュージーランドでは警官は普段拳銃を持ち歩いていない、武装が必要な犯罪が起きれば警官たちは大慌てで警察署に武器を取りに戻るくらいに重大な犯罪が起きていないというものがあった。

このポイントはよくよく考えると実に奇妙な話だ。というのも警官のような治安に深く携わる人々は、常に最悪を想定しなくてはならないからだ。

拳銃が必要なケースがないとみなしているからなのかはわからないが、私はこの国の治安がいいと思ったことはあまりない。

というのも夜になれば出歩く人も非常に少ないからだ。

治安がいいというのは深夜にふらふらと一人で歩いていても何の問題もないようなことを言うのであって、夜間の外出を人々が控えている時点で治安はそれなりに悪いと考えたほうが確実だ。

また、オークランドでは貧困層が住む地域というものがありこの地域の治安はすこぶる悪い。町もどこかどんよりとしていて、ここにいていいのだろうかという気持ちにさせられる。

一方で富裕層の住む町は家が明るく開放的であり、犯罪のにおいなどみじんもしない。

ニュージーランドの治安がいいといえる人びとはおそらく以下の三つのうちのどれかだ。

1.夜間に外出したことがない
2.周囲に誰も住んでいない
3.幸運にして富裕層の家族になった

ここオークランドの治安は目に見えて悪化しており、武装警官を見る頻度も相当に増えている。

これはクライストチャーチの襲撃以降警官の武装に対する認識が変わった可能性もあるが、非常に物々しい銃器を携えた警官を頻繁にみるようになった。

そんなオークランドの、というよりは最前線に立つ警官たちの武装を強化すべく政府が予算を割いた。つまり今後街で見かける警官たちが武装をしている可能性が非常に高くなった。

これを見て嘆かわしいのかというと私としては警官の身を守る術が強化されるのは半分賛成で半分反対だ。

これは最近頻発するようになったラムレイドやギャングたちの活動の活発化を受けての物の用だ。

ラムレイドというのは車で商店に突っこんでそのまま商品を強奪して逃げ去るというものであり、知性のかけらも感じない原始的だが確実な強盗の手法だ。

また、ギャングも活発に活動をするようになっており、最近では暴走族を見かける機会も増えた。

そしてそれに対する対策として政府が警官の武装強化をした、ということは、今後警官が発砲する機会も増えたということでもある。

政府がコロナ対策と銘打って人々の生活を縛り付け、経済的な危機に陥れているさなかに治安が悪化したのは彼らの政策と何か関係があるのか、店舗からは商品が明らかに減り、空の陳列棚を見ることも珍しくなくなった。

つまり、政府は国家の経済を回復するということをしなくてはならないが、目立っているのは統制の強化と警官の武装強化、そして相変わらず続く反移民政策とワクチン接種の推進、という政策であり、この方向性は極左政党ならではの物なのかもしれない。

移民たちに異常なまでの不条理、不自由を押し付け続けて徹底的に弾圧を続けてきたクリスファーフォイは近年のギャングの活発化やラムレイドの頻発化を問題としてとらえているようで移民については何も感じていないようだが、社会の治安を向上するためには警官の武装強化は外せないらしい。

ニュージーランドの政治家の特徴の一つに自分たちがやったことの結果に対する想像力の欠如というものがある。彼らは目の前の問題に対処はするがその対処によって生じた新たな問題は不幸にして起きたよくわからないものに見えるようだ。

しかしニュージーランドは警官をどのように強化するというのか、幾ら警官の武装を強化しようが突っ込んでくる車を止められるのか、突如現れてとっとといなくなる強盗にどんな対応ができるのか、商店がラムレイドの被害にあわないようにするために何かすべきではないのか、たとえば店舗の周囲を通常の自動車では破壊できない策で囲うなどはだめなのかと率直に思ってしまう。

ギャングやラムレイドの対策として警官の武装を強化する、というのはつまりどういうことか、といえば、装甲車を手に入れるとかそういった方面ではなく、銃器の充実ということになるであろうことは想像に難くない。

そうなった時にラムレイドの車に発砲するのだろうか、射殺するほどの犯罪なのだろうか、被害にあった店主からすれば八つ裂きにしても足りないかもしれないが、国としてそれに追従するのだろうか。

以前西オークランドのショッピングモールで店頭に並べられたナイフを使って犯罪に及んだ男性を30秒後に警官が射殺したそうだが、果たしてこれが日常になるのだろうか。この恐慌に及んだ男性はすでに警官によってマークされており、何か事を起こしたら即射殺という前提、つまりこの件に限っては特別な扱いになっていたようだが、このようなことが特別ではなくなる日は来るのか。

現在のレイバー政権になってから5年でニュージーランドは跡形もなくなってしまい、今後もさらに統制国家、警察国家への道を邁進していくのかと思えば、ますますこの国に来ることは勧められなくなる。

そういうわけでニュージーランドに来ることはお勧めしない。


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