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戒めタイ・ファイター

 先日、模型店へ行った。昔から存在は知っていたが、なかなか入る機会がなかった店だ。特に用事があったわけではないが、冷やかしのつもりでなんとなく入ってみた。

 狭い店内には鉄道模型や様々なプラモデルがギチギチに積み上げられていた。俺の他には家族連れと思われる客がひと組、店員の老婆の接客を受けていた。子供が親に何かのプラモデルを買ってもらっているらしい。

 ウロウロと店内を見て回っているうちに、気がつけば客は俺と連れだけになっていた。

 物珍しい商品も多く、時に手に取って眺めたりしながら店内を何周かした。それでもまあ特に欲しいものはなかったのでさっさと出てしまえばよかったのだが、俺にはそれができなかった。

 店員の老婆はとくに俺に話しかけてくることはなかったが、その動きと視線は明らかに俺をマークしていた。体育の時間の意地悪なバスケ部のようだ。

 おそらく、万引きを警戒しているのだろう。こういう昔からある模型屋が多くの万引き被害にあってきたのは想像に難くない。老婆が悪いのではない。時間が彼女をこうさせたのだ。あるいは俺がいかにも万引きをしそうな怪しい風貌であったか。

 このまま退店したらどうだ。きっと老婆は俺が触った棚を隅々まで見て何かが無くなっていないか確認し、何も無くなっていないのを確認すると「何かわからんが、何かを盗んだな」と決めつけることだろう。そうでなくても「冷やかしロン毛野郎が、何か買っていけ」と舌打ちすることだろう。(当然これは過剰な被害妄想だ)

 出たいがこのまま出たくない。滞在時間が伸びれば伸びるほど居心地が悪くなり、同時に退店もしにくくなっていった。

 無害な客であることを証明して気持ちよく退店する方法はただ一つ、買い物をすることだ。俺はプラモデルを一つ手に取った。箱をぐるぐると眺め回したが値札が貼ってない。俺は老婆に「すみません、これいくらですか」と尋ねた。老婆の表情はパッと明るくなった。「2400と税です」思ったより高かったが、もう出たくて仕方なかったので購入した。

 それがこれだ。

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 タイ・ファイターだ。映画「スターウォーズ」に登場する宇宙戦闘機で、めちゃめちゃたくさん出てきてゴミのように撃墜されるやられ役だ。でも俺はこのデザインが超好きだ。

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 組み立てた。かっこいい。

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 横から見てもカッコいい。昔から思っていたけどめっちゃパイロットの視界悪そうだな。

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 シンプルなシルエットだけどよく見たらメカメカしたディティールがギッチリで良い。かっこいい。

 塗装はめんどくさいのでやらなかった。

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 シールくらい貼るかとも思ったが、あまりにも細かくて嫌になってしまったので今も素組みで飾ってある。

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 この29〜33番のシールとか、貼る意味があるのか。

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 このタイ・ファイターを見るたびに模型屋での出来事を思い出すことだろう。俺の心がもっと強ければ、被害妄想なんかに負けなければ何も買わずに退店することもできただろう。このタイ・ファイターは戒めのアイコンとして飾っておこう。

 それはそうとして一つ買ったら他のも欲しくなってきた。スターウォーズプラモデル。タイ・ボマー欲しい。出てるのかな。


 書き終えて「いっちょAmazonのリンクでも貼り付けるか」とAmazonの同製品ページを開いたら値段を見てひっくり返ってしまった。たっっっけえ〜〜〜〜

 楽天市場だと一万円超えてる。なんなの。さては生産終了してプレ値ついてるな。

 めちゃめちゃ掘り出し物だったんだろうか、このタイ・ファイター。めちゃめちゃいい加減な気持ちでいい加減に組み立ててしまった。

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