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文部科学省「大学入試のあり方に関する検討会議」(第9回)議事概要 6月16日(火)

1. 外部有識者・団体からのヒアリング
【髙田直芳 埼玉県教育委員会教育長】

・地方教育行政の立場から意見を述べさせていただきたい。これまで学校現場と教育委員会とで様々な立場から教育に携わってきた。
・高大接続改革は、以下大きく2つの狙いがあったのではないか。
➀共通テストで思考力・判断力・表現力などを問うために、国語と数学に記述式の問題を導入すること。
②英語によるコミュニケーション能力を問うための4技能を含む試験を実施すること。
この2つの改革案は、ともに理念や方向性においては、学習指導要領に沿うものであり、その意味では、当初の狙いは正しかった。実際のテストに落とし込んでいく中で、形骸化に向かっていったのではないか。
・センター試験は、学習指導要領の目指す方向性に合致した、まさにナショナル・テストという名にふさわしい。改善の余地があり得るとすれば、全ての問題が択一式のマークシートの問題。今回の改善の着眼点としては正しかった。しかし、実施に向かっていく中で、記述による答案を短い時間の中で誰がどう採点するのか。公平性、公正性を担保できるのかといった課題が生じた。
・英語4技能試験の実施について国の関与の下で、大学入試センターが行うべきではなかったか。
・民間試験の導入に当たっては、現場の感覚からするとやや違和感。民間試験の実施に当たり学校の教育活動とのマッチングという視点が少し欠けていた。
・今回の件で得られた教訓があるとすれば制度改革には実現可能性も併せ大切。実現可能性に基づいた共通テストと、それぞれの大学の個別入試の役割を見直すことが大事。
・共通テストはナショナル・テストとしての大学で求められる学力はこういうものだと、一定のレベルを提示するもの。これまでのセンター試験は、問題の質や実施方法については高い評価があり、国民からも深い信頼があった。そのよさは再確認しておくべき。

≪意見交換≫

実際に大学へ入学する人間の数というのは多数派ではないという現実。そこを全体の設計の中で考えておく必要があるのではないか。(芝井委員)
→共通テストについて申し上げたつもり。各大学の建学の精神やアドミッションポリシーに従って、こういう学生に来てほしいというメッセージで独自の入試をする。それはそれで正しい。国の関与の下で行う大学入学共通テストにおいては、あくまでも学習指導要領で学習した延長線上に位置づけられるべき。(高田氏)

・受験生との間の大きな意味での公平性を保つときに、特に問われるのは、高校教員の日常の学習評価の在り方。教員の評価技能の改善、あるいは向上についてどのような取組をしているか。(末冨委員)
→生徒の3年間の学習の成果等を見ていただき、アドミッションポリシーに基づいて選抜をしていただけるということは非常にありがたい。そういう方向に割合として増えていくということは歓迎。
埼玉県が評価の取り組みを振り返ると、なかなかそうなっていなかったということもあるので、そこは大きな課題(高田氏)
←地方教育行政の現場におけるたゆまぬ努力がなければ、高校生の日常の努力を正しく正確に評価しているということにつながらない。(末富委員)

【斉藤圭祐NPO法人全国言友会連絡協議会理事長】

・吃音とは、自分の思うように、スムーズに話せないこと。「吃音のある人への合理的配慮の必要性」は、必ずしも全ての吃音のある人が合理的配慮が必要かと言われたら、そういうわけではない。
しかし今回のように、大学入試のスピーキング場面であったり入社面接などの状況で合理的配慮を必要としている人は必ずいる。
・共通テストの英語科目において、十分な合理的配慮の提供がされないまま、話すことがスムーズではないことによって、英語の能力が低いと評価されてしまったら、「不当な差別的取り扱い」になるのではないか。現在、大学進学率は6割に及ぶということもあり、合理的配慮がないことによって、子供たちが希望する進路が選択できず、未来に大きく影響することにもなりかねない。
・「現行の大学入試制度では『合理的配慮の提供』は確保できるのか?」については、障害者差別禁止法で、合理的配慮の提供、法的義務と努力義務とある。共通テストに合理的配慮の提供が十分に確認できていない民間試験を参加させている責任を文科省に問うため昨年3月、文科省に声明を提出した。
・国公立大学では法的義務、私立大学では努力義務。私立大学において努力義務ではなく法的義務にしなければ、障害者の「合理的配慮の提供」は確保できないのではないか。
・話す過程は、まず質問に対する理解があって、そこから話す内容を組み立てるという作業があって、最後に実際の発声や発音があって話すということが行われる。
しかし試験において評価の対象になるのは、実際に外に話す発話や音声でしか評価ができないことがある。
・吃音があってスムーズに言えないこと、もしくは全く言えないことを加味して評価しないと、吃音のある人はスピーキング試験に不利になってしまう。吃音においては、診断書を書ける医師が非常に少ないという現実があり必要な提出書類が医師の診断書では、吃音のある人は配慮を受けることがほぼできない。ケンブリッジ英語検定においては、医師の診断書に限らず、言語聴覚士等のリハビリテーション専門家や公認心理師の意見書も、医師の診断書と同様の証明として扱うとある。このように、他の民間試験でも提出書類の幅を広げることで、合理的配慮を受けられる吃音当事者は増えていくのではないか。
・「私たちの基本的な主張」を3点。➀吃音のある子供たちが入試・進学、その後の就職に不利にならないような体制作り。②(障害のある人)を抜きにルールを決めないでほしい。③「吃音があっても豊かに生きられる社会の実現を」

≪意見交換≫

・大学の取組で注目に値するものや、非常にいいというものがあれば教えてほしい。(末富委員)
→ほかの大学においても参考になると思うので、気づき次第また声を届けさせていただきたい。(斎藤氏)

【近藤武夫 東京大学先端科学技術研究センター准教授】

・障害のある学生の受験について包括的なお話をしたい。「受験上の合理的配慮」に直結するようなテクニカルな内容について、話題を絞ってお話をさせていただきたい。
・受験における社会的な障壁、機能障害のある人もそこに参加する、平等に参加するということをあらかじめ想定しないでシステムが作られていると、機能障害のある人が社会参加ができないという事が結果として起こってしまう。わざわざ障害のある人を排除しようと思っていなかったとしても、その作りが障害のある人も参加できるような形になっていないと結果として彼らが参加できない。つまり、それを「社会的な障壁」という呼び方をしている。
・合理的配慮というものは何かというと、この「社会的な障壁」を除去すること。大学が行うことは何かというと、あくまでも、入試の環境や慣行に対して働きかけて、そこを変更・調整する。具体的に変更・調整するということが必要。
・何らかの基準的な考え方が必要で、本日は5つのポイントを挙げさせていただく。
1)問題用紙と解答用紙:伝統的には、例えば点字や拡大用紙で受験が行われる。また肢体不自由等、様々な理由がある個々の事情に対して、どこまで適切な対応ができるかというのを考えなければならない。
2)受験室等の環境:受験室等の環境に対して強い過敏性や強い精神的不安を感じる学生たちがいる。それに対して、耳栓やノイズキャンセルヘッドフォンの使用を認めることが行われている。
3)試験時間と実施時期:読むことに時間がかかる等、様々な障害を理由とする機能制限により試験時間が足りなくなってしまう。そういった生徒に対して、1.3倍や1.5倍を判断していく。
4) 試験内容(1):試験内容の調整に関しては、適当性をどう判断するかということについてかなり議論が多い。安易な免除というところに向かわないことは必要ではないか
5)試験内容(2):今後生まれていくであろうと考える試験内容の障壁について、特に新試験の中で、筆記型の試験においては視覚や読字に困難のある、もしくは手書きすることに障害のある受験生に対しては、かなり認知的な負荷を非常に高めてしまう可能性がある。

≪意見交換≫

・個別大学の入試であれば、もう少し柔軟にやれるかと思うが、大規模な入試で、公的支援というのは具体的にどういう形であるといいとお考えか。(両角委員)
→各地の都道府県レベルでの教育センター等がアセスメントを行って、根拠資料を一緒に作ってくれるというところもある。自治体ごとの取組に限られているので、なかなか全国的なものというのが行われていない状態。これを何とかしていく必要がある。(近藤先生)
・共通テストで、仮に記述式とか、英語4機能のスピーキングを行うということになった場合に、どのような配慮がさらに必要になるか。(小林委員)
→今、パッと思いつくことというのはやはり時間延長の倍率を柔軟にしていく。実際にはやはり本質的な部分、何を問おうとしていることなのかというテクニカルスタンダードの部分というのを議論していくことが今後必要。(近藤先生)
←英語の試験を民間試験を代用する、使うということに関して、民間でどこまでそれが対応してくれるか。障害のある学生に対応してくれるかということがまた問題かと思うが。(小林委員)
→障害のある学生たちは不利益な立場になってしまうので、民間においても高い専門性を持った委員会であったり、そういったものを構築して臨むことが不可欠。(近藤先生)

【河合英樹 学校法人河合塾理事長】
・大学入学者選抜実施要項については、強制力を持ったものに今後変えていく必要がある。英語4技能評価は、英語資格検定試験を必須化すべき。共通試験は、できるだけ科目をスリム化してシンプルな試験へ、そして、理想を言えば、IRTなどで複数回実施を行うべき。大学の個別試験は、記述・論述試験を必須化していただきたい。「共通試験」と「各大学の個別入試」の役割分担ということで、測りたい力の多様化、それから、公平性・公正性の担保、また、フィージビリティといった観点から、共通試験はなるべくシンプルな内容及び機能と個別試験の役割をより大きくするべき。
・今回、多くの生徒たちが安全志向に走った。大きな変化があるときには、チャレンジをせずに志望を下げてしまうといった生徒が非常に多く発生。恐らく次の施策実行のタイミングは新課程入試。その年で一度にいろんな枠組みを導入するというよりは、準備が整ったものから段階的に導入をお願いしたい。
・英語4技能を共通試験の中で評価すべきか否かということについて、共通テストの英語、民間の英語資格検定試験、それぞれの特性を鑑みると、役割を整理して併用での活用が良いのでは。
・複数試験の成績を一元管理する場合は、CEFRのような試験をまたいだ基準の存在が非常に重要。この換算表の制度は、公平性・公正性という点から非常に重要だと考え、国が責任を持って管理していただきたい。また、受験生への経済的支援、これは必須化する上では当然必要になり、例えば高校時代に3回受験が可能とする受験料支援などを考えていただきたい。
・記述式問題をある程度ストックした上で、フレキシブルに大学が利用できるような仕組みが必要。また、問題作成・採点を大学がグループを作って共同実施をしたり、それらを民間に外部委託するなどを可とする仕組みも良い。

【石原賢一 駿台教育研究所 進学情報事業部部長】
・国公立大離れが起こっている。いきなり国公立大学の志願者数が3万人減った。やはり今回の大学入試改革の不安が大きかった。
・私立大学は2006年を底として、前年まで13年連続で志願者数が増えてきていたが今年は減った。特に減ったのがセンター試験利用型入試。いわゆる安全志向。チャレンジ精神がない。内向き志向。この原因というのはやっぱり今回の入試改革の混乱というのは大きい。
・英語4技能資格・検定試験は、生徒たちが希望どおり行けるようなシステム、これは私立大学の導入例があるから、参考とする。そして、得意な生徒はプラスアルファだという考え方が欲しい。記述式問題は、国公立大学は個別試験でやる。これは2016年12月8日に国大協のメッセージで出されたことがある。ところが、これがあまり議論されず、すーっとスルーされ、共通テストの記述に行ってしまったが、もう一度戻っていただく。場合によっては入試センターが個別試験の問題提供。

≪意見交換≫
・民間のテストを、CEFRで統一して使うのには大学側において共通として使うには、かなり無理がある。(渡辺委員)
→出願の資格ぐらいがちょうどよい使い方なのではないか。それが、複数回受験で有利になっていくところの緩和にもなり、1点刻みというところも、少しは緩和できるのではないか。(河合氏)
→CEFRの基準で機械的にやっているところは少ない。各大学のポリシーに従って、英検の級はこう使うし、GTECはこう使うし、TEAPはこう使うし、TOEFLはこう使うというやり方をやっているので、国公立大学も本来は学部によっても違うはず。(石原氏)

【杉田道子秋田県立秋田北高等学校教育専門監】
・英語教育、進路指導、大学側あるいは入試担当者に期待することを述べたい。
・一生涯英語は使っていくもので、その中に高校の教室、大学の英語の授業、留学等があり、そこでのつなぎになるようなものが、やはり大学入試である。大学で英語がどのように高校からバトンタッチされてつながれていくのか、そのつなぎになるものということが、理想として大学入試に求めることになる。
・期待することとして、調査書が変わったことで、現場がどうなるのかということをちょっと一回考えていただいて、大学側からも、どういうふうに点数化していくのか教えていただけたらいい。学習者の英語の力がつく、そんなテストの波及効果というものを大学入試に期待して、高校から大学にバトンタッチするというつもりで英語教育に携わっていきたい。

【井坂直樹教諭 茨城県立土浦第一高等学校】
・昨年度1年間の経験の中で、様々なところから耳に入ってきたのが、「超安全志向」という言葉。様々な要因があるが、その中の大きな1つというものが、共通テストが今年度から始まるということで間違いはない。
・共通テストに関する議案に関してさらに慎重に検討を重ねていただきたい。生徒の潜在的な要望のように、学校現場はやはり生徒や保護者の意見を酌むように動くところがある。その点でいうと、大学入試が与える教育現場への影響は非常に大きい。なるべく早く決めてほしいという部分と、やはりその影響力を考えて、慎重に検討していただけたらうれしいという2面性がある。数学を教育している一教員として、記述式の試験というものは、大学ごとの個別選抜で活用するのが望ましいのではないかと感じている。やはり大学ごとで、望んでいるアドミッションポリシー、それを分かって入ってくる生徒ごとに評価するほうが、実際の力というものを判断できる、すなわち論理的な思考力や表現力を育て伸ばすことにつながるのではないか。

【小玉裕介教諭 石川県立金沢泉丘高等学校】
・大学入試は高校教育によくも悪くも大きな影響を与えている。よい面は、大学入試という高い壁が高校生を3年間で大きく成長させること。
・成長は単純に学力だけではなくて、集中力や忍耐力といったメンタル面を含めての成長。生徒の成長を間近で見ていると現在の一般選抜のシステムに一定の意義を感じている。
・負の側面として挙げられるのは、高校教育における大学入試を最終到達点とする傾向。国語の記述式問題における共通テストと個別入試との役割分担について、共通テストは大学教育の入り口段階で共通に求められる力を規定されている。言わば、基礎力の到達度テスト。それに対し、大学の個別入試は、それぞれの大学が望む学力の到達テスト。
・基礎的な思考力、判断力、表現力を問う記述式問題を共通テストの国語で課すことは、理にかなっている。採点の煩雑さ、自己採点の難しさ、あるいは別解の可能性等を鑑みると、50万人以上の受験生が参加する試験として適切であるとは言えない。
・文系は二次試験の記述式問題を通して表現力を問い、理系で国語を課さない場合は、二次試験の理数科目で表現力を問うことが、現時点では妥当と考えている。数学的思考を伴わない表現力を大学側がはかりたければ、大学入試センターが大学に提供する国語の記述式問題を用いることも1案
・大学入試において推奨される記述式問題は、模範回答が想定しにくい問いに対し、論理的に説明、表現できるかを問うような問題であり、そのような問題が全体の中に含まれることが望ましい。国と大学、そして高等学校の3者が連携を密にし、情報共有を行い、真に大学教育の入り口段階で共通に求められる力を見定めることができる共通テストを作成していってほしいというのが、現場の教員に共通した意見。

≪意見交換≫
・英語検定に完全移行するまでのつなぎではなかったのかというご指摘。これは確かに経緯から言うとそうなのだが、今後、やはりつなぎとして、最終的には英語資格検定試験に移行すべきだと、今でもお考えか?(柴田委員)
→民間には頼らないほうがいい。議論はいろいろし尽くされており、プラスアルファで経済的な負担もあり、それぞれが特徴のある検定なので、一生懸命対策すると点数が伸びる。共通テストの中で取り入れられるのであれば、そちらのほうがよりよい。(杉田先生)
・どうしたら高大接続になって、さらにグローバル化に向かっていい人材を育成できる、その基礎的な力であると思っている英語をさらに伸ばすことができるか。入試はどうあったらいいのか(岡委員)
→普通の高校生は留学などの経験がない。海外交流をやっている学校は県内にもある。そういう経験できる生徒は数は限られており帰ってきた後に発表会をやったり、行く前にプレゼンの練習をしたり、それを全校生徒が見たりとか、研修等の波及効果もある。(杉田先生)

【薮内章彦主幹教諭 兵庫県立姫路西高等学校】
・英語教育のモットーとして当初から英語で討論ができる生徒を育てたい。
・入試改革で、英語4技能、そして記述式の導入ということを打ち出され非常に賛成をしていたが外部試験を新テストに切り替えるところで、非常にいろいろな問題が発生したのではないか。日本の英語教育の問題点は何かといったら、これはあくまで現場の視点だが、大学入試の弊害。
・英語で議論ができないのはなぜなのか。現場の実情として、入試が何々だから、やはり授業内容を構成せざるを得ないんだというような声をよく聞く。議論とか対話のプロセスの圧倒的な経験不足。日本の学校では、日本語や英語を問わず、議論する機会が少ない。最近はアクティブラーニング、探求的な活動の導入で、随分そのことも変わってきている
・共通テストをこれまでどおり大学入試センターが作成、そして共通テストの英語も、これまでどおり活用、作成していただき、現行どおり国公立の一次試験、私学のセンター利用という形で継続実施していただきたい。ただし、英語の外部テスト等には反対。共通テストで4技能をテストすべき。リスニングテストを英語に入れたように、日本の英語教育の大きな変革。入試が変わると、高校の授業も変わっていく。4技能のテストには、簡単な簡易なタブレットを55万台用意していただければ。リスニングで現行使用しているICプレーヤーも、タブレットに変更。タブレットでリスニングとスピーキングの両方を実施。

【谷口みち佳教諭 愛媛県立松山南高等学校】
・大学入試は各大学が受け入れたい生徒を選抜するために実施。共通テストは大学進学を志す生徒たちが必要な学力をどれくらい身につけているかをはかるテスト。合否に関わるものなので、得点がきれいな正規分布を描く結果になることが望ましい。共通テストは日本全国でできるだけ公平な条件で実施されるべき。CEFRなどの段階別では、その分け目の生徒にとっては大きな違いとなり、不利益が大きく、公平さに欠ける。一つ一つ丁寧に取り組んだ生徒がきちんと評価されるためには、1点刻みの方がよい。入学定員の9割は1点刻みで合格を判定し、残り1割のボーダー周辺の生徒については、志望理由や活動成果などを重視して判定をするなど、各大学で工夫が可能。恣意的であってはならないので、判定方法は事前に公表し、後日の成績開示にも応じることが前提。思考力、判断力、表現力を問う問題は、じっくり時間をかけて解くものであり、採点がしやすい問題とはなり得ない。共通テストの2日間の枠組みで無理やり入れるではなく、個別試験でしっかりと出題していただきたい。個別試験問題の作成に不安があるならば、入試センターが個別試験用の問題を作成し、各大学に提供してはいかがか。採点は各大学の基準で行えば、不公平は生じないはず。
・各大学が調査書や志望理由書などをどのように評価するのかを、できるだけ明確にしていただきたい。一時期よく言われていたポートフォリオについては、大学入試に活用するにはハードルが高い。
・英語4技能については、共通テストで評価する場合は、別日程や民間委託ではなく、共通テストで行い、採点も入試センターが行うことで、受験生に新たな費用負担を強いることもなく、公平に実施される。それができないなら、導入はせず、4技能を重視する大学が個別試験で評価をすればよい。

【髙木愼二指導教諭 熊本県立八代高等学校】

・入試改革の迷走について、進め方に少し問題があったのではないか。一番大切な公平性、公正性というところに問題があった。
・対象も狙いも異なる複数の民間試験をCEFRで並べる。CEFRのバンドは広過ぎないか、こういう議論がいろいろなところで、進路部内でも行われていた。地方の学校は、試験会場、受験料、こういったものの都市部と地方の差、これは大きい。幾つか紹介されている外部試験で、どれを受けたほうがいいだろう、どれを生徒に勧めよう、などということを、進路部内で議論。
・共通テストに民間試験をくっつけるやり方、これはやっぱりノーが突きつけられたということであろう。

≪意見交換≫
・ポートフォリオの活用というのが難しいというふうにおっしゃっていたが、それは現場として、どのような理由で難しいとお考えになっているのか。(牧田委員)
→eポートフォリオがよく言われるが、環境があるとか、なじめる家庭環境とか、Wi-Fiの環境とか、そういったものにも影響されるものであるし、大学がそのまま受け入れてくれるわけではなく、入試としては難しいのではないか。大学のほうが、どういう子が欲しいというときに入ってから、過去の経験なりを見たり、適性とかを見たりするのには大変いいと思うが、大学入試の公平さを考えると、難しい。(谷口先生)
・地方都市の場合は多分、近くで会場があって受験しやすいものを、結果として授業の中に取り入れていくことになってしまうということが必然的に考えられるが、こういう認識で間違っていないか。(萩生田文部科学大臣)
→そのとおり。近隣の学校も、まず、これを推奨しますというような形で決めていた。理由は、指導しやすいから。学校では、まず英検を選んだ。小学校からの学習履歴、形式への慣れ、先生方の指導の履歴、慣れ、それから、指導しやすい、ライティングがレベル別なので、その子に応じた指導も非常にしやすい、ほかの検定はライティングのお題が1つ、みんな共通、上の子も下の子も共通、では英検で行こうと。(杉田氏)

・どうして英語で議論できないのだろうか、できないのはなぜか。日本の学校では、日本語、英語を問わず、議論をする機会が圧倒的に少ないという指摘されており、英語だけの問題ではない。(芝井委員)
→総合的な学習の時間で、日本語によるディベートというのもやっている。日本語・英語を問わず議論の機会が圧倒的に少ないので、やはりそれをカバーしたい。(薮内氏)

・やっぱり今のSociety5.0等を見越してグローバル化に対して様々な英語教育を仕掛けている。高校の先生がちゃんと英語4技能を評価していただき、大学に提供していただけることに検討の余地は。(岡委員)
→高校の教育活動の結果として英語4技能の評価を大学に提供するということでしたが面白そうだとお聞きした。ただ、しっかりとしたルーブリックがあって、ぶれないような評価軸があってというところがないと判官びいきなものになるというか、そんな感じも否めない。ただ、共通テストでどうしても4技能を測りたいのだったら入試センターが作問するといいというのは、そういった部分も含めての私の考え。(高木氏)
→各校で行ったスピーキングのテストであるとか英語4技能のテストを提供するのは可能だが、やはり判官びいきに当然なり、公平性を欠く。共通テストの中で公平・公正に4技能がテストできれば、これは非常にすばらしい。(薮内氏)


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