ニュージーランドの最低賃金が上がり貧富の差が深刻化する

ニュージーランドという国の経済は日本に聞こえてくる情報としては、乳業や農業が盛んであり、不動産価格が何十年にもわたって異常なペースで上がり続ける国ということだろうが、俯瞰してみると適切とは思えないペースでインフレを続けている国だといえる。

最近アメリカでは利上げをしたなどというがこれは金融政策といって国内のお金の流れ方を調整することで貧富の差が深刻にならないようにする、物価を安定させるという目的がある。

物価が上がればそれをもろに食らうのは貧困層などの低所得者層だ。

彼らは経済的には常にぎりぎりの生活を強いられているため、少しの物価上昇にも耐えられないくらいに脆弱な生活をしてい。物価が下がる分にはいいが(最低賃金なので)、あがると深刻な問題を生じさせる。

ニュージーランドのインフレ率がどのようになっているのかというと、コロナの影響を加味してかこの2年間異常なレベルとなっている。

https://www.stats.govt.nz/news/annual-inflation-hits-a-three-decade-high-at-5-9-percen

1990年代のインフレ率はどう見ても以上だが、ここ10年の間はおおむね2%前後で推移していたインフレ率が一気に5.9%に上がった。

物価は当然インフレ率に追随するため物価も上がっている。

物価が安定的に上がっている分にはそれほど問題ではないかもしれないが、先ほどのグラフを見ればニュージーランドの物価はここ数年で急激に上がるようになった。

物価上昇に対して政策として取られる対応は何かといえば利率を上げることだ。

利率を上げれば企業活動も縮小するという副作用はあるが、物価も安定していく。

この利率を政策金利と言い、ニュージーランドではOfficial Cash Rate(OCR)という。

こちらにあるように、コロナ以降ニュージーランドでもほぼ0金利政策が続いており、最近利上げに踏み切っている。

ということは、どの経済状況でも言えることだが、企業活動が縮小し、株価が下がる。これはほぼお約束のようなものだが、企業にとっては苦しい状態になる。

そんな苦しい状態にもかかわらずインフレ率が6%という異常事態が昨年12月にあったことだが、それに対して政府がやったことは何かといえば最低賃金を上げるということだ。

政府は最低賃金をインフレ率に合わせる形で20ドルから21.2ドルにあげることにして企業をいじめぬことにしたらしい。

移民をいじめ、企業をいじめ、今いじめられていない存在は一体なんだろうか、政治家はいじめられていないだろうが、私はほかに思いつかない。

ではなんで今回の最低賃金を上げる行為がいじめなのかという話をする。

答えは簡単だ。

企業がこの利上げのダメージをかなり激しくこうむるように数字が設定されているからだ。

それが先ほども書いたOCRという数字だ。

利上げ、利下げ、というものが一体何なのかと言えば銀行が金を貸しやすいか貸しにくいか、貸した金で得られる利益が大きいか小さいかという話でもあるが同時に国の経済が拡大するか縮小するかという事にもつながっていく。

経済が縮小しているときは企業は利益が減る。

利益が減るにもかかわらずインフレなのでよりたくさんの給料を支払わなくてはならない。

政策金利は人びとが設定する数字なので今の状況で最低賃金を上げれば何が起こるかわからないような人は事務方にはいないだろう。

政府が企業の状況を顧みることなく行われるこの最低賃金の設定は常に問題を孕んでおり昨年も最低賃金を上げた場合は貧富の差がむしろ拡大するということが起き続けている。

政府が言うように貧富の差に対応するために最低賃金を上げているならば貧富の差が拡大し続けているこの状況は矛盾しているのだが、なぜ気が付かないのかは私には全く理解できない。

Kick in the guts、直訳すればはらわたをけ飛ばされるということだが、ひどい仕打ちだという余計な英語知識を挟み込むことにするが、最低賃金を上げるというニュースが出るたびに企業側からは猛反発が起きる。

これは企業が給料を払いたくないといっているのではない(何割かはそれかもしれないが)。

客観的に見れば最低賃金を上げることでインフレに付き合うという行為は悪手でしかないからだ。

最低賃金を上げるからインフレが起こる、そのインフレに付き合う形で最低賃金を上げる、またインフレが起こるという官製インフレの困った点は先ほども書いたが企業の業績を全く加味しておらず、単にインフレ率や物価指数に追随しているからだ。

たとえば10人の企業が昨年は1億円儲かり、今年は1.1億円儲かった。より儲かった分を給料として社員に還元する、新しい社員を雇用する、研究開発に使う、などという形でビジネスは発展していくが、このより儲かった10%のうち6%は給料として支払えと国家に強制されていることになる。

更に言うならば、毎年給料を払うだけでも精いっぱいなビジネスも山ほどあるが、こういったビジネスは給料が払えなくなるので、雇うことをやめる、シフトを減らすといったことが行われるようになる。これは毎年起きていることだ。

更に利上げによって企業は資金繰りが去年よりも苦しくなることは明かなので、中小企業は大変な打撃をこうむることになる。

しかし、インフレが続いてうれしい組織が一つだけある。

これは政府だ。

コロナ対策で膨大な国債を発行した政府にとって経済の動向で起きていてほしいのはインフレだ。インフレが起きれば国債の価値も目減りしていくことになる。

国民や企業、移民の都合などもお構いなしに行われるこの意図的なインフレ政策で得をするのは結局政府だけというこのえげつない構図が見えたのであれば、今の政府の性質も見えてくる。

以前も書いたことがあるが、ジャシンダ・アーダーンは極左政治家だ。本来はレイバーという真ん中よりの左に位置する政党にいていい人物ではない。おそらくGreenの一番左側にいたほうがいい政治家だろうと私は思っている。

左翼政治家というのは行きつく先は国家の完全統制という目的がある。そのためには政府は強く、国民は弱いという構図を作らなくてはならない。

余り過去のことになぞらえるのはいいことではないが、ソ連や中国といった左翼系国家では政府は国民をどう扱ったのかを見れば今のニュージーランド政府は生ぬるく映るかもしれないが、公開処刑など無しでもできるということを実践しているということでもある。

私はニュージーランドが嫌いすぎておかしくなった人という評価を稀に受けるが、今の政府は国民や外国人にとって特にやばいからこのブログを書くことにしている。

私はニュージーランドに来ることを進めていない。今は国境が封鎖状態であり外国人が入国することができないが、今年の後半から国境の解放をする予定を立てている。

今年の後半くらいからコロナウィルスは錠剤で治るようになるというニュースも聞こえているので、これに合わせている可能性はあるが、それまでにニュージーランドが抱えたワクチンの在庫をどうさばくのか、それとも錠剤などというものは初めから存在しないか保険適用外にするのか、今年の後半からの政府の出方を見ることは重要だ。

最低賃金の上昇に伴ってもう一つ気になるのは税金の話だ。

最低賃金が上がれば国民全体の見掛け上の年収は上がるため、累進税率にも手を加える必要がある。

仮に21.2ドルの時給でフルタイムで働いた場合の年収は21.2*40*52=44096となり、大体2500ドルの増収になるのだが、これが課税区分のどこに組み込まれるかという問題だ。10.5%なのか、17.5%なのかで変わってくるはずだ。

現在の最低賃金の年収では、$41600に対して所得税が$6300、差し引き$35300が残る。

最低賃金$21.2の世界では、約$44100に対して増加分$2500が10.5%の税率の場合増える税金が$262.5なので残りが$37537.5であり最終的な増分は最低賃金に増加分にあわされた6%となる。

仮に17.5%のほうに組み込まれた場合は増える税金が$437.5となる。こうなると最終的なの頃は$37362.5であり、5.8%であり、インフレ率にあわされた形になる。

2022年4月の所得税率の発表が今から待ち遠しいところである。

そういうわけでニュージーランドに来ることはお勧めしない。

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