ニュージーランドはウィズコロナに舵を切る

ニュージーランドはコロナ対策に成功した数少ない国の一つ、といわれたのももはや過去のことであり、ジャシンダ・アーダーン首相がオーストラリアとの間で行ったタスマンバブルによってデルタ株の侵入を許し、毎日かなりの数の感染者が出るようになった。

一時的にレベル4ロックダウンをしたが、人類側の体力が尽きる形でレベル3になったものの、追跡性が非常に悪い個人間での面会を最初に許可するというわけのわからない決定によって、この国はコロナを防ぐことが事実上できなくなった。

コロナの感染者が増える下地が十分に整ったこの段階で、ジャシンダ・アーダーン首相は「オークランドのワクチン接種率が90%を超えない限りこの地域はレベル3のままだ」という宣言をしたことで、オークランドは今や政府による新薬実験地区と成り下がってしまった。

この間、ジャシンダ・アーダーンはタスマンバブルの失敗や、ロックダウン解除の戦略におかしな点がなかったのか、などという事には一切触れないで、ワクチン接種率を上げればどうにかなる、と鼻息が荒い。

しかし、日本人の多くは知っていることとおもうが、ワクチンを接種したところで、感染しなくなるわけではない。重症化のリスクは著しく下がるが、感染して人にうつすリスクは依然としてなくなるわけではないが、このことが国内で論じられた形跡は今のところ見当たらない。

つまり、ワクチン接種率が90%を超えてレベル2になり、人々が元の自由な生活を謳歌するようになったら、ワクチンを接種しない人々は非常に不便で不安な日々を送らざるを得なくなる。

そんなのはワクチンを打たないお前が悪い、いやならワクチンを打つべきだ、という意見ももちろんあるだろうが、やはり副反応が怖い、基礎疾患があるためリスクが高い、そもそも自分たちの信仰に抵触するかもしれない、などの事情で打てないかぎりぎりまで待ちたい人もいるだろうから、ワクチンを接種しないのだから不便な生活を強いられても仕方あるまい、とまで言われる筋合いはない。

オークランドは今のペースで行くと、90%の接種率は12月頭位に達成するようだが、その裏ですっかり忘れられたものがある。そう、Covid Resident VISAだ。

ひと月前にクリス・ファーフォイが発表したことで国内にすさまじいレベルの分断を生み出すことになったこのビザだが、その後進捗は一切聞かれていない。いくらかかるのか、どうやって申請するのか、そもそも申請できる人々は確定したのか、などだ。

特に気になるのは、2018年後半から永住権を申請したものの、金をだまし取られただけの哀れな申請者たちだ。ここでの論点は以下の通りだろう。

まず、彼らの申請は今後処理されるのかどうかだ。

処理されないのであれば、12月に始まる新しいレジデントビザに自動的に移行されるのかだ。

最後に移行されるに際して支払いが発生するのかだ。

私がクリス・ファーフォイの立場なら、まずは、待たせた彼らに無条件で永住権を発給して、そのうえで新レジデントビザの処理をするが、こちらは英語の要件がないなど、コストメリットが大きいので、その辺も当然反映するし、仮にコストがかかるにしても、安いならその分は返金するべきだろう。

だが、クリス・ファーフォイなので、そこを過度に期待すると裏切られることになるだろうことは間違いがない。なので期待しないで待つほうが精神衛生上いいのだろう。

それでは話を元に戻す。

ニュージーランドではもはや感染者の増大を止めるということにエネルギーを注いでいないことは最近の報道を見れば火を見るよりも明らかだ。政治家は「これくらいの感染者数は想定の範囲内か範囲外だ」とけむに巻くようなことを言っているのとあまり変わらない記者会見を連日しており、予防接種さえ受けてくればいいのになあと愚痴っているだけだ。

ここからは単なる陰謀論だ。

ジャシンダ・アーダーンはその経歴に華々しく書いているように、実はかなりの左翼だということは知っているだろうか。左翼であるがゆえに、育児休暇もとれたし、議会で委員長に赤ん坊の面倒も見させられるし、国民に自由が欲しいなら予防接種を受けろと迫ることができる。旧態依然としたルールなどというものは何の躊躇もなく踏みにじることができる。

彼女にとって大事なのは人々が個人として幸せかどうかよりも、国というシステムの部品として不良品がないことだ。国というシステムが正常に稼働しているかどうかは、結局国民が政府の言うことに忠実かどうかでしかないため、彼女は容易に自由を人質に人々に服従を迫ることができる。

そう考えれば彼女のロックダウンについても、最近の予防接種をやたら迫る方針転換も一つのポイントで説明できる。

国民が政府に忠実かどうか、だ。

同時に、政府には失敗などというものはない、という無謬性も左翼政権には大変重要なので、今の政府が下したあらゆる判断は一切失敗ではない、だから反省することもない。

ニュージーランド人はこの陰謀論を信じるかどうかは知らないが、私にとっては全く面白おかしいい陰謀論が思いついたので、今日はこのくらいにする。

そういうわけで、ニュージーランドに来ることはお勧めしない。


いいなと思ったら応援しよう!