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東京タワーを50mmに収めようだなんて

仕事を早めに終わらせて、麻布台ヒルズに向かった。リュックには Nikon Z5 と最近買った NIKKOR Z 50mm f/1.8 S。ザ・標準域の単焦点レンズだ。東京タワーを撮るのだ。Z5 と同時に 40mm f/2 を購入したものの、S ラインの単焦点がどうしても欲しくなり、35mm と 50mm で悩み抜いた結果、鏡筒が僅かに太くてカッコいいからという理由で 50mm を選んだ。

レンズを 50mm f/1.8 S に交換したことでカメラがずっしりと重くなってしまったが、代わりに財布がずいぶん軽くなったので良しとしよう。せっかくの Z ボディで S ラインのレンズを使わないのは逆にもったいないから、と自分を無理やり納得させている。

ガラス越しに赤い鉄塔の一部が見えた。ガラス窓に十分近づけば全体が見えるように思われたが、それが困難であることはすぐに分かった。ガラス窓の前には、何重もの人の壁ができていた。最前列の人たちは座り込んで一眼カメラやコンデジを構え、日没とともに刻一刻と代わりゆく東京タワーの姿を撮らえていた。おそらくかなり早い時間から場所とりをしていたのだろう。

その後なんとか二列目まで押し入ることができたが、50mm f/1.8 を構える私の気持ちは決して明るいものではなかった。自分の見立てでは、東京タワーが 50mm の縦構図にすっぽり収まるはずだったのだが、実際には画角が 10% くらい足りなかったのである。東京タワーを画角に収めることは諦め、壁の後ろからスナップ的な写真を撮影した。

展望台を後にした私は、惨めだった。50mm 単焦点が役に立たなかった。なんとか工夫して取った写真にも満足できない。人ごみの中で大げさなカメラをなんとか窓ガラスに近づけようとする自分は、海外観光客の目にさえ、さぞ必死に写ったであろう。

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